【読書感想文】ロング・グッドバイ
「もし『これまでの人生で巡り会ったもっとも重要な本を三冊あげろ』と言われたら、考えるまでもなく答えは決まっている。この『グレート・ギャツビー』と、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』と、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』である。」
『ロング・グッドバイ』について村上春樹先生も書いています。
僕は村上春樹先生の熱狂的なファン、いわゆるハルキニストではありませんが、村上春樹先生翻訳の『ロング・グッドバイ』は気付いたら少なくとも5回は読み返していました。
何に自分はそんなに惹かれるのか?少し考えてみました。
のめり込む様に読む訳ではなく、たまにページをめくる感じです。読んでいて気持ち良い距離感が『ロング・グッドバイ』にはあります。
主人公の探偵フィリップ・マーロウがテリー・レノックスが酔っ払っているのを助ける事が発端となって殺人事に巻き込まれてくというか、自ら修羅場に飛び込んで行きます。
その過程でフィリップマーロウが事件の捜査のためカリフォルニアの様々場所に行き、色々な人物達と会うわけです。その情景がフィリップ・マーロウの視点で切り取られて描写されていきます。その細部の描写が小説のプロットそのものより面白くて、まるで【フィリップ・マーロウ版カリフォルニアの歩き方】を読んでいる気分にさせられます。
本編に絡んでこないただの風景描写のなのに、この一節が何故かたまらなく好きです。
繋がれた一頭の馬が、樫の木立の下で草臥れきったようにまどろんでいた。肌の浅黒いメキシコ人が地面に座り、新聞紙に包まれた何かを食べていた。にれ木のかたまりが風に吹かれて大儀そうに転がり、道路を横切っていった。それが剥き出しになった花崗岩にぶつかって止まると、そこにいた1匹のトカゲが一瞬間を置いてから、動いた気配もなくさっと消消えた。
目の前に、1960年代の真夏のカリフォルニアの風景が浮かんできませんか?
翻訳者の村上春樹先生も後書きで書いていましたが、作者のレイモンドチャンドラーは若い頃イギリス育ちました。
アメリカの生活が長くても外国人の視線で、第二次世界大戦後のアメリカの発展と人々の熱狂をどこか冷やかに見ていたかも知れません。
例えば、飲み会に参加してみんなと盛り上がっていても、どこかその場の空気に馴染めない、居心地悪い心持ちの人の様に…
そう言えばお話の中でもやたらお酒を飲むシーンが多いのは、アメリカの戦後がそういう時代だからかな?
この小説の冒頭部分。
テリー・レノックスとの最初の出会いは、<ダンサーズ>のテラスの外だった。ロールズロイス・シルバー・レイスの車中で、彼は酔いつぶれていた。駐車係の男は車を運んできたものの、テリー・レノックスの左脚が忘れ物みたいに外に垂れ下がっていたので、ドアをい
つまでも押さえていなくてはならなかった。
殺されたロジャーウェイドもアルコール中毒でした。
そして、最終章が始まる前のテリー・レノックスがフィリップマロウに言ったセリフ。
「ギムレットを飲むには少し早すぎるね。」
なんだか主人公も登場人物もずっとお酒ばかり飲んでいる小説ですね。
僕は下戸ですが、この『ロング・グッドバイ』にすっかり良い気分にさせられました。
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