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童話

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#童話

【母の遺作】笙太は落人の子孫なの?②

【母の遺作】笙太は落人の子孫なの?②

[四]

 笙太は、すいかをたいらげると、ひいじいちゃんをつついた。
「ねぇ、いつ、大間の歴史を教えてくれるの?」
 ひいじいちゃんは、だまってたばこに火をつけ た。けむりを、ぷかあり ぷかありふかす。
「なにから話せぱいいかのう。笙太は、ちっとは、知ってるのかのう?」
「ええっ、なんのこと?」
「ははぁ、やっぱり! なんにも知らんのか」
 ひいじいちゃんの声が、大きくひびいた。
 かあさんが、

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【母の遺作】笙太は落人の子孫なの?①

【母の遺作】笙太は落人の子孫なの?①

〔ー〕

 仲 笙太 (なか しょうた) は、 六年生だ。 身体は小さいが、 好奇心は人一倍強い。
 テレビも本も、ビデオも大好きだ。特にこってるのが、歴史もの。気にいった記事やグラビアは、切り抜いてためている。
 だから、今年の夏休みの (自由研究)は、歴史探訪(れきしたんぼう)でいくつもりだ。なにせ、かあさんの生まれたムラ=大間は、古い歴史があるらしい。前にちょこっともらしたことがあるから、今

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【母の遺作】 すすきの村で  その4

【母の遺作】 すすきの村で  その4

卒業生を送る会で祭り
 校庭の桃の花も、さきほこって、いいにおいをさせていた。
 五年生という学年も、もう半月ほどで、終了となる。

 市子と、マリ子は“卒業生を送る会“で“祭り“をしようと、走りまわっていた。担任の八木先生も、校長先生も賛成して、協力するといっていた。
 でも、心配なのは、今だに、一週間に一度、それも、職員室にしか、登校してこられない八重子を、みんなのわのなかにいれられるか、どう

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【母の遺作】 すすきの村で その1

友達になったしるしに三百円… ひとりっ子のマリ子は、おとなしくて、すごく人みしりする性格だった。
 それが、五年生の二学期に、町の団地から田んぼの中の一軒家に引越してから、すこしずつかわってきた。
 きっかけは、隣りの五年二組の麻子だった。
 まだ友達ができなくて、 一人で下校してきたマリ子を、麻子は、土手のすすきの中にねころがって、 まちぶせしていた。
「マリちゃん、いい服着てるねえー、あんたっ

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【母の遺作】 すすきの村で その3

【母の遺作】 すすきの村で その3

泣け、泣け、おもいつきり泣け「八重子ちゃーん、八木先生の手紙、持ってきたよ」
 市子は、八重子の家にとびこんだ。
「いつも悪いねえ、市子ちゃん。八重子、ちょっと風邪ひいたらしくて…、熱があるのよ。ねかせてるんだけど、あがっていってくれる」
 八重子のお母さんが、家の奥からでてきた。
「うん。おばさん。その前に教えてくれる?今、伸一兄さんと正吉じいさんにきいたけど、八重子ちゃん、祭りがすきだって?」

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【母の遺作】 すすきの村で その2


モヘヤのセーターについたよごれ 台風が、かすってすぎた月曜の朝急に、気温が、さがった。
 マリ子は、父さんに買ってもらったばかりの白いセーターをだす。
「あら、それは、おでかけ用じゃない。だめよ、学校なんかに着ていっちゃ」
 母さんは、いったけど、マリ子には、みんなに見せびらかしてやりたい、気持ちの方が、ずうーっと強い。
 母さんの声なんて、静こえないふりで、さっさと、 着がえをすませた。
「マ

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バレンタインデーはおすき?その2

バレンタインデーはおすき?その2

パンパカパーン、今日は年に一度の……

母さんが、台所から、さけんでいる。

「遅刻するわようー。早く起きなさーい!」

2段ベッドの下に寝ている洋子は、首を横にまわして、机の横の布袋を見る。ポコッとふくれた布袋の底には、つられて買ってしまったチョコが、ひっそりとしまってある。

「どうしたのー、いそいでよー。母さん、手がはなせないのよー!」

コーヒーの香りといっしょに、母さんの声が、おそってき

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バレンタインデーはおすき?その1

バレンタインデーはおすき?その1

ギリチョコって、なあに

北風が、さあーっと、商店街を、ふきぬけていった。

「洋子、バレンタインデーは、おすき?」

 ゆいちゃんが、調理実習用のじゃがいもの入った袋を、ブランブランさせながら、きいた。

「わかんない。バレンタインのチョコなんか、いっぺんも買ったことないんだもん」

「だろうと思った。洋子は、ひっこみじあんんだから……。買おう、買おう。こういうのは、タイミング!」

 ゆいちゃ

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【母の遺作】パラシュートにのって

【母の遺作】パラシュートにのって

【母の残したメモより】

長女と初めて試みた「つぎたし話」です。打ち合わせなしで、各自、自分の書きたい方向に話を展開し、相手に「どうだ、次はどうする?」とバトンタッチしていきました。
 もちろん、おさないところがあるようですが、二年生の子どもの興味、話の展開ぶりが見えて、おもしろく感じました。

☆☆☆☆☆☆☆

※太字が子ども(私)、細字が母が書いたものです。

 ゆうこちゃんのたからものはね、

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【母の遺作】はれた五月に

【母の遺作】はれた五月に

 一ねんせいの ルミちゃん、ランドセル ガタガタさせて、プンプン おこってるんです。
 きょう、がっこうで つくった かみのこいのぼりは、ふりまわされすぎて、めを まわしちゃったみたい。しっぽが、ちょっぴり ちぎれてます。
 おまけに… すごい らんぼうな うた。ルミちゃんと おなじくみの タロチンと ヨシキくんまで、どらごえで うたっています。
「やねよーりー、ひーくーいー こいのぽりー」
 ル

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【母の遺作】おっかしなきこ

【母の遺作】おっかしなきこ

~てのひらら No1 みずほどうわしゅう~

【はじめに】

昨年から出したい出したいと思っていた小さな童話集「てのひらら」をやっと作ろうと決心しました。

その第一の理由は、今年こそなまけぐせを少しは直したいと思ったこと

第二は、私の子どもと、お話し会に来てくれる子ども達に、少しでも、私の作った「おはなし」を読んでもらいたいと思ったこと

第三は、多くの人に作品の批評をしてもらいたいと思ったこ

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【母の遺作】きつねがひろった ひかるもの

【母の遺作】きつねがひろった ひかるもの

寒い冬の朝。

きつねのコン太は、すの中で、目をさましました。

「うーん、たいくつ!ちょっとさんぽしてこよう」

コン太は、森のほそみちを、とことこ、かけていきました。

(ここを、もう少し行くと、かおる子ちゃんの家のよこにでるぞ)

コン太は、わかれみちの所で、そう思いました。

「そうだ!かおちゃん、もうおきてるかしら?」

かおちゃんは、春になったら一年生になる女の子。コン太とは、森の中で

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