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ホームスクールを選んだ理由 2 ~未来を見据えた選択~
ホームスクールを選んだ理由 1 の記事はこちらです ▼
1. 公教育と社会の変化
均一的な教育方法と個性のギャップ
こんにちは、HSP母のマメです ☺︎
現在の日本の学校教育は、画一的な学習方法に基づいており、暗記や漢字の反復練習といった、これからの時代に必ずしも必要とされないスキルに多くの時間が割かれています。
一方で、AI技術の進化により、「人にしかない感性や創造力」 がこれからの社会で大きな武器になると期待されています。大学入試においても、総合型選抜(AO入試)が今後さらに拡大するとされ、知識の暗記ではなく、特定の分野で秀でた能力や個性がより重要視される傾向にあります。
しかし、こうした時代の変化とは裏腹に、現在の学校教育の評価軸は依然として大きな変化がないように感じられます。発達障害のある子どもたちにとって、この教育環境は 「苦手をフォローする仕組みが未だに整っていない」 だけでなく、「得意を発揮できる場面が少ない」 という課題を抱えています。
息子のマコト(仮名 : HSC+発達障害)は、3歳当時に園生活で大きく自信をなくし、深刻な二次障害を経験しました。その経験を通じて私が強く感じたのは、彼の持つ豊かな感性は、まさに次世代で活躍できる能力のひとつだということ。そして同時に、自己肯定感が育まれないまま子ども時代を過ごしてしまえば、その能力を発揮する機会を失ってしまうかもしれない ということでした。
「多様な人材が求められる社会」と「均一的な学びから変われない学校教育」。この大きなギャップの中で、発達に特性のある子どもたちは、自信を失ったり、適応することに苦しんでしまう現実があるとすれば、それはとても残念なことです。
新学習指導要領と現実のギャップ
マコトが4年生だった2020年に新学習指導要領が導入され、「主体的な学び」が強調されました。外国語や道徳の教科化、プログラミング教育の必修化など、教育内容が大きく見直され、これからの時代に求められるスキルを身につけるための改革が進められました。しかし、実際の現場では、急激な変化に対応しきれず、従来の受動的な学習スタイルから抜け出すことは容易ではなかったように感じます。
特に、GIGAスクール構想のもとで一人一台のタブレット端末が配布されたことは大きな変化でした。タブレットは操作が簡単で、視覚的なアニメーションやインタラクティブな教材を活用できるため、学習のハードルを下げてくれる効果を感じます。ただ、授業の進め方は先生の得意不得意に左右される部分も大きく、学校全体でICTを積極的に活用できる環境が整っているとは、当時は言い難い状況だったと感じていました。これは前半記事でも触れた先生方の業務量の多さからも、無理もありません。
マコトはもともとPC室でのプログラミング学習を楽しみにしていましたが、タブレットの配布以降、PC室の使用頻度は減り、数ヶ月後には閉鎖されてしまいました。これは息子の学校に限らず、市内の学校全体で同様の流れだったようです。タブレットは便利な反面、受け身の学習に偏りがちで、特に創作活動やコーディングのような発展的な学びには、やはりPCの方が向いています。
結果として、「ICTの活用」 という名目で導入された新しいツールが、逆に主体的・創造的な学びの機会を狭めることに繋がったようにも感じられた出来事でした。
タイピング大会で得た「成功体験」
ホームスクールをベースに学んでいた6年生の時、マコトは学校で開催された タイピング大会 に参加しました。学校ではICT教育の一環としてタイピング練習に力を入れており、児童たちは朝の活動時間などにタブレットを使って「寿司打」というタイピングソフトで練習を重ねていたそうです。
マコトはホームスクールを始めてからの丸4年間、基本的に学習はPCが中心だったため、PCのキーボードは日常的に使う道具。結果としてタイピングスキルは自然と身についていました。
その甲斐あって、大会では先生を含めた中での最高得点だったとのことで表彰していただきました。このことは彼にとって、初めての「学校内での成功体験」 だったかもしれません。
DCD(発達性協調運動症)を持つマコトにとって、手先の動きは日常生活でも困難が多いためにコンパクトでキー間隔の狭いタブレット用のキーボードでは、タイピングに慣れるまでには時間がかかっただろうと思います。しかし、長時間の使用を前提としているPCのキーボードで、興味のある事柄に関して調べ物などしていたことで、無意識のうちにもキー配置は完全に覚えており、大会当日は学校のタブレットでしたが 短時間で適応することができ、大会で結果を残すこともできました。
タイピングに限らず、不器用さが目立つ発達障害児にとって、個々に適した道具を選ぶことの重要性 を改めて実感した出来事でした。「できる・できない」 の評価は、単にその子の能力の問題ではなく、適した環境やツールが整っているかどうかにも大きく影響します。
個々に合った環境で学ぶことが、どれほど大きな違いを生むのでしょうか。環境と学習方法が合えば、子どもたちは本来の力を発揮し、自信につながる経験を積むことができる、と信じています。
学校教育が「みんなが同じ方法で学ぶこと」を前提とした体制から抜け出せない限り、特性のある子どもたちにとっては、自分の力を十分に発揮することが難しくなります。苦手なことを克服するだけでなく、「その子が得意な分野をどう伸ばすか」 という視点を持つことは、次世代で活躍していく子どもたちのこれからの教育に求められるのではないでしょうか。
学びの環境は、子どもが「適応する場」ではなく、「自分を活かせる場」であって欲しい。
そう思いながら、私たち親子はホームスクールという選択をしました。
2. 教育を受けさせる権利とは?
「教育の義務」は、子どもに合った学びの機会を確保すること
日本では「義務教育=学校に行くこと」が前提とされています。けれども親の義務として、その本質は「子どもに教育を受ける機会を提供すること」 であるということは、心に留めておくことが必要だと感じます。
こうした考えを支える法律として、「教育機会確保法(正式名称:義務教育の段階における普通教育の機会の確保等に関する法律)」 があります。
この法律は 「不登校の児童生徒に対して、学校外での学びも教育機会として認め、個々の状況に応じた支援を行うこと」 を目的として、2017年に施行されました。
「学校外の多様な学びの場も、義務教育の一環として考えられる」
この法律により、学校に通うことだけが「教育を受ける」ことではなく、不登校の子どもがフリースクールや家庭学習などを通じて学ぶことも、教育の一環として認められるべきである という考え方が明確に示されました。
〜「教育機会確保法」が示す学びの選択肢〜
この法律では、不登校の子どもたちに対して、以下のような考え方が示されています。
✅ 「学校復帰を唯一の目的としない」
→ 不登校の子どもに対し、「必ず学校に戻らなければならない」というプレッシャーを与えるのではなく、それぞれに合った学びの場を見つけることが大切とされる。
✅ 「フリースクールや自宅学習も、学びの場として尊重される」
→ 学校以外の学びの場も教育の一環と認め、個々の事情に合わせた柔軟な学習環境を提供することが重要とされる。
✅ 「子どもにとって、安心して学べる環境づくりが最優先」
→ 不登校の背景にはさまざまな理由があるため、子どもが安心して学び続けられる環境を整えることが求められる。
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ホームスクールの課題と広がるオンライン学習の選択肢
こうした法整備が進むことで、不登校児へ対する理解も少しずつ広がりつつあるとはいえ、人とは違う決断をするには大きなエネルギーを消費します。
また避けられない現実的な課題として、学習に必要な費用は家庭の負担が大きくなります。
日本ではフリースクールに関しては、※東京都など一部自治体で助成金が支給されますが、全国的には公的な補助金がないのが現状です。
ホームスクールに関しては、国からの直接的な補助金は存在しません。地域によっては、ホームスクールを支援するための情報提供やコミュニティの形成を行っている団体もありますが、具体的な金銭的支援は少ないのが現状のようです。(※それぞれの最新情報についてはご確認をお願いいたします)
一方で、コロナ禍を機に、オンライン学習の選択肢が大幅に増えたことは、我が家でもホームスクールを実践する上での大きなメリットとなりました。かつては、NHK for School や通信教育といった選択肢でしたが、現在では オンラインで学べる環境が飛躍的に充実 しました。YouTubeだけでも 専門的な知識を分かりやすく学べるチャンネルは日々増え続け、従来の学校教育では得られなかった学びの機会が広がっています。
また対面授業に代わる形で、Zoomなどを活用した家庭教師や塾も普及 しています。特に発達障害のある子どもにとって、対面の集団授業では集中が難しくても、マンツーマンのオンライン指導なら理解しやすい というメリットがあります。
ホームスクールの課題のひとつとして、「集団での学びの機会が少ない」ことが挙げられますが、最近ではオンラインでグループ学習を行う機会も増えています。例えば、Zoomを使って子どもたちが意見を交換するディスカッションやプレゼンテーションの機会がある など、ホームスクールでも社会的な学びが可能になっています。
日本ではまだ制度が整っていないため、保護者の負担が大きいことは事実ですが、今後さらに教育の多様化が進むことで、ホームスクールもより現実的な選択肢として確立されていくことを願っています。
3. ホームスクールを決める上で大切にしたこと
将来的な環境選びの力を育む 〜主体的な学びの意思表明〜
息子が小学校1年生の終わりにホームスクールを決断した際、私は「自分に合った学びの場を選んだ」という意識を持ってくれたら.. と考えました。
なぜなら、彼は気質・特性上、これからの長い人生において、環境を選ぶ力はとても大切 になるからです。
・「努力不足で学校に行けなかった」ではなく、「より良い学びの選択肢を選んだ」 ことを理解すること。
・将来的にも、自分が好きな ITスキルを活かせば、自分に合う学習環境や働き方を選べる可能性があること。
一般的には「不登校」と捉えられるかもしれませんが、「学ぶため」の積極的不登校は、本人にとってポジティブな動きだと考えています。
実際に、ホームスクールの生活が始まり、不安症状を軽減するために服用していた薬(ストラテラ)を止めることもできました。
彼が今後も、自分の特性に合う環境を選んで、人生の可能性を広げていくために、自ら行動できるようになることを願っています。
学校との良好な関係を維持することの大切さ 〜限定登校の取り組み〜
ホームスクールとして自宅を学びのベースに決めた時、マコトに負担のない時間内での限定登校を事前に設定しました。本人を含め支援の先生とも話し合い、週に2日(火・金 / 1日2時間のみ)を卒業時まで継続。これにより、集団生活から得られる貴重な経験はある程度確保しつつ、無理のないペースで授業を受けることが可能となりました。
学校側も、週に4時間という限定的な時間のみの登校になったことで、学校側もその4時間(1日2時間×2日)は、1年生当時は難しかった合理的配慮をしっかりと実践できるように予定を調整してくださり、大変ありがたかったです。限定登校時に先生方とお話できるタイミングには、お礼の気持ちを伝えるように心がけていました。
そして、学校との良好な関係を維持することは、息子の心理的な安定のためにも、とても重要視していました。支援してくださる先生方だけでなく、周囲の方々にとって「応援したくなる子」 だと感じてもらえる「愛され力」は、支援が必要な本人にとって、成人後も必要な ”生きる力” でもあると考えています。
また、学校の先生方は、息子がホームスクールで取り組んでいた写真やプログラミングの活動についても応援してくださっていました。
学校とのつながりが変わらず良好であることは、息子にとって『自分は社会の一員であり、学びの場は多様である。』 という実感を持つことができ、大きな意味があったと思います。卒業式には彼の中で大きな達成感を感じることもできたようで、私も安堵しました。
4. まとめ 〜未来を見据えた学びの在り方〜
日々進化し続けるAIの技術の中で、大学受験や就職といったこれまでの当たり前の価値観も大きく変わっています。創造力や独自の発想、主体的に学ぶ力が価値を持つ時代へと世界が変化しています。
日本の教育現場も、「全員が同じことを学び、同じ基準で評価される」 という従来の枠組みから、多様な個性を伸ばす方向へシフトすることを急ぐ必要があります。特に特性に偏りのある子どもたちのためには、1日も早い「合理的配慮の充実」 や 「個々の学びに合った柔軟な教育環境」 が求められます。
けれども、日本の学校教育は長年にわたり確立された枠組みの中で運営されており、すぐに大きな変化が起こることは難しいのが現実です。補助や制度の支援がない中でもホームスクールという選択を検討し、実際に実践することに至ったのは、「変化を待つのではなく、今できる最適な学びの形を選びたかったから」 でした。
これからの時代、子どもたちが自分らしく学び、得意を活かせる環境を作ることが、彼らの未来をより良いものにしていくと感じているので、このような内容を発信したくなりました。
最後まで読んでくださった方へ
ありがとうございました..! 🙏✨
ホームスクールを選んだ理由 1 の記事はこちらです ▼
息子マコトが実際に丸5年経験したホームスクールの内容については、改めて詳しくご紹介できればと思います。
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