高齢者施設でのとある臨床例
IFA認定アロマセラピストとして活動を始めた後、再び、母校で介護現場でのアロマテラピーについての学習をし、しばらくしてから、委託業務として、都内の立地的にも高級な感じな所と、庶民的でアットホームな感じの所の『介護老人保健施設』で、アロマケアを担当させていただいていました。病院ロビーと緩和ケア病棟は、ボランティアでしたが、気楽な感じではなく、行ってみたらひとりで任されてしまうことも多かったです。(苦笑)
今日は、そんな中から、施設スタッフ様から認知症だと紹介されたご利用者様のお話です。
月に一度。と言うタイミングは、アロマセラピストにとっては、ご体調が大きく変化がある様子を見させていただけます。
既に、2、3回ケアさせていただいたことのあるA様は、その日は、アパシーが見られました。比較的、お元気で施設のカーテンを閉めたり、窓を拭いたり、“お仕事”を責任もってなさるのがお好きな方だったのですが、どうされたのかな?と、思われました。
車椅子を押してこられたスタッフ様は、ここ数日、体調が悪くて認知症が進んでるとおっしゃいました。
無気力、無表情、無関心は、認知機能の低下と共に、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやセロトニン、オキシトシンなど)の受け渡しが上手くいっていなかったり、不足していたりと言う状況で起こります。
当時でも、特定の精油は、そのメカニズムまでは定かでなくとも、セロトニンやドーパミンの測定値に影響が出ることは知られていました。
委託業務の取り決めで使用する精油の種類は決まっており、どの高齢者施設でも、ほぼ全員に『良い香り』と思ってもらえるようなブレンドをいくつか持参する方法でしたが、使用可能な精油は、芳香浴に使えるように、いつも別で持って行っていました。
私は、タッチケアと言うものは、いかなる場合も『タッチの許可』を得る必要があると考えています。
認知症だから許可が取れないと思われますか?
そんなことはありません。
乳児から認知症の高齢者まで、自分にとって安全か心地よいか『快』か『不快』は判断でき、表情に表します。
精油を準備して、フワッと鼻先の空気を変えると、一瞬でA様の瞳に光が差しました。
「あら、あなただったの?」
すぐさま、A様は、そうおっしゃられました。
その言葉の“本当の意味”は、私にはわかりません。
しかし、穏やかな表情を見せるA様は、既にアパシーではありません。
私も、ニコニコとしながら、掌を上に手を差し出すと、A様もその手にご自身の手を重ねてこられました。
「植物の香りのオイルを使って、手のマッサージをしてもいいですか?」
と、伺うと。
「そうねぇ。気持ちいいのよねー。」
とお返事されるのです。
手技自体は15分足らずですが、アパシーな状態から30分くらいかけて対話をしながら過ごしますと、もう、全然、認知症って嘘ですよね?と言う状態に見えて、本当に不思議でした。
ご入居されている方は、さまざまなご事情があり、それによって、何か覚悟みたいなものを決めていらっしゃることも伺えたりします。
認知症だと思われている方が、人間関係がスムーズだとおっしゃられる方もいたので、本当は認知症ではないのかもしれないし、その日たまたまスタッフさんとケンカされたのかもしれません。
ですが、認知症自体にも波があり、意識が虚になったり、ハッキリしたりとあることも知られています。
A様がどうだったかは、知る術も、知る必要もないのですが、生活の中に、この30分があってよかったと思っていただけている笑顔で帰っていかれました。
移動できない方を個室で行うこともありますが、お部屋から出かけることにも意味があるので、アロマケアは、介護施設の日常の中で、受動的に行える非日常なのですが、施設の広間で行うと、施設のスタッフ様も通りかかりに深呼吸をしていかれます。
深呼吸は自律神経を整えることに大いに役に立つので、ほんの一瞬でスタッフ様もリフレッシュされていると伺っていました。
私は、これをスタッフ様の心身の健康管理(福利厚生)として、受けていただけたらいいのに。と、常々思っているのですが、なかなかご賛同いただける偉い人に巡り会えません。
もし、偶然にも、これをご覧になった福祉施設関係者様がいらしたら、是非、一緒にお仕事させてください。講師活動も多数行っており、スタッフ様への指導も可能です。
フォロー&いいね、コメントなどで応援してくだれば、気が向いて、仕事と研究の合間に、研究成果を書いていくと思います。
ただ、ヒトミシリーなので、気軽にお返事はできないかもしれません。
あらかじめご了承ください。
ご支援ありがとうございます。いただいたご支援は精油の購入や「アロマケア」の臨床研究費としてありがたく頂戴して、研究成果を発表していけるように頑張ります。今後ともよろしくお願いします。