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今日娘が入院しました③

診察室の奥へ通され、ベンチでしばらく待つことになる。
「お肉食べたい」と娘。
診察が終わったら、ランチはステーキ食べようねって約束してたのに、もう今日はそれも叶わない。
ここ数ヶ月、娘と私の関係は最悪になっていて、一緒に外食することもほとんどなくなっていたというのに。
「うん、退院したら食べようね」
切ない気持ちを抑えて、そう言うのが精一杯だった。

ほどなくして病棟の看護師が私達を迎えに来た。時間は知らない間にお昼前になっていたが、空腹も感じないくらい緊張が続いていた。病棟へ向かう緊張はもちろん、入院準備を何もしてこなかったから、私の意識は家の中にも飛んでいた。面会時間が終わってしまう17時までに荷物をまとめて戻って来れるかな…、コップあったかな…お箸セットは新しく買ったほうが良いかも…
さらにその緊張が増すくらい、診察室がある棟から病棟までの長い廊下。無言の看護師の後を歩き、どんどん奥へ奥へと連れて行かれる…帰りに迷子になりそうなくらい、右に曲がったり左に曲がったり。

やっと着いた病棟の入り口はロックがかかっている2重のがっしりとしたドア。病院関係者しか解錠出来ないようになっていて、病棟の中は外から見えないようになっている。精神科の病棟と聞いて、重々しい雰囲気しか想像出来なかった。ドアの前で看護師が面会に来た時の説明をしてくれた。
これから車で1時間かけて面会に来ても、1日10分しか娘に会えない日々が始まる。

「ガシャン、ガシャン」
と大きな解錠の音とともに重々しいドアが開いた先に広がっていたのは、大きな窓から光が差し込む広い談話スペースを備えた、明るくて開放的なフロアだった。
精神科と聞かなければ他の診療科の病棟と大差なく、重たい雰囲気はほとんど感じられなかった。
ナースステーションの前で婦長さんが出迎えてくれていた。こういう病棟の婦長さんだからか穏やかな物腰の方で、幾分か緊張も和らいだ。
娘が入院する部屋へ入ったあと、私は面会室へ通された。一番気になっているのは主治医になる先生だった。娘と相性が合うと良いのだが…いや、合ってくれないと困る、病気が病気だもの。入院したらさらに悪化するなんてありえない。合わなければ変更することは出来るのだろうか…
ずっと通っている開業医に絶大な信頼をおいている娘も「ここに入院したら〇〇先生とはどうなるの?」と、早くも心配していた。

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