Hir@mi

娘の入院をきっかけに、これまでの出来事を残していきます🍀 読んでくださりありがとうござ…

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娘の入院をきっかけに、これまでの出来事を残していきます🍀 読んでくださりありがとうございます!

最近の記事

太陽が消えた夏③

娘に散々罵られたあの日から、私は生きる意味が分からなくなった。不器用なりに娘を一生懸命育ててきたこの年月は、脆くも幻に変わった。過去でも思い出でも何物でもなくなり、私の中でガラガラと音を立てて崩れ去ってしまった。 本当に目の前が真っ暗というのは、この時のことを言うのだろう。きっと日差しが強くて暑かったであろう夏なのに、どこを見渡しても太陽なんか出ていないような真っ黒の記憶、今もこの夏のことは娘と決裂した日以外あまり思い出せなくて、悲しい気持ちだけが湧き上がってくる。 『もう

    • 太陽が消えた夏②

      前述の①の後、入院の話に戻ろうと思っていたのですが、気持ちを整理する為に夏の回顧録を先に残します。 「社会に私の居場所が無い」 娘は新卒採用で入社した会社も、その次の会社も人間関係が上手くいかなかった。 娘はただ自分が必要とされる居場所が欲しかっただけだ。それは誰しも望むことで、珍しいことではない。家にこもりがちになった娘はネットの中に居場所を求め、特定の人達とチャットや電話でよく話すようになった。 娘が繋がったのはおそらく、社会はおろか親や家族に対しても偏見を持っている

      • 太陽が消えた夏①

        娘はうつ病と診断された為に休職していた会社をクビになった。 復職してから3日目、夏の始めの頃だった。 真夜中泣きじゃくる娘の姿を思い出す度、未だに涙が溢れてくる。代われるものなら代わってやりたかった。 会社へは娘ではなく私が呼び出された。 自分達の不手際(実際はその不手際すらも把握出来ていないのだろうが)は棚にあげて、社長とその部下の皆様達から、娘ばかりを責める話を聞かされた。なぜ娘が休職することになったのか、この人達は誰も疑問に思わないらしい。 うつ病の娘を理解して欲し

        • 娘の入院第1週目①

          娘から頼まれた買い物をして、家に着く頃辺りはもう暗くなっていた。 今日持っていけなかった娘のお気に入りのぬいぐるみも忘れないうちに袋に入れた。 最近掃除や片付けが出来なくなっていた娘の部屋は、床に物が散乱していた。際限なく買い物していたこともあって、見慣れないものもそれなりにある。片付けていいだろうと思うものは片付け、でもこの部屋に朝までいた娘の痕跡が残っているようなものは、何となくすぐに片付ける気になれなかった。 この部屋にいつ戻ってこられるだろう… 主治医からは入院3ヶ月

        太陽が消えた夏③

          今日娘が入院しました⑤

          長い廊下を抜けたところに売店がある。いくつか買ったほうが早いものがあるので、迷わず飛び込んだ。 お箸セットは可愛いピンクの花柄に…これで娘の気持ちが少しでも晴れるなら。 歯磨きセットもピンク色。お腹は空いてないけど、何か食べないと持たないな…運転しながら食べられる小さなパンとコーヒーを買って病院を出た。 運転しながら、効率よく荷物をまとめるシュミレーションが頭の中で始まる。 私自身も何回か入院していて入院グッズ的なものはある程度揃っているので、台所のあの棚と洗面所のあの引き

          今日娘が入院しました⑤

          今日娘が入院しました④

          あれこれ考えを巡らせていると、面会室に若い男性が入って来た。 「こんにちは、主治医の□□です」 開業医よりも若い…娘と歳が近いのは良いかもしれないけど大丈夫!? でも、その心配は一瞬で消えた。 主治医の先生は、まず双極性の1型と2型について紙に図を書きながら、丁寧に丁寧に説明してくれた。開業医から病名すらも聞かされておらず、ネットで調べても確信が持てていなかった私は、娘が2型であることの再確認ができた。 そして、開業医から癖になる薬がかなり処方されていて、娘の将来を考え

          今日娘が入院しました④

          今日娘が入院しました③

          診察室の奥へ通され、ベンチでしばらく待つことになる。 「お肉食べたい」と娘。 診察が終わったら、ランチはステーキ食べようねって約束してたのに、もう今日はそれも叶わない。 ここ数ヶ月、娘と私の関係は最悪になっていて、一緒に外食することもほとんどなくなっていたというのに。 「うん、退院したら食べようね」 切ない気持ちを抑えて、そう言うのが精一杯だった。 ほどなくして病棟の看護師が私達を迎えに来た。時間は知らない間にお昼前になっていたが、空腹も感じないくらい緊張が続いていた。病棟

          今日娘が入院しました③

          今日娘が入院しました②

          無理も無いが、たぶん娘はその時の状況を把握出来ていなかったのだろう。先生の大きな声のおかげで、思考停止だったのかもしれない。 「今日でも大丈夫です」とあっさり答えたので、私のほうが「エッ?」と焦ってしまった。 「大丈夫なの?準備はお母さんするけど、何も用意してきてないよ」と尋ねたが、「うん」とだけ答えると入院手続きの書類を書くために、娘は自分の鞄の中から眼鏡を探し始めた。 「あっ、お母さんに書いてもらうからね」と言って、先生が私の目の前に書類を並べた。 『医療保護入院』 初

          今日娘が入院しました②

          今日娘が入院しました①

          かかりつけだった小さな心療内科の病院から紹介され、大きな総合病院で朝一番の診察。 初めて来た病院、慣れない病院内の雰囲気に戸惑いと緊張が見える娘。 予診は若い女性の先生。少しにこやか過ぎるのが気になる。以前かかりつけの病院の予診で、何かと笑う看護師さんに「気持ちが沈んでいるので、笑うのをやめてもらえませんか」と娘が言ったことを思い出して不安がよぎったが、幸い今日の娘には嫌と思うほどではなかったらしい。 診察の先生は年配の男性。声が大きいことに少し娘がイライラし始める。今の娘

          今日娘が入院しました①