『許せない男 ~警視庁特殊能力係~ / 愁堂れな』(集英社オレンジ文庫)を読んで。
午後も少しすると陽の光がなんとなくオレンジがかって見える。日の短さを実感すると、いよいよ冬だなぁという気がしてきます。
今日の日の入り時刻は17時より前でした。早いッ。冬至が一年で一番昼間が短い日という触れ込みですが、日の入りの時刻が一番早いのは12月上旬です。それにしても、一番寒いのが2月なのはどういった理由なのか。一日の最高気温を出すのも午後2時ですし、わたしが眠くなるのも午後2時……。2という数字に、なにかあるんでしょうか…… zzz
さて! 目を覚まして、今回は集英社オレンジ文庫から愁堂れな先生著『許せない男 ~警視庁特殊能力係~』の感想を綴ってまいります。押忍。
―― 注意 ――
・感想を書くにあたりこの記事内では作品の内容に関わる #ネタバレ をある程度しています。事前になにも知りたくない方はご注意ください。
こちらは警視庁特殊能力係シリーズ第3弾です。1・2巻については軽く触れるだけにしていますが、ネタバレもあると思うのでご注意ください。
◇の前に、『キャスター探偵』にも触れさせて
愁堂れな先生の作品は、同じく集英社オレンジ文庫から出された『キャスター探偵 金曜23時20分の男』を読んだのが最初でした。このシリーズがめちゃくちゃ大好きで(長くなるので詳細は控えます。が、面白いのとはまた違う……)
キャスター探偵はシリーズ第4巻まで出ていますが、今はもう警視庁特殊能力係シリーズが進行していますし、続編の望みは薄いんでしょうか。わたしは諦めてませんよ!安仁屋のこととか投げっぱなしでしょ!?
◆『忘れない男 ~警視庁特殊能力係~』
気を取り直して、警視庁特殊能力係シリーズに戻ります。まずは1・2巻の振り返り。
(あらすじ)
一度見た人間の顔は忘れない――
「特殊」な能力を持つ新米刑事と「努力型」のエリート上司の事件ファイル!
警察学校を卒業したばかりの麻生瞬。憧れの警視庁刑事部捜査一課に配属されたのだが、彼のデスクがあったのは地下二階、上司が一人いるだけの「特殊能力係」だった。業務内容は指名手配犯の顔を覚えて街中で見つけ出す「見当たり捜査」と呼ばれるもの。なぜこの係に配属されたかわからない瞬だったが、上司の徳永に言われて気がついた。一度でも見たことのある顔なら必ずわかる、というのはどうやら普通ではないらしい......?
翌日からすぐに成果をあげはじめた瞬だったが、なぜか命を狙われるようになり――。15年前の代議士死亡事故との関係とは!?
◆『諦めない男 ~警視庁特殊能力係~』
(あらすじ)
忘れることができる人が、うらやましい――。
「忘れることができない」刑事・麻生瞬が、その能力で5年前の事件の謎に迫る!
一度見た人物の顔は絶対忘れない、新人刑事の麻生瞬。年を経て容貌が変わってしまった人物でも見逃すことはない。その能力を買われた瞬は、尊敬する上司の徳永とともに指名手配犯を見つけ出す「見当たり捜査」をおこなっている。そんなある日、浦井という殺人未遂犯が刑期を終えて出所した。
浦井は殺せなかった相手を再び狙う可能性がある――徳永の懸念を知り、瞬は協力を申し出る。浦井をそそのかしたのは誰なのか…。瞬の「特殊能力」によって、思いがけない形で5年前の事件の真相が明らかに!?
◆『許せない男 ~警視庁特殊能力係~』
(あらすじ)
何年経とうと、許せないことがある――。
特殊能力を持つ新人刑事が不可解な事件の謎を追う!
指名手配犯の顔写真を記憶し、街中から探し出す「見当たり捜査」に携わる新人刑事の麻生瞬。仕事にも慣れてきた時期に思わぬ事件が起きた。同じ捜査一課の小池が何者かに襲撃され、重傷を負ったのだ。幸い命は助かったものの、今度は瞬の直属の上司である徳永あてに、爆弾の小包が届いた。三年前までコンビを組んでいた徳永と小池に対し、逆恨みを募らせている人物がいるのでは…?
でもなぜ、今さらなのか。思い当たる人物をしらみつぶしに確認していくも、該当者がわからない。一度見た顔は絶対に忘れない瞬は、現在、徳永の周囲にいるはずの犯人を見つけ出そうとするが――?
◇作者は愁堂れなさん
愁堂れな先生( @renashu )は、調べてみるとBL小説をたくさん出されている方のようで、わたしはオレンジ文庫から出た一般文芸しか読んでないので、BLも一度は試してみようかと思うんですが、多すぎてどれを読めばいいのかと思いながら、まぁ無理にBL読まなくてもいいかなという気になっています。腰が上がらない……すみません。
ただ、ときどきですが、作品内に愁堂先生のどれか他の作品のスピンオフなのかなというキャラクターがポッと出のように登場するので、そちらが何処の誰なのか、がとても気になります。愁堂れなpediaとか誰か作ってくれたら、もしくは。
◇装画は円陣闇丸さん
円陣闇丸先生( @enjin_y )。BLメインで活動されている方のようです!作者さんといい装画さんといいBLで固めた様子。読書メーターで『キャスター探偵』や『警視庁特殊能力係』のレビューを読んでみると、愁堂先生のBLも読んでる方が多数いるっぽくて(作者買いしてる人だと思います)、そんな意味でもBLメインなイラストレーターさんがよかったんじゃないかと。
それにしても、イラストレーターさんってどうやって選んでるんでしょう?候補が何人かいて選ぶのか、それとも編集部が「今回はこのイラストレーターさんに頼むぞっ」みたいに、バシッと決めちゃうんでしょうか。気になりますね。
◇『2時間サスペンス』感は健在
愁堂先生といえば、独特の作風です。一言でいえば『2時間サスペンス』なのです。形態は、事件の犯人と、それを解明する探偵役とがいるミステリーなのに、本格ミステリーでは、けっしてない。『2時間サスペンス』としか言いようがないんです。読めばわかります。
◇感想
いくつかの章で、いくつかの事件とわけではなく、まるっと一冊でひとつの事件でした。小池は暴漢に襲われて、徳永には爆発物が届き……と、犯人は途中までは話にも出てこないので、これといった瞬間がくるまでは全然わかりませんでした。疑わしい人さえも出てこない。『本格ミステリーでない』と言ったのは理由があって、それは作者が読者を驚かせようとか騙そうとか、愁堂先生の作品には、そういう意図がないんです。刑事モノのドラマを見せているようなそんな感じです。
犯人は、文章を追っていくごとにわかっていくだけなので、ミステリーの読後のように爽快感みたいなのはないんです。キャラ萌えする作品なのかも。逆に言うとキャラ萌えできない人はつまらないかも。
新米刑事の麻生くんは一度見た顔をどんなに年数が経っていても忘れないと言う特殊能力の持ち主なんですが、突然声がデカくなったりという刑事にはヤバいんじゃないって癖もあったりして、それに徳永さんもそれほど特別エリートという雰囲気はないです(わたしの感じ方なのかも)
刑事モノなのですが、わりとツッコミたいところが満載な感じなので、本格ミステリーにも程遠ければ、本格警察小説にも程遠いです。ほんとに『2時間サスペンス』……。
難しい小説ばかりも疲れちゃうので、脳休めたいときにいいと思います。わたしも買い続けちゃってますし。ハッピーターンみたいな、そんな存在です。(ときどき妙に食べたくなる
◇続編はあるのかどうか
発売後にすぐ重版されたそうですし、売れているとは思われます。ただ、シリーズとして大きな流れはないので、ここで終わってもみたいな雰囲気はあります(終わってもないんですが)続編出たら買っちゃうと思いますが。
シリーズを続けるにしても、新しい事件になっていきそうです。今までに登場した伏線のようなものは、佐生の事件を掘り起こすぐらいしか思い当たらないですし、当事者(佐生)が忘れたがってることを掘り起さないだろうな……って気もするので、この線は薄い気がします。
『キャスター探偵』はいつまでも続きを楽しみに待ってます!
シリーズモノって続編出るかどうか、ほんっと気になりますね……。出るか出ないかでいつも泣いてます……。
◆後記
『2時間サスペンス(読めばわかります)』だと、書ける感想が少なすぎるので、今回は手短に!
男二人がバディしてる本格警察小説が読みたい人は日月恩さんの『それでも、警官は微笑う』シリーズを読めばいいと思います。
面白いです。ただし分厚いです。