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2021年に詠んだ短歌まとめ

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(三年目)
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2021年4月の記事一覧

短歌連作「スーパーでカツ丼を買う」 4首

短歌連作「スーパーでカツ丼を買う」 4首

いつもとはちがう駅から特急に乗ってあかるい車窓には山

スーパーでカツ丼を買うこんな日もいつかはなつかしくなるだろう

マンションの10F以上に入るのは初めてだっけ一月の空

こんなにも高いところでカツ丼を食べエアコンの音を聴いてる

短歌連作「小さき午後のお茶会」 8首

短歌連作「小さき午後のお茶会」 8首

そうじゃない角度で光あててみるノートとペンで出会える景色

茫漠とねむれる黒き黒き森をぬけた小さき午後のお茶会

アンティークの額縁たちに囲まれて『銀河鉄道の夜』の夢立つ

僕がいまミルクティーなど飲めるのもカムパネルラのおかげなのかな

ひとの趣味でべつの世界をのぞくのがけっこう好きだたとえば紅茶

8の字のようにぐるぐる庭園をめぐるソテツも過ぎるぐるぐる

デュオ・トリオのつぎのことばがわから

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短歌連作「村人たちが谷に溶けゆく」 12首

短歌連作「村人たちが谷に溶けゆく」 12首

山頂の白い神殿から鐘はなにかを責めるように響いて

布きれで顔を覆った人たちが「罪人よ、悔い改めなさい」と

「身に覚えがない」と抗弁するほどに罰当たりだとざわついている

答えずにいれば「認めたわけですね」罰当たりだとざわついている

聖者ではないと盗賊なのですか 村人たちが谷に溶けゆく

囚われてる鎖をぶつけ捕らえたい まことの罪は夜の藪の中

横たわる老婆は狂者のふりをする道行く人を赤眼で睨

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