マガジンのカバー画像

2020年に詠んだ短歌まとめ

26
(二年目)
運営しているクリエイター

2020年12月の記事一覧

短歌 2020年下半期の自選60首「廃油の海を笑顔で泳げ」(後半)

短歌 2020年下半期の自選60首「廃油の海を笑顔で泳げ」(後半)

耳障りな歌だ幼稚だ身勝手だまるであたしの叫びのようだ

テーブルに強く下ろした中ジョッキ彼はじぶんを見つけて欲しい

シナプスの先まで満ちた絶望が目を曇らせる 霧を吐かせる

孤児たちは幾度も噴かすエンジンを叫びのような夜の疾走

気がかりな夢から覚めてまだ蜘蛛がいるんじゃないかと壁を見る朝

豚汁は旨みと濁りの超融合 喰らい飲み干す超木曜日

自然食カフェのトイレの張り紙の筆跡を目でなぞる一分

もっとみる
短歌 2020年下半期の自選60首「廃油の海を笑顔で泳げ」(前半)

短歌 2020年下半期の自選60首「廃油の海を笑顔で泳げ」(前半)

西暦も終盤となり世界地図を描く夢を追うことは出来ない

「読書です」そう答えたらつぎの句に東野圭吾が出てくる遠さ

隊長も仲間も捕虜も母すらも笑顔のままに欲す殺戮

うつくしいひとから消える病んだ街 廃油の海を笑顔で泳げ

完全なマネキンとなり削られた白いいのちを愛してました

逆上がり出来る/出来ない断つ白線 壁立ち上がる東西ドイツ

受付のひとの語勢が荒れている ポイ捨てされる河川の水面

もっとみる
短歌 2020年自分が選ぶ今年下半期の4首&上半期の4首(サイトマップ付)

短歌 2020年自分が選ぶ今年下半期の4首&上半期の4首(サイトマップ付)



西暦も終盤となり世界地図を描く夢を追うことは出来ない

うつくしいひとから消える病んだ街 廃油の海を笑顔で泳げ

蝋燭は等しく壕を照らすのに影を見つめて描く肖像

完全なマネキンとなり削られた白いいのちを愛してました

(表面)

詩ではない信号である繰り返す詩ではないもう心臓である

孤児たちは幾度も噴かすエンジンを叫びのような夜の疾走

まなざしが束縛してる眼球のおくに鎖がぎらりと光る

もっとみる
短歌連作「蝋燭は等しく壕を照らすのに」 10首

短歌連作「蝋燭は等しく壕を照らすのに」 10首

孤児たちは幾度も噴かすエンジンを叫びのような夜の疾走

テーブルに強く下ろした中ジョッキ彼はじぶんを見つけて欲しい

シナプスの先まで満ちた絶望が目を曇らせる 霧を吐かせる

フレディの夢に錯乱するひとがメトロで叫ぶ自傷みたいに

断崖の羊らの見る白昼夢もくもくもくと角は伸びゆく

蝋燭は等しく壕を照らすのに影を見つめて描く肖像

恥部というレンズを通す高僧の眼の下町に紫煙がくゆる

たてごとの音

もっとみる