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2020年に詠んだ短歌まとめ

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(二年目)
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2020年6月の記事一覧

短歌連作「映画館へ」 7首

短歌連作「映画館へ」 7首

サーモグラフィーが君の温度を35.9℃(ごどくぶ)と告げてはじまる僕たちの夏

自粛明けの観覧席はチェスボード我も座りてビショップとなる

閑散な大スクリーンに燃え滾る映画をわれら四、五人で浴ぶ

ながき夢から醒めてくように劇場を出る足どりは未だあの呼吸

ショッピングモールのまえの信号をまつ右肩に髪のさざなみ

「一度目の『AKIRA』を家で観たときは色々あってさ休学してた」

暮れなずむコメダ

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短歌「初めてのカラオケ」 6首

短歌「初めてのカラオケ」 6首

音量をマイク18ミュージック14とした惑星103

初めてのカラオケであるひとがいて僕のページがようやく開く

年下のひとも知ってる歌探しデンモクかざす『春よ、来い』

この曲は僕にとっての「ラピュタの」で君にとっての「リコーダーの」

カラオケをアプリ予約し入室しアプリ精算する、四角い

コンビニの千のボトルが囲んでもわれらは内に鉱泉水を

短歌連作「すべての音がほろびた電車」 15首

短歌連作「すべての音がほろびた電車」 15首

テレサの愛すらも単なる1と化し叫び木霊すきょうのリプ欄

放課後の上履きワルツは全滅しダイヤ厳守の軍靴を鳴らす

またひとつ目の輝きが消えていくすべての音がほろびた電車

アルバムの永遠の夏すら武器転用 仮面のパイプ椅子上の鯉

くずれてく暮らしにもぐるデジタルの海の流儀にまたくずれてく

ごく一部だけを救ってその他を「お前が悪い」と見做した制度

困窮の腕がお里を一周し結果としての暴かれた墓

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短歌「セカンド・コンタクト」 8首

短歌「セカンド・コンタクト」 8首

篤姫の宮崎あおいより服が毎回くろいひととドラマを

丸亀の麺を婦人がちらちらと口へ運ぶと啓示がのぞく

歌詞通り 意味ならぬるい揺れ方に知った気がする日曜のバス

ロココ調ギリシアの神と目があって黙する僕ととなりのニンフ

もう二度と海と割りばし裂けぬよう君のまつげをじっと見ている

いつからかスピッツばっか聴いてるよ矛と盾なら湖畔のほこらへ

雪解けのみずをあげたいユング繰る24の君、あのころの

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