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なぜ採用にブランディングは必要なのか?(vol.3:得るもの、失うかもしれないもの)

「ブランディングって、
 採用では本当に必要なんでしょうか?」

質問の意図を尋ねてみると、
以下の回答が返ってきました。

最近、採用ブランディングと称して
ホームページ、ロゴのデザイン、
プロモーションを変えましょうと
表面的なことばかり言う営業の声
聞いて疑問を感じたからだそうです。

私自身、身の回りでよく聞く話ですが、
ブランディングを良く分かっていない人が
これを語って営業が頻繁に行われています。

聞く側もブランディングが
ふわっとしか理解できないので
何だか良いことのように聞こえてしまい
提案に乗って契約してしまったそうです。

しかし、何も効果が無かったり、
逆効果だったケースが後を絶ちません。

何かいけなかったのか?
あなたは説明ができるでしょうか?

私は過去2週に渡り、
ブランディングの必要性を主張する立場で
以下の2つの記事を公開しました。

1つ目は、
短期の費用対効果ばかりに目がいって
長期の投資効果に目を向けていないこと
に対する警鐘を促しました。

2つ目は、
他社の施策をそのまま真似ても
結果は出ないから
というものです。

現場の失敗あるあるとして
他社が行った具体の施策をパクって失敗
しているケースが多いです。

なぜ上手くいったのか?
その裏側にある法則を一度抽象化してから
具体の施策に落とし込むことによって、
具体と抽象の行き来が大切である
と解説させていただきました。

私が採用ブランディングを進める理由として
ブランディングは抽象化された概念
であり
これを具体策へ落とし込むこと術を覚える
表面的な真似事ではなく、長期的な視点で
再現性が高いのではないか
と思うからです。

今回は
なぜ採用にブランディングは必要なのか?
の最終章として、
ブランディングによって得られるもの
そして、
やり方を間違えると失うもの
にフォーカスして解説したいと思います。

今ではブランディングが成功した企業も
過去は同じようなプロセスを経た結果であり
成功事例と失敗事例も併せて解説します。


1.ブランドとは何か?


まず、事例をご説明する前に
定義から確認していきましょう。

あなたは「ブランド」と聞いて
その語源や定義が説明できますか?

真っ先にイメージするものとして、
高級バックや高級時計でしょうか?
何か高級なものをイメージする方が
多いのではないかと思います。

語源は、牛を出荷する際に
どこで育てられたものか分かるように
「焼き印」を入れていました。

この「焼き印」こそが「ブランド」の語源です。

私の所で育てた牛であり、品質は保証しますよ。

「焼き印」にはそのような意味があります。

つまり、ブランドとは
出身と品質と保証するものであることから
顧客との約束」と解釈できます。

これを「ブランドプロミス」と呼びます。

現在はブランドに対して、
各企業で解釈の仕方が様々ありますが、
ブランドを説明する際は成り立ちを
しっかり押さえておきましょう。


2.ブランディングによる成功事例


次にブランディングに成功した典型例として
外せないのは「ディズニーランド」を運営する
「オリエンタルランド」
です。

理念である
ゲストにハピネスを提供すること

コンセプトである
夢と魔法の王国
を実現させるために、ルールを設けています。

従業員のことは「キャスト」と呼び
やることやならいこと
明確に決めている点が特徴です。

【Safety(安全)】
安全な場所、やすらぎを感じる空間を作りだすために、ゲストにとっても、キャストにとっても安全を最優先すること。
【Courtesy(礼儀正しさ)】
“すべてのゲストがVIP”との理念に基づき、言葉づかいや対応が丁寧なことはもちろん、相手の立場にたった、親しみやすく、心をこめたおもてなしをすること。
【Inclusion(インクルージョン)】
さまざまな考え方や多様な人たちを歓迎し、尊重すること。すべての鍵の中心にあり、他の4つの鍵のどれにも深く関わる。
【Show(ショー)】
あらゆるものがテーマショーという観点から考えられ、施設の点検や清掃などを行うほか、キャストも「毎日が初演」の気持ちを忘れず、ショーを演じること。
【Efficiency(効率)】
安全、礼儀正しさ、ショーを心がけ、さらにチームワークを発揮することで、効率を高めること。

オリエンタルランド「The Five Keys~5つの鍵~」より

キャストは安全を最優先に行動しています。

例えば、こぼれたジュースの清掃を行うカストーディアルキャストは、しゃがんだ姿勢で路上を拭くことはせず、立ったまま足を使って拭き取ります。

これは、しゃがんだ状態では、周りに気を取られているゲストが気づかずにぶつかり、転んでしまう可能性があるためです。

一見、足で拭く作業は丁寧さに欠けるように見えますが、Courtesy(礼儀正しさ)やShow(ショー)よりも、Safety(安全)を優先して行動する理由によるものです。

このように、キャストはSafety(安全)を確保することを常に優先しつつ、日々の業務に取り組んでいます。

オリエンタルランド「Safety(安全)」より

キャストの特徴として
・(安全のため)しゃがんで掃除をしない
・「わからない」とは絶対に言わない
・園内で迷子の放送をしない

このあたりは有名なので
ご存じな方も多いのではないでしょうか?

テーマパークということで
世界観を守ること=ブランド価値
という分かり易い点もあります。

長い年月をかけて築き上げた価値観であり
それがディズニーランドの行動規範として
形作っていることは想像に難くありません。

この組織運営に関していかに優れているか
分かり易くまとめた記事がありましたので
以下にリンクを掲載します。

また、採用の面においても、
このキャストの振る舞いや
オリエンタルランドの企業姿勢に憧れ
新卒採用でも人気企業の一つです。

条件面も初任給が25万円超えで
主な数値も以下の通り脅威の数値です。

  • 月平均残業時間:8.5時間

  • 3年後離職率:10.7%(全体では5.43%)

  • 年間休日数:123日

※参考データ(オリエンタルランドHPより)

https://www.olc.co.jp/ja/sustainability/social/data.html

SPI等の基準も非常に高く、
少人数しか採用しないことが、
ブランドの価値向上につながっている点も
補足しておきたいと思います。

まさに「選ばれたもの」だけが働ける
夢の国そのものなのです。


3.ブランディングに反した失敗事例


次に、失敗事例をご紹介します。
言わずと知れた「大塚家具」です。

ご存じない方もいると思いますが、
今はヤマダデンキに吸収合併されております。

知らなかったという方は
以下の動画をご覧ください。

次に、失敗の原因を解説します。

ブランドは「顧客との約束」と定義しましたが
かつての大塚家具の約束事は何だったでしょうか?

ここでは、少し歴史を振り返ってみましょう。
参考になる良い記事があったので引用します。

大塚家具といえば、会員制の高級家具
というイメージが強いと思いますが
実は、百貨店で販売している高級家具が
2~3割引で買える
というブランドでした。

価格帯が安くできた理由は以下の2点です。

①メーカーから直接仕入れたこと
②売れ残りの返品形式を取らず
 すべて買い取ったこと
⇒元家具職人で創業者である勝久氏の
 独自の目利きが支えていたといえる

また、百貨店と大きく違う点は
広大な敷地にショールームを築くことで
実物を手に取ってみることができる体験
にあったのではないか?

加えて、商品知識に詳しい営業が
懇切丁寧に説明してくれる
点も
当時、家具に詳しくない人にとっては
「特別感」が演出されて
嬉しいサービスだったと推察されます。

しかし、時代は流れ
ニトリやイケア等、安い家具の登場により
家具は機能性とデザイン重視であり、
安い家具で十分事足りるという
顧客側のニーズの変化が起きてしまいました。

当然、業績は悪化していったのです。

かくして、
会員制の高価格帯の路線を貫く勝久氏と
価格帯を落とした路線を推し進める
娘の久美子氏との対立を招いたのです。

ここまで読み進めると、
久美子新社長の戦略のどこが
ブランドに反するものだったか
お分かりいただけましたよね?

ベストな高級家具を提案してくれるお店だった
大塚家具が、かつて顧客と約束した
ブランドの「顧客との約束」を反故
にして、
勝手にポジショニングを変えてしまったのです。

しかも、ブランド戦略としては一番愚策として
やってはいけない選択をしてしまいました。

高級家具よりは安いが
低価格帯の家具よりは高い万人受け
という
中途半端なポジションを取ってしまったため
大塚家具というブランドが崩壊しました。

これが失敗の最大の要因です。

では選択肢は他にあったのか?
私は経営学の専門家ではないので
一般論でしかお話できませんが…

①高価格帯の大塚家具とは別のブランド
 を立ち上げ検証をするべきだったのでは?
②高級家具は日本発のブランドとして
 世界の富裕層へ販売するチャンスが
 あったのではないだろうか?

少なくとも、はっきり言えることは
今までブルーオーシャンで戦っていた所、
顧客ニーズの変化でレッドオーシャンに挑み
失敗してしまった典型例といえます。

結果、採用においても
新卒採用はヤマダデンキで行っています。
大塚家具ブランドは採用では力を失った
という結末を迎えました。

一方で、先ほど比較した
「ニトリ」が好調なのは言うまでもありません。

お、ねだん以上
というキャッチコピーで有名ですが、
その本質は単なる低価格戦略ではありません。

高品質で手頃な価格の商品を提供する

この要素があったからこそ
成功したと言えます。

なお、ニトリの採用ブランドは強く
25卒の人気企業ランキングで
ニトリは堂々の1位でした。

以下のホワイト企業の基準を満たす
待遇の良さがあるのも理由の一つです。

  • 月平均残業時間:16.2時間(25時間未満)

  • 3年後離職率:14.1%(30%未満)

  • 年間休日数:120日(120日以上)

※( )がホワイト企業の一般的な基準

しかし、何といっても業績好調なことと
ビジネスモデルを支えるブランド力の強さ
が大きな要因と言えます。

ニトリがいかにブランドとして強い会社か
決算の状況からも明らかですが、
こちらはプロの見解を以下に貼っておきますね。

ブランディングの成否によって
天と地ほど変わる採用の実態を
感じていただけたかと思います。


4.ブランディングのルールに反する挑戦者


次に、かつて成功事例として
取り上げられることが多かった企業ですが、
その方針転換に少し不安を感じる企業を
ご紹介したいと思います。

その企業とは「ワークマン」です。

ワークマンといえば「職人の店」という
イメージが強かったと思いますが、

ワークマンプラス:一般層向け
ワークマン女子:女性用アウトドアウェア

と新しい一般層向けの店を急速に展開し、
業績は好調で、快進撃を続けています。

同社もライバルは
ユニクロと公言している状況です。

ただ、私の個人的な意見ですが
一般的なブランディングの理論からすると
戦略ミスではないかと考えています。

これまで、ワークマンの客層は
職人が汚れた服でも気軽に入れる店
というイメージがあったと思います。

これが、一般層へ舵を切ってしまうと
職人からすると店に入り難くなりますよね?

元々の客層だった職人に対して
確立されたブランドでの約束を
完全に無視した形となってしまい、
職人の客離れが起きています。

マス層は一般層なのに何が問題なのか?

このように疑問を持たれる方がいるかも
しれませんが、これは大きな問題なのです。

主な理由は以下の3つです。

①職人と一般層を比べると
 明らかに客単価が下がってしまう点
②別ブランドにするのが王道である点
③レッドオーシャンへ挑んでしまった点

順番に解説します。

①は職人の仕事道具と一般層の服を比べると
客単価が低い点は分かりますよね?
客単価が下がると利益率が下がってしまうため
近年の利益率低下を招いていると伺えます。

②は「ワークマン」=「職人」のことであり、
「ワークマンなのにオシャレである」
「機能性にも優れていてアウトドアのウェア
として欲しい」という顧客の隠れたニーズが
これまでの快進撃を支えてきました。

女性客のブーム、アウトドアブームが
過ぎ去った後もユニクロと対抗して
安定した売り上げが見込めるのか?
これが一番心配な点です。

③は、一方で職人の店ならどうでしょうか?
仕事道具ですから、客単価が高く
既に確立したブランドもあり安定している
ことから、流行りに左右されません。
まさにブルーオーシャンだったはずです。

これが、群雄割拠する一般層向けの
アパレルブランドに転身してしまうのは
非常に危険な気がしてなりません。

ワークマンも「ワークンプロ」として
職人の店と一般層を分ける戦略を取るそうですが、
一度、職人の客足が離れてしまうと
またブランドを確立するのに時間がかかります。

だから、ブランドを分けた方が良い
主張したのはこのような理由があるからです。

つまり、

一時期のブームに乗っかり、これまでの戦略
を放棄して、急速な店舗展開すると
大抵がその後に失速する典型的なパターン

とならないか心配です。

参考までに、気になる記事を張っておきます。

世の中のニーズの変化や
顧客のニーズの変化に強い体制
=アンバサダーの制度など
独自のノウハウがあるため、
そう簡単に崩れないと思いたいのですが、
将来的には失速すると私は予測します。

ブランディングの鉄則として
同一ブランドにおいて、一度決めた
 顧客との約束を反故にしてはいけない


これだけは覚えておいてください。


5.ブランディングによって得られるもの


最後に、ここまで読み進めて
ブランディングの成功や失敗事例を見た中で
何か気づいた点はありましたか?


これまでご説明してきたブランディングは
セールスマーケティングの要素が強く
これが採用にも繋がっている
ということが
まず伝えたかった点です。

もう一つ大切なことがあり、
ここまでの話にプロモーションの内容が
一つでもあったでしょうか?

無かったですよね?

ブランディングの中でプロモーションは
構成要素の一つに過ぎません。

今回お話した内容は基本的に
経営方針や組織マネジメントといった
社内に目を向けた内容であったことが
お分かり頂けたでしょうか?

これを「インナーブランディング」と呼び、
ブランディングを形成するプロセスの中で
最も優先度が高くなります。

逆に、対外的なプロモーションは
アウターブランディング」と呼びます。

実態が伴わない誇張した内容を
先に宣伝広告したらどうなるか?
結果は誰でも分かると思います。

セールス、マーケティング、リクルーティング
それぞれに企業や商品のブランドが関わります。

この「顧客との約束」に対して、

顧客自身が〇〇といえば…コレ!と
頭の中に描くイメージこそがブランド
そのものなのです。

だから、ブランディングにおける
最初のステップは、企業のMVVから始まり、
経営、マネジメント、セールスにおける
顧客との約束事として、具体化した
共通言語」を用いて社内の意識を統一します。

この「共通言語」は
コンセプトを守るための行動規範であり、
洗練された言語は
キャッチコピーとしてプロモーションにも
使える強い武器となります。

以上のことから、

ブランドとは
社内の「共通言語」を「行動規範」として、
社員一人一人が守り続けていく、その先に
顧客の頭に認識されていくイメージである

このように私は考えているのです。


だから、何度もしつこいですが、
過去の主張と組み合わせて説明すると
以下の文脈となります。

ブランディングとは将来に向けた
先行投資としての施策であり
直ぐに結果はでないが、
将来大きな財産となります。

具体的な施策は、特定の条件下における
その企業ならではの戦略であり、
組織内で水平展開出来ても、他社の施策は
丸パクリしても意味がありません。

だから、
(一度抽象化された理論である)
ブランディングを用いて
正しいプロセスを経て具体化すること

それが、
社内の共通言語となり、
また、従業員の行動規範となり、
これを守り続けた先の結果として

自社オリジナルのブランドが
顧客の頭に定着して完成するのです。



今回の結論は以下の通りです。

【得られるもの】

顧客との約束を守り続ける限り、
〇〇といえば…コレという
最初にイメージしてもらえる
無形の資産が手に入る

【失う(かもしれない)もの】

顧客との約束を破り、
〇〇らしくない…と
顧客に判断されしまったら最後、
積み上げたものが一気に崩壊する


採用ブランディングが必要な3つ目の理由】

インナーブランディングにより
共通言語を手に入れることによって、
社内の意思統一、並びに活性化に繋がるから


最後まで読んでいただきありがとうございます。

採用ブランディングに関する
WHYの部分はこれで終わりとなります。

次週からは、
具体的なプロセスをシリーズ化して
お届けしたいと思います。

(時々嫌になって違う話題も入れますが…)

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