新卒一括採用は今後、通年採用になる?新卒一括採用の非合理性とその見直し方について
新卒採用の早期化が一層進んでいる
皆さんはそう感じていませんか?
25卒の採用は既に終わり、
26卒も大企業を中心に裏ではインターンと
一体型の選考がどんどん進んでいます。
本来の早期選考を始めようと思って
冬からインターン参加者へ募集を始めたら
既に他社に内定が出てしまっている…
26卒はそのような動きになっているのではないか?
ネガティブな情報が
どんどん寄せられてきています。
この傾向の原因はナビサイト側の動きとして
3年生の6月からインターンが開始だった所
25卒から4月からインターン募集を始めたため
6月以降、既に学生と接触を始めていることが
その背景にあると予測されます。
こうなってくると
『通年採用とほぼ変わらないのではないか?』
という意見も出てきました。
今回は、
新卒採用自体を見直す必要があるかもしれない…
少し深堀して解説したいと思います。
1.新卒一括採用の歴史
『新卒一括採用を見直す』…この議論をする前に
まずは新卒一括採用はいつから行われているか?
その歴史的背景を解説します。
日本独特といわれる「新卒一括採用」は、
大正初期の好況期に優秀な人材を確保するため
始まった制度が大卒にも応用され、
戦後の高度成長期に「日本型雇用慣行」の
一環として完成されたものといえます。
主な変化があった時代の変化を列挙します。
【大正時代】
1918年、政府は「大学令」を公布
これによって日本の大学が一気に増える。
しかし、第一次大戦の終結、
また、関東大震災による不況によって
今度は就職を希望する学生が企業に殺到する
「買い手市場」へと状況は一変したため
各社で入社選考が行われるようになった。
各大学に就職部ができ、
就職指導行うようになったのもこの頃から。
【第二次大戦中】
1938年 国が新卒者を企業に割り当てる制度
1940年 初任給の一律化(1940)
それまでは帝大と私学など、
出身学校によって初任給にも差があったのだが、
これが現在にまで続く「新卒者の初任給は横並び」
という慣行のルーツとなっている。
【高度成長期】
1950年代 就職協定の通達
1960年代 協定を無視した早期化が激化
この頃に終身雇用の制度が確立したと言われている。
入社後の教育を前提として行われる一括採用と、
育てた人材が早期退職しないように、
長く働くほど給与が上がり、定年退職時には
多額の退職金が受け取れる年功序列型賃金体系を
セットにしたシステムが確立する。
【バブル崩壊後】
1997年 就職協定の廃止
現在の「就職活動の早期化・長期化」が
本格的に始まったが、その背景には、
企業側の「厳選採用」という動きと、
「学生数の増加」という事実がある。
企業・学生ともに、
他より早くから活動しなければ勝ち抜けない
という思いがあったことが、協定を廃止させた。
【現在】
2019年4月、経団連会長の中西氏
「終身雇用を前提に企業経営、
事業活動を考えるのは限界」と言及。
同年5月 トヨタ自動車社長の豊田氏
同じく終身雇用の崩壊を示唆する発言。
これによって大正時代から続いた
新卒一括採用のシステムは残ったまま、
安定雇用に繋がっていた
終身雇用や年功序列だけが崩壊する
という状況に至った。
よくSNS等では若い世代の人が
「働かないおじさん」とか言って
実力もないのに偉そうにしている上司を
揶揄する意見が見られると思いますが、
裏を返せば、
年をとれば、それなりの努力であっても
しっかり恩恵は受けられるシステムを
失ってしまったとも言えるのが
今の時代のサラリーマンの待遇です。
若い間は良いですが、
すべての人が頑張り続けられるとは
限らない(病気やケガも含めて)ので
不安的な時代へ突入したと言えるでしょう。
歴史的な経緯は以上になります。
では、この新卒一括採用がこれから
どのように変化していくと思いますか?
2.新卒採用の今後の予測
冒頭にあった新卒一括採用について
早期化が加速し、二極化が懸念される事態
になっていることにお気づきでしょうか?
大手企業や有名なスタートアップ企業は
更に早期化を進め、おそらく
大学2年生へアプローチを広げる大企業と、
本来のインターンシップで大学入学時から
囲い込みをし続けるスタートアップ
という動きが加速すると予測されます。
背景の一つは労働力不足による
大資本を持つ大手企業が早期に大量採用を
行う動きが加速している点です。
もう一つは、三省合意による
インターンシップの定義が変わり
より明確にインターンシップとそれ以外
(オープンカンパニー等)の広告宣伝に
ルールが定められた点にあります。
詳しくは以下の通りです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000986401.pdf
曖昧な表現で
インターンシップと呼べない=集客力に欠ける
というのであれば、
本来のインターンシップで学生を確保しようと
する企業も一定数現れている傾向があります。
こうした背景から、
新卒一括採用ではなく、通年採用を行う企業が
増えてくるのではないか?
という意見が出てきました。
通年採用に移行すると一体何が変わるのか?
あまりイメージが付かない方も多いと思います。
そこで、以下に分かり易く比較します。
【学生側の視点】
新卒一括採用のメリット
①一斉に開始、そして終了するため、
就職活動を短期間で決着することができる
②早期化によって、より競争が激化するため
採用選考のハードルは下がる傾向がある
新卒一括採用のデメリット
①一斉に開始、そして終了するため、
学生側の選択肢は狭くなってしまう
(選考スケジュールの重複が発生する)
②早期化によって、選考ハードルは下がるが
機会を逃すと有名企業は残っておらず、
希望の企業へ就職できない可能性がある
通年採用のメリット
①年間を通じて就職活動を行うことができる
ことから、柔軟性が高まります。
(海外の留学した学生にもハンデなく行える)
②年間を通じて就職活動を行うことで、
様々な業界へ応募ができることから、
選択肢が多様化する
通年採用のデメリット
①企業側のコスト増大と機会の増加によって
採用選考のハードルが上る恐れがある
②通年で採用を行うことで企業側が一度に
採用する人数を減らすことが予測される
つまり学生側の視点で見ると…
新卒一括採用は
選考ハードルは下がる傾向にあるが、
機会を逃すと希望する企業が受けられない
可能性がある
通年採用は
選考ハードルが上る傾向にあるが、
何度もチャレンジできる可能性が広がる
では企業側の目線で見ると
どうなるか見ていきましょう。
【企業側の視点】
新卒一括採用のメリット
①一括採用により採用プロセスの効率化が図れ
コスト削減ができる
②一斉に内定、入社することから、教育面でも
新人教育プログラムが進めやすい
③一括採用により、同時期に採用された学生同士の
チーム形成が容易になる
新卒一括採用のデメリット
①一斉に各企業が採用を実施するため
年間を通じて流動的な採用は難しい
②学生の卒業時期に合わせて採用を行うため、
柔軟性に欠ける
通年採用のメリット
①通年採用により、企業は年間を通じて採用活動を
行うことができるため、柔軟な採用ができる
②通年採用により、異なる時期に応募する学生が
増えることから多様な人材を確保できる
(海外の卒業時期が異なることから
グローバルな人材の確保には適している)
③採用プロセスが通年で実施されているため
採用戦略が一貫して行える
通年採用のデメリット
①通年で採用を行うため、採用コストが増加する
②都度、時期の異なる学生が入社することで
新人教育のコストが増大、効率が悪くなる
つまり、企業側の視点で見ると…
新卒一括採用は
柔軟性に欠けるが、コストや効率面で良い
通年採用は
柔軟性はあるが、コストや効率面では良くない
ということになります。
通年採用へ移行すると中小企業は
ますます不利になるため、その戦略は取り難い
という点だけ押さえておきましょう。
3.中小企業の戦略として有効なものは?
ここまで整理していく中で
やはり、普通に新卒採用を続けると
大企業優位になる気がしてなりません。
また、先ほどのメリット、デメリットには
記載しませんでしたが、
新卒一括採用で部門が多い企業や
店舗が多い企業にとっては、
就職後のミスマッチが最大の問題点でした。
最近、「配属ガチャ」といったワードも
出てきましたが、新卒一括採用における
最大の弊害であると言わざるを得ないと
感じています。
この辺りは詳しく解説している動画を
見つけましたので、こちらをご参照ください。
いずれにしても、新卒一括採用に関しては
見直す必要があるのは間違いありません。
そこで、資本力のない中小企業は
新卒一括採用で大企業と早期化の動きに
付き合うとより過当競争に巻き込まれる
だけですので、避けて欲しいと考えています。
それでは、
中小企業はどのような戦略が有効でしょうか?
一つ提案をしたいと思います。
スタートアップのようなアルバイトに近い
インターンシップで早期から囲い込みを行い、
教育も兼ねて、大学生の頃から戦力化する
この方法は如何でしょうか?
しかし、いざ大学3年生になると
大手企業の選考に参加し、受かれば乗り換え、
落ちれば、保険としてかけていたインターン先に
勤める学生が増えることは否めません。
従って、
内定辞退を前提とした繋がりを続けておき、
就職先で何かあったら、数年以内は一次選考を
免除で採用選考に参加できる等の特典をつける
と柔軟な採用が実現できるのではないか?
そのように考えました。
また、
そこまで自社で抱えておくのは無理という
中小企業も多いと思いますので、
非正規社員のアルバイトの給与支払いの形は
同じですが、企業側は呼びたい時に呼び、
学生側は行きたい時に行くというシステムとして
スポットワークを活用する方法があります。
次回はこの方法について
詳しく解説をしたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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