採用活動4.0から、採用実務のアップデートを考えてみる。(後編)
こんにちは。道場(どうじょう)です。
今回は、前回お届けした「採用活動4.0から、採用実務のアップデートを考えてみる。」の後編です。
<キャンディデイトのジャーニー>
今回の記事では、上記のキャンディデイトのジャーニーから、各フェーズのよくあるNG事例と採用活動4.0への体験へと近づけられるポイントを考えていきます。特に採用活動の実務面の中心となる、フェーズ5〜7を分解してみます。
応募フェーズ(フェーズ5):オープニング
■出会い方をコーディネートする
エントリー後に、実際に会いたい(しかも、求職者の立場からすると交通費をかけてまで会社に訪問して…)というアクションは意外と大きなハードル。リモート選考の普及によって、さらに企業訪問のハードルは上がっています。それにも関わらず、求職者の志望度の引き上げにあまり力を入れていない企業が、意外と多いようです。
このフェーズでは、「出会うまでの出会い方」をコーディネートすることを意識して、採用競合よりも早く「この企業のことをもっと知りたい!」という求職者の「期待感」を高めること。一度だけではなく、何度でも、オンライン上での1on1でもOKなので、コミュニケーションを積み上げ、求職者の自社への優先順位を高めることが大切です。
その積み上げのプロセスの中で、双方の信頼感も少しずつ醸成され、「では、実際に会って話しましょう!」の合意が成立すると考えた方が良いです。焦ってすぐに「まずは、来てください!」ではなく、コミュニケーションを積み上げることを意識できると良いですね。
選考初期フェーズ(フェーズ6):ヒアリング、プレゼンテーション
■アセスメントよりも、アトラクトを
Web上でのやり取りから、実際に会うとなれば求職者も緊張しているもの。面接よりも、面談のイメージで、求職者の緊張をほぐすことを促しつつ、相互理解をすることが大切です。特に選考初期フェーズでは、お互いの認識のズレ(価値観や求めるスキル、キャリアの方向性など)のベース部分が合っているのか、採用担当者が魅力付け(アトラクト)と見極め(アセスメント)の両面から確認することが求められます。
学生や若手層の求職者の場合、求職者の自己理解や業界理解などが浅く、本人が気付いていないこともあるので、アドバイスも含めて引き出すようなコミュニケーションも大切です。これは、営業活動と同じで、顧客の潜在的な課題やニーズをともに考え、発見し、整理できる課題形成力の高い営業担当者は顧客ロイヤルティが高いように、採用活動でも同じようなことができると信頼度が高まりやすいもの。
この時点では、採用担当者でありつつも、キャリアアドバイザーのような立ち位置の方が良いでしょう。営業活動で例えるなら、ヒアリングや仮説を当てるイメージですね。
■お互いの理解を促す場に
また、いきなり、ステレオタイプの面接を実施しても、見極めだけを企業都合で行っていると捉えられてしまい、求職者の聞きたいことや相談事を受け止めることが難しい場となってしまいます。さらには、「せっかく来たのに、時間の無駄だったな」と選考の印象が、そのまま企業へのネガティブイメージにつながってしまいます(さらには、クチコミサイトなどに書かれてしまうことも)。
フェーズ5からの流れで、何でも気軽に話を持ちかけられる雰囲気を作ることができれば、求職者も本音で話をしてくれるはずです。逆に警戒心を持たれると、求職者の良さや人となりが引き出せず、入社後のギャップにつながることもあり、お互いに良いことはありませんよね。
■次回アクションは、求職者との「相談」で決める
次回アクションですが、企業側から「次回は部門長面接です」などと決められた流れを提示するのではなく、面接の内容を踏まえて、「配属先の雰囲気が気になるとのことだったので、次回は所属部門の社員に話を聞いてみますか?」「会社の方向性が気になるとのことだったので、次回は代表と面談してみますか?」など、あえて求職者に選んでもらったり、個人ごとにカスタマイズしたりすることで、「自分で選んだのだから」と自己納得を促したり、「人を大切にしている会社なんだな」といった好印象などを与えることができ、選考歩留まりが高まりやすい傾向があります。
これは、営業活動で例えると、顧客からのYESを引き出すことによって、顧客は自分の決定を自分で否定をしたくなくなる心理的効果と同じことです。求職者のネックを解消できるように、柔軟に選考のバリエーションを持っておくことで対応できる幅は増えてきます。
選考終盤フェーズ(フェーズ7):ネックの解消、クロージング
■求職者は論理的に判断しようとする
選考の終盤では、求職者も他社と比較し、より信憑性のある情報を知りたいという気持ちが強くなります。選考初期フェーズでは、感情面の共感・共鳴で志望度醸成はできるものですが、このフェーズになってくると「本当にここで良いのだろうか?」と、求職者は自分以外の採用ステークホルダー(親や家族、友人など)の意見も参考にするなど、少し冷静になります。
求職者は、論理的に、ここに就職をする理由を求め、自分で納得をさせるために、合理的な判断をしようとします。その時に必要なのは、情緒面で押し続けても逆にマイナス印象になることがあるということです。
■ネックの解消は真摯に、ていねいに
当初はビビッと来ていた求職者でも、ここで初めて、ネックやマイナス面にも目を向けて気になり出すものです。ある意味、それはネガティブな反応ではなく、正しく検討が進んでいることを示唆していますので、真摯で、ていねいな対応によってネックの解消をすることが大切です。「ここまで来て、なんでそんなこと気になるんだよ」と思って感情的にならないようにしたいものですね。
また、たまに聞く話として、入社後の待遇面などの情報を開示しなかったり、明確に答えるのを避けて感情・精神論で押したりすることがあるようですが、これはオススメしません。入社した後に「だまされた…」というギャップにつながれば、パフォーマンスの低下や早期離職につながってしまいます。
■とは言え、最後には、エモさもやっぱり大切
最後には、熱い想い、その熱量で決まることもあります。ただ、その時に気をつけたいのは、「自社にとって、あなたが必要なんです!」も悪くないのですが、採用活動4.0のベースである「会社の物語と求職者の人生の物語の一致」を意識して、求職者目線に立って、入社することでの人生の物語を想像できるような想いを一緒に伝えられると良いと思います。
入社することで、どのような価値を提供できるのか、これまでの面接などを通じてすり合わせたお互いの想いを整理し、リマインドするようなイメージですね。営業活動で例えるなら、提案プレゼンやネックの解消をやり切った後のクロージングです。
また、採用に至らなかった求職者への対応もお忘れなく。まず、求職者に出会えたこと、そして、選考を通じてこれまで足を運んだり、時間を費やしてくれたり、興味を持って関わってくれたことへの感謝を。たとえ、採用に至らなかったり、入社辞退されたりしても、その人が今後の人生のどこかで自社と関わったり、転職を考える際の第一想起となったり、他の人へとクチコミで勧めたりしてくれるファンとなってくれる可能性もあります。
さいごに
内定フェーズ(フェーズ8)以降でも、入社までの期待感を高め、不安感を払拭する施策などでエンゲージメント向上や内定辞退の防止などを、いくつかポイントはありますが、また別の機会でお話できればと思います。
採用活動は、「コスト」×「手間」の掛け算。
お金をかけなくても、企画をし、人の手間をかければ、できることはまだまだあります。それは、小さく地道なことかもしれませんが、小さなノウハウの積み上げが自社の独自性やブランドにつながり、ひいては、ファンになる人たちが増えると思っています。
リファラルもアルムナイも、ファンであることが前提の施策なわけで、採用活動を最適なものにすれば、エンゲージメントが生まれ、必然的にファンになるはずです。ファンは作るものではなく、応援したい、オススメしたいという気持ちが湧き起こり、自然とその状態になるものです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!