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採用活動4.0-「キャンディデイト・リレーションズ(CR)」で“ファン採用”を-

こんにちは。そして、はじめまして。道場(どうじょう)と申します。

今回は、「採用活動4.0」と題しまして、マーケティングの観点から人材の採用活動のアップデートの形を考えてみたいと思います。この数ヶ月、新卒採用やキャリア採用の採用ブランディングの提案を行っていた中で、コンセプトや戦略面などの上流、企業の強みの発掘などをする機会が多かったのですが、これらは中長期的な取り組みとなります。

中長期のブランド作りの視点も持ちつつも、そのベクトル線上で短期では何をするのか。「いま、何ができるのか?何を変えられるのか?」という視点も大切だと思い、いわゆる局地戦で、比較的すぐにでも変えやすい「採用活動」の施策にフォーカスを当ててみます。

どちらかと言うと、施策の具体的な方法というよりも、スタンス・考え方寄りのお話をしたいと思いますので、予めご了承ください。逆にスタンスがしっかりしている方が、それが人事や社員の方々から、にじみ出るように求職者に伝わって、ブランドにつながることもありますので。


マーケティングの変遷を知る

まず、「採用活動4.0」を考える前に、近代マーケティングの父とも呼ばれるフィリップ・コトラー教授のマーケティング4.0の考え方を見ていきたいと思います。(この「採用活動4.0」も、このマーケティング4.0から拝借をしています)

コトラーのマーケティング4.0とその変遷は、簡単に整理すると以下です。

■マーケティング1.0
製品が中心:良い製品を作って、それをマス広告などに投下して認知をしてもらうことで買ってもらう。大量消費時代のマーケティングの考え方です。

■マーケティング2.0
消費者が中心:機能的な差別化などによって、消費者のニーズを満たす製品を作る。マーケティング1.0よりも、少し細分化された考え方です。

■マーケティング3.0
人間が中心:人間の精神的な部分にフォーカスし、消費者と一緒により良い社会を創っていく。マーケティング2.0よりも、さらにマインド面の訴求を強めた考え方です。

■マーケティング4.0
自己の実現:心理学者のアブラハム・マズローの自己実現理論である「欲求五段階説」(※)を受けて、「自己実現」に目を向け、マーケティング3.0をよりもさらに、個人ごとの自己実現部分にフォーカスした考え方です。

※「欲求五段階説」:
人は、「①生理的欲求」「②安全欲求」「③社会的欲求」「④承認欲求」「⑤自己実現欲求」までの段階を、①→⑤の順番で階段を上げるように満たそうとする、という考え方です。近年では、⑥に「自己超越」もあるとの考え方もあります。

このフレームを採用活動に置き換えると

先ほどまで見てきたマーケティングの変遷を採用活動の変遷に置き換えて考えてみると、このような感じではないでしょうか。

■採用活動1.0:企業(使用者)>>>個人(労働者)
企業が中心:企業が人材を採用したい時に、求人広告をマスに投下して認知してもらい、複数の応募者の中から見極めて、ふるいにかけて選抜していく。ザ・面接というスタイルで見極めが中心。企業の情報は閉鎖的でクローズ。

■採用活動2.0:企業(使用者)>>個人(労働者)
候補者が中心:採用競合他社との差別化をするために、キャンディデイト(候補者)への魅力付けも必要だよね、という流れに。求人広告などで先輩社員インタビューなど、あくまで募集の観点で、求職者に自社を引きつけるコンテンツを作ってきた。少し企業の情報も開示されるようになってきた。

■採用活動3.0:企業(使用者)>個人(労働者)
人間が中心:給与やポスト、福利厚生などの画一的で実利的なものから、企業の価値観をベースにした発信(なぜ、この事業をやっているのか?など)、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)への共感を得るための発信を積極的に行い、自社の想いの強さに共感する人を集める。

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■採用活動4.0:企業(使用者)=個人(労働者)
自己の実現:求職者の人生と企業の進む道、そのベクトルを重ね合わせ、一人ひとりが自らで物語(ストーリー)を描くナラティブな採用活動。入社後の候補者の人生やキャリアの実現にフォーカス。募集団形成のための魅力付けではなく、ミスマッチ防止や入社後の活躍や定着にも枠組みを広げて積極的な情報の発信に取り組むため、組織の透明性も高い。

採用活動4.0への進化が必要なワケ

採用活動3.0と4.0は似ていると思うのですが、求職者個人をイコールパートナーとして見ており、その人の人生を尊重している。見極めて、合否をつけるというスタンスではなく、候補者起点・企業起点の両面から、自社にマッチするか・しないかを“お互いに”判断をするというスタンスです。

採用活動3.0は、企業起点だけなので、ともすれば、価値観の押し売りになることもあると思っています。その点、採用活動4.0は、どちらかというと、インタラクティブ(双方向)のコミュニケーションであって、想いの一歩通行ではなく、想いを重ね合わせる採用活動といったイメージになるのではないかと思います。

これまで、いつの時代も、ミスマッチによる早期離職も問題になっていることも多いのですが、その中で離職の上位に挙げられるものは「事実との齟齬」です。つまり、採用活動の面接などで聞いていた話と入社した後に感じたことに情報ギャップがあったということ。給与・待遇面などのギャップは論外ですが、職務の期待される役割であったり、社員の価値観や組織文化にギャップを感じたりと、そのような理由で離職につながるケースも多く見受けられます。採用することがゴールだと、このようなことが起きやすいものです。

今は、採用活動でのブランドが企業ブランドに直結もする時代です。退職者だけではなく、採用選考で出会った学生や求職者も含めて、誰もが発信者となり得ます。これをリスクと捉えるのではなく、逆に「自社のファン・推奨者にしよう」という発想で、チャンスにする企業が、採用活動4.0への昇華ができるのではないでしょうか。リファラル採用なども流行ってはいますが、あくまでこのスタンスがあってこそ、エンゲージメントが高まり、自社を大切な友人に勧めたい気持ちやクチコミも発生するのであって、手段先行ではうまく機能はしないことが多いです。

採用活動4.0の時代に大切なナラティブなコミュニケーション

改めて、「採用活動4.0」をについて、見てみます。

■採用活動4.0:企業(使用者)=個人(労働者)
自己の実現:求職者の人生と企業の進む道、そのベクトルを重ね合わせ、一人ひとりが自らで物語(ストーリー)を描くナラティブな採用活動。

ここで大切なのは、求職者にとっての「意味」です。そして、その意味を引き出す上で大切になるのが、「自社の価値観や進む道を積極的に発信し、開示すること」「アウターだけではなく、インナーの社員の想いともギャップなくつながっていること」「意味付けを促すための様々な人のストーリーが展開されていること」です。

ナラティブとは、物語(ストーリー)を語ることですが、その物語の主人公はあくまで相手、つまり採用活動で言うと求職者です。採用活動3.0以前がどちらかと言うと企業側から作られた物語の発信であったとすれば、採用活動4.0は、求職者自身が、自分で自分の物語を紡ぐこと。そして、その物語に自社が登場してくれば、選ばれるし、登場してこなければ選ばれない。そんなイメージになるので、特長や価値観を押し売るのではなく、物語を共有することが大切になります。

これまで企業様の採用のコンサルティング等で経営者・人事・社員の方など、いろんな方を見てきました。その中でも、魅力付けが上手い人は、意図せずなのか、自然と求職者の人生に向き合っていることが多いです。そして、自社の目指す物語とその人の人生の物語を重ね合わせ、その求職者の人生の中でどんな意味があるのかを一緒に考え、イメージを具現化するお手伝いをしている。コーチングに近いアプローチですよね。でも、これはスキルにも依存するので、できる人はできるけど、できない人はできない、と属人化しやすいものです。

ダイレクト・リクルーティングの効果の出るスカウトメールのコンテンツ手法でも良く語られることですが、その人ごとに適切な対応を、どれだけ「あなたに」という1on1に近い形に近づけられるか。そして、一方で、それを仕組み化して、属人化を脱却できるか、が大切です。感覚ではなく、戦略的に意図的に、候補者の採用時におけるジャーニー(状態の流れ)に対して、その都度、適切な情報を提供する。最初からたくさんの情報を提供しても、相手が求めていなければ雑音と同じでノイズになります。それよりも、細かく相手のYESを取り、キャッチボールをする感覚がラポール(信頼)を形成することにもつながります。

実は、僕はBtoBの営業出身で、長きに渡って人材系でセールスをしてきたのですが、営業活動でも営業成績の良い人やクライアントからの評判が良い人は、相手ファーストで、相手の理想の形や企業の歩みに寄り添って自社製品を提案しているんですよね。また、意図的にコミュニケーションをマメに取り、提案に向けたYESも丁寧に獲得していきます。これは、BtoCの採用活動でも同じで、相手の人生に歩み寄るということに転用するだけだと思います。新型コロナウイルスの影響で、遠隔リモートが進んだことで、より重要になったかもしれません。

意味やあり方を求める時代の採用活動へ

「ドリルで穴をあけたい」という目的はわかっていても、「どのドリルが最適なんだろう?」と、顧客は目的自体はわかっていても、手段はわかっていないということが多いものです。

これと同じように、求職者とくに、学生や若手層の方だと、「こうなりたい」という姿が見えていても、どんなキャリアのプロセスを歩むことが適切なのか見えていないことも多いものです。また、もしかしたら、こうなりたい姿さえも、ぼやけていたり、見えていないことも、多いのではないでしょうか。

また、キャリア層の方も、家庭との調和を意識した柔軟な働き方や企業との関係性をよりフラットに見てくる方が増えています。つまり、ワークはライフの中の1つの方法として捉えているイメージです。企業に入社して勤めることが当たり前の選択ではなく、それも1つの選択肢と捉えていて、優秀な人ほど、起業もできるし、企業に就職することもできるし、複業で様々な働き方の選択肢を持てるわけで、就社することが絶対ではないのです。より、企業へジョインすることの「意味」が求められるし、彼らは自己実現の欲求に応えていくことが必要だと思います。いま、企業もバリュードリブンになっているのも、その「あり方」に着目しているからではないでしょうか。

新しさよりも、もしかしたら「原点回帰」であり、情報の透明性があって、お互いに「ありのまま」の状態で向き合おう、ということかもしれませんね。

採用活動を通じて、個人と企業が出会うことにも意味がある。せっかくご縁があって出会うのなら、その出会いをお互いにとって意味のある時間にできるよう、求職者・企業の双方がお互いに意識できる採用活動が進むことを願っていますし、私もそのような想いを持った企業さんと一緒にパートナーとして歩んでいきたいですし、「採用活動4.0」というキャッチーな言葉を単なる言葉遊びで終わらせないために、しっかりキレイゴトを貫いて、ご支援していきたいと思っています。

最後まで長文をご覧いただき、ありがとうございました!

採用戦略立案、採用マーケティング設計支援、採用ブランディング、採用広報など、インナーの理解を通じた戦略上流を中心とした支援をHRパートナーとして活動を行なっています。経営と近く、事業理解を必要とするサイズの企業の伴走型サポートがメインです。

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