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【HR Cross Talk】人事の当事者意識が、組織と事業を成長させる  〜株式会社アルダグラム 重田さん・フリーランス人事 湯浅さん〜

新企画・第一線で活躍する人事同士が語り合う「HR Cross Talk」をスタートします!

第1弾のゲストは、株式会社アルダグラムの人事マネージャーとして採用、育成、組織開発に携わる重田さんと、スタートアップ・ベンチャー企業を中心に3社の採用支援を行うフリーランス人事の湯浅さんです。

さまざまな規模やフェーズを経験してきたおふたりに、組織づくりにおける問題の乗り越え方や、人事として成長するための考え方などを語っていただきました。


インタビュイーのご紹介

重田 智幸さん
2013年、新卒で株式会社MS-Japanに入社。管理部門職種に特化した人材紹介事業の営業職に従事し、コーポレート事業部のユニット長としてチームマネジメントを経験。「売上だけでなく、人材面から会社に貢献したい」と考え、2020年より人事にキャリアチェンジ。2社スタートアップを経験し、2022年に株式会社アルダグラムに入社。採用、育成、組織開発をメインに、人事マネージャーとして活躍している。

湯浅 真さん
2019年に株式会社Branding Engineer(現:株式会社 TWOSTONE&Sons)にフリーランスエンジニア支援事業のCAとして入社。その後、自社エンジニア採用(SES)チームの再編を任命され、採用担当のキャリアがスタート。教育系スタートアップ企業へ転職後は、経営企画室責任者に就任。全社の事業計画から事業統括、マーケティング、新規事業立案、中途採用、就活イベントPMなどに従事。独立後はエンジニア領域を中心に採用支援を行う傍ら、複数社のスタートアップ企業にCOO/CMO/BizDevとして参画中。

組織の問題は「あるべき姿」とのギャップで生じる

ーー組織づくりについて悩んでいる20代から30代の人事担当者が多いのですが、問題点を見つけた際にどのような行動をとればいいのでしょうか?

重田さん:若手の人事の方に相談されたときは、まず最初に「どういう組織をつくりたいんですか?」と聞くようにしています。組織づくりの問題点は、組織があるべき姿とのギャップから生まれるものなので。

例えば離職率が高い組織があったとしても「ついて来られる人だけ残ればいい」という方針があるなら、それは問題点じゃないんです。

やみくもに問題を解決しようとするのではなく「そもそも会社として、どういう組織にしたいのか」を決めるために、経営層をはじめとする上のレイヤーの人たちと対話の機会を持つことが、組織づくりの第一歩だと思いますね。

湯浅さん:そうですよね。組織づくりは採用計画に紐づいていて、採用計画は事業計画に紐づいているので、上のレイヤーが持っている事業視点、経営視点を養うのはすごく大事だと思います。

CHROのようなポジションが、特にスタートアップで重宝されるのも、経営視点を持って採用計画をつくり、それが組織にどう広がっていくかを見越して組み込む能力を持っているからです。

ーー若手の人事がいきなり経営層とコミュニケーションをとろうとしても、門前払いされてしまう可能性はないでしょうか?

湯浅さん:その会社が、採用や組織づくりをどう考えているかによりますね。採用を重要視している経営者は、人事とのコミュニケーションを大事にされている方が多いので。

どうしても社内でのコミュニケーションが難しいのであれば、まずは他社で人事をしている先輩に話を聞くとか、社外に目を向けるのもいいと思いますよ。

重田さん:若手の方はいきなり経営陣のところに行っても、そもそも何を話せばいいのかがわからない場合も多いと思いますし、社外の人事と話して、まずは自分の考えや「何を問題と感じているのか」を整理するのは大事ですよね。

僕もよく、他社のCHROに「普段何を考えていて、どのような目線で仕事をしているのか」などの話を聞きに行きます。

自分の中でベンチマークした、自分の数年先の理想像みたいな方に話を聞きに行くのがいいと思いますが、そういう方が見つからない場合は、僕はエージェントに紹介していただきます。

「今こういう課題があるので、お付き合いのあるCHROの方でお話を聞かせてくれる方はいませんか?」とお願いすると、該当する方につなげていただけます。もちろん、終わった後にきちんと報告したり、こちらから提供できるものないかと考えたり、礼儀をわきまえた行動は大切ですが。

本はどうしても総論が多いので、実際に近い経験をしている方に話を聞くことに勝るものはないと思います。

湯浅さん:スタートアップの一人目人事だったりすると、そもそも社内に知見がある人がいないと思うので、ひとりで悩んでてもしょうがないというか、解決できないんですよね。

他社で同じようなフェーズを経験したことある方に意見を求めたり、当時の施策を聞いたりするほうが、よっぽど早く答えにたどり着けると思います。

ケースバイケースなのでダイレクトに最適解に出会えるとは限りませんが「これなら、うちの会社でもできそう」といった気づきは得られると思うので。

重田さん:自分にない知見を吸収していかないと、行き詰まってしまいますよね。

社外フィードバックの質を高める準備と、横のつながりの重要性

ーー話を聞きに行く際に「これくらいは勉強してからきてほしい」といったラインはありますか?

湯浅さん:特にないのですが、相手に時間をもらっているという意識はほしいですね。オープンすぎる質問をされてしまうと意図を汲み取るために時間がかかるので、「何を聞きたいか」を決めてから来てもらえると助かります。

その方にとって、意味のある情報を提供することも難しくなってしまうので。

重田さん:前提条件がわからないと、回答しにくいケースがすごく多いですよね。

「自分にできる範囲で考え尽くして、勉強もして、それでもわからないから新たな知見がほしい」という状況であればディスカッションできるのですが…。「何もわからないから1から100まで教えてください」の姿勢だと、限られた時間の中で何をお伝えすればいいのか困ってしまうことが多いです。

湯浅さん:仮に100まで教えたとしても、教えられる側も頭に入らないですよね。「こうしたい」というイメージがない状態で情報を得ると、情報をプールする場所がないので、せっかく時間をもらって聞いても無駄になってしまう気がします。

重田さん:自分なりにいろいろ考えたうえで、それに対するフィードバックを求めたほうが生産性が高いですよね。そこを提示できる状態にしておくのは、善意で対応してくれる相手への最低限の礼儀かなと思います。

SNSを利用している方なら、経験やバックグラウンドの情報がある程度わかると思うので「この知見がありそう」と当たりをつけて、何を聞きに行くか情報整理をしてから声をかけられるといいですね。

ーー本気度が見えれば、あたたかく迎え入れてくれる方が多いと思っていて大丈夫でしょうか?

重田さん:ちょっとチューニングすると、本気度が見えなくてもあたたかく迎えてくれると思いますよ。人事は優しい方が多いので「それぐらい自分で考えろよ」なんてことを言う人は、多分いません。

ただ、せっかく勇気を出して話を聞きに行ったのに、教科書の1ページ目で終わってしまったらもったいないですよね。「そうならないための準備はしておいたほうがいいよね」という話です。

湯浅さん:でも多分、そこが難しいんでしょうね。「相手の時間をもらうんだから、ちゃんとしたものを用意しなきゃ」と考えて、ハードルを上げてしまう方は多そうです。

重田さん:社外の人に、しかもキャリアが豊富な先輩人事にいきなり突撃するのは、やっぱり心理的ハードルが高いですかね。そういう方の場合は、気軽に相談できる相手として、横のつながりを増やしておくのもアリだと思います。

僕は人事の交流会で知り合った方たちと相談し合ったり、他社で人事をしている大学の同期と定期的に情報を共有したりしています。困ったときに、すぐに頼れるネットワークを持っておくといいですよ。

湯浅さん:人事同士の横のつながりは、新卒同期の感覚に近いかもしれないですね。はじめは新人同士でも、数年経つとそれぞれの会社で役職を持ったり、組織づくりに関わったり、さまざまなフェーズを経験して成長していくので、自然と共有できる情報の質も上がります。

僕はあまり気にせずコンタクトをとるタイプなのですが、SNSでいきなり突撃するのはハードルが高い人の方が多そうなので、横のつながりをつくるところから始めるといいかもしれませんね。

重田さん:実際に突撃されても、少なくとも負の感情を抱くことはないので、そんなにハードルは感じなくていいと思うんですけどね。

湯浅さん:たしかに。人事の方はホスピタリティが高い方が多くて優しい世界なので、みなさんちゃんと聞いてくれると思います。

重田さん:SNSで突然DMいただくのも、全然OKです。こんなことを言っておいてレスが遅れてしまったら申し訳ないんですけど(笑)。

人事担当者の当事者意識が、事業を成長させる

ーー人事として組織に向き合う醍醐味は、どこにあるのでしょうか?

重田さん:事業を成長させるための、重要な1パートを担っているところです。

毎日スカウトを送って、エージェントとコミュニケーションを取って、カジュアル面談をして、目の前の業務をこなすだけになってしまうと、仕事が作業化して、苦しくなってくると思います。

どれだけ素晴らしい事業戦略、財務戦略があったとしても、それを実行できる組織がなかったら事業は成長しません。組織づくりを担っているのは僕ら人事なので、事業視点、経営視点を持って取り組めると、人事の仕事により醍醐味を感じられると思います。

湯浅さん:重田さんのおっしゃる通りですね。ちょっと違う観点もプラスすると、KGIとKPIの捉え方もすごく大事だと思っています。

人事の仕事は、経営や売り上げに紐づけて考えにくいかもしれませんが、組織づくりも含めて事業の基盤を担いつつ、組織によって売り上げのバリエーションをつくっていくのも人事のポジションになってくると思うんです。

事業視点、経営視点を持って考えられるかどうかで、目の前のタスクの重要性が理解できたり、解像度が上がったりします。これができると強い人事になれますし、日々の仕事でも達成感を得られると思いますね。

ーー事業視点、経営視点まで視座を上げるためには、どんなことをすればいいのでしょうか?

湯浅さん:副業をしたり、自分で事業をやってみると、最短で経営視点を養えると思います。

重田さん:たしかに。経営というものを遠くに感じている方は多いので、自分でやってみるとわかりやすく理解が進みますよね。

もっと手軽にできる範囲で言うと、自分が責任者になったつもりで仕事に向き合ってみるのがおすすめです。

僕自身が1社目で「明日、あなたの上司がいなくなったときに、そこに座れる準備はしておきなさい」と、ずっと言われていました。

当時は今ほど意味がわかっていなかったのですが、「なんで上司はこう判断したんだろう」「なんでこの条件で採用したんだろう」とイメージして考え、上司とすり合わせていくことで、仕事に対する当事者意識が生まれたり、視座が上がったりするんです。

明日、いきなり何かの選択を迫られたときに上司と同じ判断ができるかを考える練習は、着手しやすい方法だと思います。

湯浅さん:間違いないですね。近過ぎず、上過ぎず、2個上くらいのレイヤーをイメージして練習するといいと思います。

100点とってB評価。人事がモチベーションを維持するには

ーー組織づくりに対するモチベーションは、どのように維持していますか?

重田さん:僕は、数年先の自分が「お前が今やっていること、重要だったぞ」と言ってくれるかをモチベーションにして働いています。

採用業務は母集団形成や返信率など、定量的に測れるものが多いのでわかりやすいですが、組織系の仕事は成果を定量的に測りづらく、かつ成果が感じられるまでにタイムラグがあるので、モチベーションを感じづらいんですよね。

湯浅さん:たしかに、そうですよね。僕も数年先のビジョンやイメージを持ちつつ、目の前の仕事を一生懸命やり続けた先で振り返ると「あのとき、頑張った甲斐があったな」と思える瞬間がいくつもあります。

僕は、自分が描いた組織図や組織戦略だったり、目標に近づいていく過程でワクワクできるタイプなので、モチベーションは維持しやすいほうだと思いますが、やったことに対してわかりやすい成果が見えないと辛い方もいますよね。

重田さん:湯浅さんのように未来に目を向けて、過程を楽しんでいけると一喜一憂せずに済みそうですね。

未来ではなくて今に目を向けるなら、「誰のために仕事をするか」で考えてみてもいいと思います。この仕事は誰のためにやるのか、どうすると会社のためになるのか。

湯浅さん:未来を向いたほうが目の前の仕事を頑張れる方もいれば、未来を向くと目的を見失ってしまう方もいるので「今、誰のために」という視点もいいですね。

ただ、社員のため、会社のために新しい施策を打ち出しても、人事のやることって現場に面倒くさがられる場合も結構あるんですよね…(笑)。

重田さん:たしかに(笑)。

そもそも人事の仕事は褒められることがほとんどないので、評価をモチベーションにするタイプの方は辛いかもしれないです。

採用オペレーションをミスなく回しても、人事制度を正しく運用しても「できて当たり前」というか、100点をとってようやくB評価がつくような感じなので。でも、一つひとつの施策に目的とゴールは絶対にあるはずなんですよ。

例えばバリューを体現してる人を表彰する制度があったとして、表彰することで社員の士気を上げる目的があって、それによって組織コミットメントを高めることがゴールだったりしますよね。

それぞれの施策の目的とゴールをイメージして、そこに当事者意識を持てるか、ラストマンシップを持って動けるかが、モチベーションにも影響してくると思います。

湯浅さん:未来でも今でも、自分自身がどこに目を向ければ仕事を楽しめるようになるのか、自分の楽しませ方を理解できると、状況や成果に振り回されずにモチベーションを維持できるのではないでしょうか。


ここまで記事をお読みいただき、ありがとうございました。インタビューの後編は人事のための無料コミュニティ「ひつじんじ」にて限定公開しております。

<後編目次>
・キャリアの中で、ターニングポイントになった出来事はありますか?
・これまでのキャリアを振り返って、苦労したことや印象的な失敗エピソードはありますか?
・人事として成長するために、何から始めるといいでしょうか?

コミュニティへのご参加申請は随時受け付けておりますので、以下の記事をご確認の上お願いいたします。

(ライター:成澤綾子)