連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング14-01「ランニングを見直す」
巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?
この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります。
ココロとカラダを繋げる
ボディコンシャストレーニング
第14回-01 「ランニングを見直す」
文●大久保圭祐
Image: iStock
体の内側に作ったスペースを潰さないようにトレーニングを行うことが、この連載の一番のポイント。
それを踏まえて、第14回目ではランニングにスペースを作り、ボディコンシャスランニングとして、ステップを踏んで紹介していきます。
ランニング初心者の方がフォームを確認して頂くことももちろんですが、ランニングやウォーキングが好きでたくさん走ったり歩いたりする人にもぜひ読んで頂いて、何か“気づき”が生まれると思います。
◯体にスペースを感じて楽に走ろう!
ランニングは全身を動かすことも体力を付けることも、効率よく脂肪を減らすこともできます。
参考までに5㎞走る(30〜40分)とカロリーにすると約300kcalですので、体重をコントロールする手軽な手段になりますね。
ただ、長い時間体を動かし続けるため、体に負担が掛かって調子を崩してしまう可能性もあるので、フォームを確認したり、自分の体を観察できるようなボディコンシャス的なランニング方法を紹介したいと思います。
ポイントはこれまでと同様に「ムダに緊張させることなく走ること」で、
「体を前へ倒す→倒れない様に一方の脚を出して着地」
というスタイルが基本になります。一般的にランニングの基本と言われている、
背筋を伸ばす
胸またはおへそから進む
腕を後ろに振る
などが大事なのはもちろんですが、ボディコンシャストレーニング的には体に「スペース」を作り、そこに意識を注ぎ込むことが大事になります。
◯足裏の偏った使い方が怪我のもと?
ランニングとウォーキングの大きな違いは、地面から体が浮いた瞬間が有るか無いかだと言われています。
極端に言えば、ランニングは片脚立ちを交互に繰り返すため、ウォーキングよりも遥かに衝撃が大きくなります。
そのため何を意識して一歩を踏み出し着地するかによって、使う筋肉や負担の掛かる体の部位が大事になります。
実際に立った状態で、両足の裏と地面との接点に意識を向けてみてください。
足裏全体を意識したら、今度は足裏内側への意識を濃くしてみましょう。足裏の外側と地面との接点が薄くなり、足部全体が内側へと傾くでしょう。
これをそのまま続けると、足だけでなく膝が内側にシフトし、股関節や骨盤も傾き、背骨も影響され動き自体が変わります。
この状態で走ると関節周りの腱や靭帯、軟骨などに過度な衝撃が加わり、いわゆるランナー膝(腸脛靭帯炎)や腰痛などのトラブルに繋がる可能性があります。
実は走っている際に無意識のうちに体を支えようと、足の内側を強く使ううちに膝を痛めている方が多いのです。
そこでまずここではランニングの時に一番大切と言える、走っている時の地面との関係性を持つ足部を見直していきましょう。
◯足を柔らかく使おう!
もともと足部は26〜28個の骨が集まり、その精妙さはレオナルド・ダ・ヴィンチをして「足は人間工学上、最大の傑作であり、そしてまた最高の芸術作品である」と言ったとも伝えられています。
こうして構成された足は、ぺったりと地面に密着するのではなく、カメラの三脚の様に母趾球、小趾球、カカトの三点で支え、ドームの様な形状をしています。
足裏の三点は「かかと・拇指丘・小指丘」これを結ぶアーチが立体的なドームを作っています。 Image: iStock
この3点をそれぞれ結ぶ様なアーチ構造になっていて、地面に足を着いた時のショックを吸収し、足底の組織を保護しつつ、力を効率よく動作に伝えているわけです。
ですから、できるだけこのアーチ構造をキープしながら、柔らかく使うことが理想と言えます。
ところが実際には足部を固く緊張させて、地面を殴るように強く着地、蹴り出している方も少なくありません。
「地面を強く蹴る」
というイメージが強すぎることや、競技によっては確かにそうしたことも必要になるのですが、ある程度の距離を走るランニングについて言えば、足の負担を考えれば「蹴らない走り方」が理想と言えます。
そこでここでは、第12回で紹介した手への意識の仕方を足に応用することで無駄な緊張を解いてみましょう。
手より少し難しいかも知れませんが、とても大切な意識ですので是非じっくり取り組んでみてください。
【ステップ1 足指の間を意識して、ショックアブソーバーを作る】
1.足の指の間を意識して、開く意識を持ちます。イメージとしては指の間に柔らかい綿の球を挟む感じです。「足指を開こう!」と強く意識すると、かえって緊張して、足が硬くなってしまうので注意してください。
2.実際に走っている時にそれを比べてみるとわかるでしょう。足部を緊張させたまま走ると、地面を踏んだ衝撃が足や膝に掛かり、頭まで振動が伝わるのを感じる人もいるでしょう。
3.次に足指の間を開く意識をした場合はどうでしょう? 足部全体が柔らかくなり、地面との接地する面積が増えて、負担が分散されるのを感じられます。また、地面の状況に自然に応じて、柔らかく着地することができます。
4.ずっと足指を広げようとせず、着地の時に、軽く指と指の間を感じる位を意識してみてください。足の指の間を開こうと意識することが難しい方は、親指と小指を外側へ動かす動きを確認してサポートしてあげます。
5.親指を外側に開く筋肉がある位置を触れておきます。親指の根元よりもカカト寄り、足の甲の側面の位置です。
6.指を開こうとすると、触れている場所に緊張が生まれるのを感じます。
7.指が動かない場合は、もう一方の手で、指の動きをリードしてあげてください。
8.小指も同様に行います。
9.もう一度、手順の1番に戻り、足の指の間を開く意識をしてみてください。
足部はある程度の強度が備わっていますが、故障なく走るためにはこうして柔らかく使える足を作り上げることが大切です。
特に柔らかい地面ではなく、固い道を長時間走ると、足の一箇所に負担が集中するため故障しやすいのです。
足に意識が向き柔らかく足が使えると、走る目的やその時の状況、自分のコンディションなどに合わせて、どこに意識向けて着地するかを臨機応変に変えることができるので、結果として体の一部だけに負担がかかることが減り、怪我や故障が少なくなります。
【ステップ2 足首の水平性を意識して、脚部の緊張を取り除く】
今度は第10-02回で紹介した隔膜構造の水平性の意識を使い、脚の無駄な緊張を抜きます。
ここでポイントになるのは、立ち姿やスクワットの時の様にずっと地面と接点を持っている時だけでなく、ランニングの動作中も意識できて、緊張させないようにすることです。
スクワットの時と同様に、片脚だけワークして一度走ってみると違いが感じやすいので試してみてください。
1.足部に意識を向けて、足部と地面との接点をしっかりと確認します。
2.良い意味でアバウトにくるぶし或いは少し上の足首を前後から挟む様に水平面の意識を作ります。
3.少し味わって、地面の水平も合わせて意識をし、地面と平行の関係性を築きます。
4.その感覚を意識したまま、走ってみましょう。意識しているのは足首ですが、脚が真っすぐに地面を捉えているのを感じませんか?
5.足首の水平の意識があると、着地をした時に足部は柔らかくしたまま脚を安定させることができます。
その結果、しっかりと脚で支えている感覚がつかめるはずです。
こうしたワークで、
・骨で支えている
・表層の筋肉を頑張って使わずに深層で支えている
といった感覚を受け入れられると、また一層表層の無駄な緊張を迷いなく手放すことができます。
(第14回01 了)
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–Profile–
●大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』
Web site 大久保圭祐公式サイト