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レビュー 『ロジ・コミックス- ラッセルとめぐる論理哲学入門』
AIの起源である「論理学」について知りたい思い、手を取ったのが本書。
ラッセルを主人公に、「マンガ」で数学の基礎をめぐる「論理学」を中心とした、現代哲学黎明期のエピソードを描いています。
AIの幕開けは、ラッセルとホワイトヘッドの「プリンキピア・マテマティカ」の定理のプログラムよる証明で、彼らの物語は、フォン・ノイマンとアラン・チューリングへとつながり、コンピュータの時代を用意します。
論理学、哲学、数学に興味のある人にオススメで、プログラミングに関わる人も楽しめるはず。
20世紀を代表する哲学者であり、数学者・論理学者でもあるラッセル。
彼が若いときに取りつかれたのは、「混乱した世界を救えるのは科学だ」と信じ、「数学のための論理的基礎を築く」という目標。
世界大戦へと向かう激動の時代、個性的な思想家たちとのふれあいや、師であるホワイトヘッドとの共同執筆、弟子である天才ウィトゲンシュタインとの親交を通じて、真理探究のため、狂気のぎりぎりまで、飽くなき情熱をそそいでいきます。
本書がすごさは、貴族の日常を描かれていること。
ラッセルは貴族であり、祖父の初代ラッセル伯ジョン・ラッセルは、イギリスの首相を2度も務めたほどの人物です。
幼い日に両親を失ったラッセルは、祖父の家で育ちました。
祖母の決めたルールにより、祖父とは、付き添いなしに話をする機会が全くなかったと語り、一般家庭との違いに驚かされます。
学校教育は受けずに、家庭教師に個人指導を受けることは、貴族では一般的のようで、ラッセルも家庭教師から学問を学び、1890年にケンブリッジのトリニティ・カレッジに入学しました。
また、主役であり、狂言回しでもあるラッセルをとり囲む、数学界、哲学界のレジェンドたちも魅力的です。
なかでも、ラッセルの弟子であるウィトゲンシュタインの大ファンになりました。
彼が戦時中、砲弾の嵐の中で「世界の意味は世界のうちには存在しない」と真理をみいだすシーンは、本書でも見せ場の一つで、彼はさらに「神よ、私を正気から守りたまえ」と語ります。
師であるラッセルとの関係も、「師匠のいうことをよく聞く弟子」という間柄ではまったくなく、ラッセルの言うことにほとんど耳をかしません。
これが天才同士のやり取りなのかと思わせ、ラッセルが言うことに対して「アッハ」と身悶えしながら答えるところが個人的にツボです。
彼のキャラクターに魅せられ、『論理哲学論考』、『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』、『ウィトゲンシュタイン』の三冊を、思わずまとめ買いしてしまいました。
そして本書は、読者が飽きないよう、ストーリー構成のメリハリが効いています。
2つの世界大戦と絡みあって進行するストーリー、マンガの製作チーム自らを登場させて物語に補足をくわえ、ラッセルのアメリカでの講演がもり込まれており、最後まで楽しむことができました。
原作者はギリシア人数学者の2人で、作画はアテネのプロダクション会社が制作。
「ロジックと狂気」をテーマに、数理論理学の60年の変遷を、オールカラーのマンガで描き、世界的ベストセラーになりました。
抽象の極致を行く人々の、とことん人間臭い姿がからみあい、感動的な物語を紡ぎだしています。
また、巻末の人物紹介と用語解説がよくまとめられてあり、勉強になりました。
マンガでラッセルの人生を子供時代から辿る流れになっていますが、内容は哲学・論理学を扱っているため、立ち止まって考えさせられるものが多く、何度も読み返したい本です。
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