赤裸々なホームレス生活に仰天!:『失踪日記』レビュー
吾妻ひでお氏の『失踪日記』は、漫画でありながら、読者に強烈なリアリティを突きつける作品。
突如の失踪から始まり、自〇未遂、路上生活、肉体労働、アル中・精神病棟入院まで、作者の過酷な体験が赤裸々に描かれています。
今回は、この作品から得られた3つの視点について、より深く掘り下げます。
1. リアルな食の描写
路上生活中の食の描写は、読者に強烈なインパクトを与えます。
森の中で発見したのが「野鳥をとるワナ」。
そのワナにはエサとして、ミカンがぶら下げられていました。
それをパクっと食べるシーンは、まさにサバイバル。
そうだよな。食べ物にこまったら、ワナについているエサでも食べるよな、と唸らされました。
また、拾った天ぷら油を食後のデザートとして飲んだり、カビだらけのパンを日光消毒したり、腐ったりんごで手を温めたり...
人間の生きるための知恵と、同時に極限状態の恐ろしさを浮き彫りにします。
これらの描写は、普段何気なく口にする食事のありがたさを改めて気づかせてくれるもの。
そして、人が極限状態に追い込まれたときは、なんでもするという側面も見ることができます。
2. ユーモア
本書は、著者の悲惨な体験をギャグ漫画へと昇華させている稀有な作品。
著者が体験したことは、決して笑える話ではありません。
しかし、そんなどん底体験を、ユーモラスなタッチで見事に描き出しています。
著者自信が前書きで語ってますが、とても暗く、つらい内容なので、なるべく明るい漫画にしたとのこと。
仕事がイヤになったという作者の体験は、同じクリエイティブ職に属する読者にとっては、共感できる部分が多いはず。
悲惨さをユーモアに転換するには、振り返るための時間、自分を徹底的に客観視する力、そして、表現力が必要なのだと教えられました。
3. 自分を客観視する
本書の巻末で、作者は「自分を第三者の目で見るのはお笑いの基本だ」と述べています。
この客観的な視点こそが、作者を苦境から救い出したのかもしれません。
作品に登場するまわりの多くの人々は、自分の感情に振りまわされ、苦しんでいます。
しかし、作者は一歩引いて自分自身を見つめることで、状況を客観的に捉え、一歩踏みとどまることができたのだと思います。
とくに印象にのこったのが、以下のセリフ。
どこか哲学的なメッセージを感じます。
まとめ
『失踪日記』は、作者の波乱万丈な人生を赤裸々に描いたノンフィクション作品。
しかし同時に、それは普遍的な人間の物語でもあります。
読者は、作者の体験を通して、自分自身の人生を見つめ直すきっかけを得ることができるでしょう。
仕事に行き詰まり、人生に絶望を感じている人にとっては、新たな視点を与えてくれるかもしれません。
また、人間が極限状態に追い込まれたときに、どのような行動をとるのかというテーマについても、深く考えさせられます。
本書を読んだあと、本書についてさらにくわしく書かれたエッセイである『逃亡日記』に興味を持ちました。
とくに詳しく知りたいとおもったのが以下の二点。
・奥様の視点:
著者が家にかえったあと、作品づくりのために、当時の体験を記憶でたどり「寒くて死にそうだった」とノートに書き出すと、そこに奥さんが「こっちのほうが悲惨でした」と書き足した。という話が巻末にでているのですが、そりゃそうだよなと思いました。そして著者の失踪が、家族に与えた影響について、もっと詳しく知りたいと思いました。
・アル中病棟で出会った女性:
アル中病棟にいた、集会所でお祈りをする女性患者。その人は、宗教組織の本部から送り込まれてきたシスターで、じつはアルコール中毒者というのはウソなのでは?と著者が推測しています。もしそうだとしたら、宗教組織はいろいろな活動をしているんだなぁ… と恐怖をおぼえるとともに、怖いもの見たさで気になります。そして、一体どこの組織なんでしょう。
これらのナゾを解き明かすためにも、『逃亡日記』を読んでみたいと思います。
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