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「自分の体をもっと大切にしよう...」と心にせまる本。山田玲司『資本主義卒業試験』で資本主義の正体と、そこで生きぬくための心構えを学ぶ

山田玲司さんの『資本主義卒業試験』は、ストーリー仕立てで資本主義の正体を明らかにする、心にグッとくる読み物です。

資本主義という狂ったシステムの中で、僕らが幸せにいきていくための哲学が、小説形式で語られています。

ところどころマンガが描かれているのもユニークで、読みやすい一冊。

今回は、本書から学んだ「心に響く3つの視点」をご紹介します。


資本主義の恐ろしさ

現代社会は、資本が人間を道具や材料として使い、無限に増殖していくシステム。

まるで、SF映画のような恐ろしい世界です。

「僕らは全員、決定的に奴隷にされるんだ。」という作者の言葉は、まさに真実を突いています。

物語の主人公は、成功したマンガ家の青年。

しかし、資本主義のシステムにすりつぶされ、夢を叶えるどころか、どんどん追い詰められていきます。

彼は節税対策として会社を設立し、不動産や車を購入することで借金を膨らませていきます。

それは、赤字決算をすれば法人税が免税になるためであり、「借金をしなければ損をする」という歪んだシステムの存在を示唆。

さらに、大量の保険に加入することで、控除を受けます。

それらの結果、いつの間にか「毎年1500万円以上の収入がないと赤字」になる会社の経営者になってしまいます。

ささやかな暮らしをして、マンガを描いて生きていきたいだけだったのに、売上に追われる経営者になってしまったのです。

1500万円の収入はもはや義務となり、自分が描きたくないけど、売れるから描くという仕事もしなければならず、連載を休むこともできません。

この国の夢追い人間は、まるで国のためによく稼ぐ奴隷の志願者です。成功したら最後、死ぬまで成功し続けないといけないようになっている。なにしろ、貯蓄ができないシステムなのですから

p.32

この言葉は、現代社会の悲しい現実を如実に表しています。

問いつづける大切さ

物語の中で重要なキーワードの一つが「師」です。

しかし、この本に登場する師は、答えを与える存在ではありません。

むしろ、主人公に問いを投げかけ、考えさせてくれます。

これは、学ぶことの本質を体現しているのではないでしょうか。

正解を与えられるのではなく、自分で考え、答えを見つけることが大切なのです。

本のタイトルにもなっている「卒業試験」とは、ずばり「問いつづけること」。

合格して何かを貰うことではなく、問いつづけることこそが、人生の目的と言えるのかもしれません。

3つの希望の種

資本主義に代わる理想的な社会のシステムは、今のところ誰にも分かりません。

しかしこの本の後半で、大切にするべき「3つの希望の種」を心に植えつけられました。

1つ目は、からだです。

現代社会は、成長のため、儲けるために、自分や他人の体を犠牲にしていく風潮があります。

水俣病、枯葉剤、排ガス、地球温暖化...。

これらは、まさに現代社会の自殺行為と言えるでしょう。

資本主義に流されないように、自分や他人の体をいたわり、守りぬくことが大切です。

2つめは、本当の先生です。

儲ける人が偉い人になった現代社会では、「稼ぎにつながらないこと」を言う人は、社会に葬りさられてしまいます。

しかし、お金よりも大切な古くからの教えを教えてくれる存在である「本当の先生」は、今でもぼくたちの周りにいるはずです。

そんな先生をもとめ、「稼ぎ」だけが判断基準にならないように、自分の視点をひろげる必要があります。

3つ目は、自分です。

「夜を愛せ…」

何もなくても笑えるような人間になること。

孤独も、空腹も、倦怠も、下降も、苦痛も、不便さも、痛みも受け入れること。

そして、そのままで完璧である自分に満足することが大切です。

まとめ

一度ドロップアウトすると、二度と戻ってこられなくなる社会。

日本には、「もう死ぬしかない」というところまで追いつめられる人間が、年に3万人もいます。

そんな、普通に生きようとしても苦しい社会は、多くの問題を抱えています。

しかし、希望を捨てる必要はありません。

資本主義卒業試験』が、生き方のヒントを与えてくれます。

本書は難解な経済書ではなく、誰でも読みやすく、考えさせられる一冊。

資本主義に疑問を感じている人や、生き方に迷っている人に、ぜひ手に取ってほしい本です。

きっと、人生に何かしらの希望を与えてくれるはずです。

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