現実への武装:『必読書150』がおくる知性の回復法
良い本との出会いは、良いガイド本から。
『必読書150』はまさにそんな一冊。
現実に立ち向かうためには、知の武装が必要だ。
しかし、その武装が本当に有効であるためには、正しい指針が欠かせない。
そして本書こそが、知性回復のための道を示してくれるブックガイドである。
著者は柄谷行人さんや浅田彰さん、島田雅彦さんといった日本を代表する知識人たち。
彼らのオススメする必読書が 150冊 + 70冊 も紹介されている。
本書をもとめたきっかけ
もともと本書は、上の世代の方々(40代以上?)にはガイド本として有名だったらしいが、ぼくは知らなった。
本書の存在を知ったのは、『三行で撃つ』でとりあげられていたからだ。
『三行で撃つ』はとんでもない熱量を秘めているので、創作姿勢に活をいれたければ、是非一読をオススメする。
そのなかで「毎日2時間、何があっても読書する」という修行が紹介されていた。
1時間は自分の好きなものを読み、あとの1時間は以下の分野の課題図書をそれぞれ15分ずつ読むというもの。
①日本文学
②海外文学
③社会科学・自然科学
④詩集
そして、①〜③の分野に関しては『必読書150』が決定的であると紹介されており、このことがきっかけで本書をもとめた。
選書の秀逸さ
「カントもフロイトもマルクスも読んでいないで、何ができるというのか。」というキャッチフレーズどおり、教養を底上げするための読書リストとなっている。
紹介されている分野と本は、人文社会科学50冊、海外文学50冊、日本文学50冊。
そして、リストからあぶれた「参考テクスト」が70冊(人文社会科学、文学、芸術)ほど。
はじめて知るタイトルも多いが、教科書などで一度目を触れたことがある本も含まれており、教養を磨くうえであたりまえの選定ともいえる。
しかし、あらためてオススメされると「読みたいという気持ち」を起こさせてくれ、それゆえに意味のある選書となっている。
自分の立ち位置の把握
本書の効用は、自分の立ち位置を知ることができる点だ。
自分ではたくさん本を読んだつもりでも、人の興味はかたよってくるもの。
このリストと照らし合わせてみると、「教養の土台を築くのに、いま150冊中、~冊まで読んだ」ということを客観的に知ることができる。
そもそも「教養」は、数値化のできないものだ。
しかし、本書のような「教養」を築くためのガイド本が「ある種の測定方法」をあたえてくれ、自分がいまどの位置にいるのかを教えてくれる。
おわりに
柄谷さんによれば「現実に立ち向かうために教養が必要」とのこと。
そして、本書をつうじて自分の現在地を確かめることができ、紹介された本を読むことで、教養を身につけることができる。
また、本のリストだけではなく柄谷さんによる序文や、選者による対話もおもしろい。
日本の教養主義やポストモダンをふまえた歴史。
そして、かつて教養主義が選定した「岩波文庫的西洋の古典」との格闘が必須である、という話だ。
挙げられている本は、どれも読み込むのに大変な労力が必要なものばかり。
しかし、本書をきっかけにすこしずつ読み進めていこうと思う。
そして、本書の「ブックリストそのものに対しての批評」ができるようになったときこそ、本当の教養が身についたと言えるはずだ。