上方語で執筆する論文【日本語文法上の助詞の扱いを再編成する】
今回は徒然なるままに、上方語(関西弁)を切り口にした、国語文法に関する持論を綴ってみようと思います。
おさらい。「京阪アクセントのルール」
①上方語のアクセント(声調)は、文節単位で決まっている
②そのパターンは、高平、降低、低起の3つ(およびその組み合わせ)しかない
③後ろにつく助詞等により文節の長さが変わっても、パターンは維持される。その際、あくまで「文節単位」で維持されるので、低起なら起部が後ろにずれる
②に関しては、以前簡単にまとめましたのでご参照おしやす(京阪式アクセントは3パターン)
しかし、これやと「~は」と「~も」でアクセントが異なることを、どう説明するか?という疑問をいただきました。
そこで、以下続きどす。
厳密には、文節ではない新たな概念「声調単位」を持ち込む必要があるのかなぁ、と…
「も」や「か」などは、1文字とはいえそれ単独ではっきりとした意味を持つ単語で、
「が」や「を」、「は」(現行の国語文法では副助詞とされ、格助詞とは別扱いされるがしかし…)のもつ「格の提示」や「主題の提示」のような文法的な働きとは、働きを異にすると思うんどす。
せやので、より厳密には、
「上方語アクセントでは、文法的要素(それはしばしば異言語では語順により表される)が後接したとき、アクセント単位内の声調が維持される」と言うた方が言語学的に正確かと思います
ここでいう「文法的要素」こそ、「が」「を」などの格助詞および「は」のことどす。これらは文の中での文法的な働きを示す語で、外国語では必ずしも接尾辞で表されず、語形変化や語順で表されるものもあります。
一方、「も」や「しか」「など」等は、一般に外国語にも対応する"単語"が存在します。
「たこ焼きは」「 美味しい」
「たこ焼き」「も」「美味しい」
"Takotaki is" "delicious"
"Takotaki is" "also" "delicious"
「章鱼烧」「很好吃」
「章鱼烧」「也」「很好吃」
私は 卵を 買うよ
Ich kaufe Eier
卵は 私が 買うよ
Eier kaufe ich
私 も 卵を 買うよ
Ich kaufe auch Eier
卵 も 私が 買うよ
Eier kaufe ich auch
これらの事実から、一般に学校文法では「格助詞」「副助詞」などと分類される日本語の助詞を、機能性とアクセントに照らしあわせて、「文法助詞」と「意味助詞」に分類してはどうか、というのが拙見どす。そして、それに従うて京阪アクセントを理解するのが、京阪アクセントの王道ではないか、と思うております。