山之内

気持ちがほっこりするような小説を書きたいです。 辛いことの多い世の中ですが、少しでも読んでくれた人を笑顔にできたら嬉しいな〜。 細々と活動していけたらと思ってます。 普段は会社員してます。よろしくお願いいたします🙇

山之内

気持ちがほっこりするような小説を書きたいです。 辛いことの多い世の中ですが、少しでも読んでくれた人を笑顔にできたら嬉しいな〜。 細々と活動していけたらと思ってます。 普段は会社員してます。よろしくお願いいたします🙇

最近の記事

この中にお殿様はいらっしゃいますか?(毎週ショートショートnote)

 最近、この田舎町に引っ越した。都会の喧騒を離れのびのびした生活。期待に胸を膨らませる。  ある日の深夜。戸締りして寝床に入ってから、うつらうつらとしていると、玄関のドアを叩く音がした。  わたしは、跳ね起きた。その間も、何度も何度もドアが叩かれる。  こんな夜遅くに誰だろう……。 「はい、どなたですか?」 「……」  ドア越しに、外まで聞こえる大きな声で呼びかけるが、返事はない。  仕方なく、ソッとドアを開ける。  半分まで空けたところで、手が止まった。真っ赤な着物

    • エピゴーネンの使徒(青ブラ文学部・ショートショート)

      「また詰まらんものを持って来て……」  わたしは弟子が描いてきた作品を見て心底ゲンナリしてしまう。  それは、わたしが描いた作品を模倣したとしか思えない内容だったからだ。  気を落ち着かせるために、膝のうえにいるエリオット(うちで飼ってる猫)を優しく撫でる。あ〜かわいい。 「まったく、お前たちは成長せんな……」 「申し訳ありません、先生。どうしても、おっしゃられているオリジナリティと言うものが分からないです」 「やれやれ」  わたしには十二人の弟子(画家の卵)がいるが、

      • 蕎麦でも気球は浮かんでる(毎週ショートショートnote)

         ご当地ゆるキャラコンテストが開かれた。  全国各地からたくさんのゆるキャラたちが参加し、ステージで一発芸を披露して観客を沸かせる。  みんな可愛いし、どこかクスって笑えちゃう。 「ね、お父さん、うちのとこのゆるキャラはまだ出ないのかな?」 「あれ、そういえばまだ出てこないね。もうかなり終盤なのに」 「はやく出ないかな〜」  わたしの住んでいるところのご当地キャラは蕎麦をモチーフにしてて、インパクトの強いキャラ。今回どんな一発芸してくれるのかすっごい期待している。 「あ

        • それでも地球は曲がってる(毎週ショートショートnote)

           うちのネコのみこ助は丸いものが大好きだ。おもちゃのボールを与えようものならいつまででもじゃれついている。  そんなみこ助が、ある日居なくなった。わたしも家内も、大慌てで探し回る。  ご近所を行ったり来たり、いろんな曲がり角の隅々まで探してみたけれど、見つからず。 「こりゃあダメだ。貼り紙も効果なし。ネコ探しの探偵にでもお願いしようか……」 「そうね、もう打つ手ないもの」  すがる思いで電話しようとした、そのとき。 「みこ助……!」  一階のベランダに、ひょいとみこ

          この赤い瞳の映る先に(ショートショート)

           赤い月がゆらゆら照らす夜、ちいさな女の子が窓辺で泣いている。声をかけたいけれど、わたしにはどうにもできない。  足も、手も、口も、形はあるのに、自由に動かせない。  『こころ』はあるのに、表現ができない。  乾いた歌だけは、歌えるのだけれど。  わたしの前で、女の子は毎日毎日泣いていた。  その繰り返しの日々。どうして泣いているの? なんで?  彼女をこんなに泣かせるなんて、許せない。  でも、彼女は優しい。  泣いていないときは、いつも話しかけてくれる。  彼女にと

          この赤い瞳の映る先に(ショートショート)

          錬成は電卓の親族(毎週ショートショートnote)

           うちのじいちゃんは腕利きの錬成師だ。  僕は、錬成術の基本を教えてもらいに、じいちゃんちに来ている。 「錬成師になりたいならまずは電卓を極めろ」 「電卓? なんでそうなるのさ?」 「錬成とは、すなわち等価交換なんじゃよ。イコールで結ばれた世界を理解するために、まず電卓をマスターするんじゃ」  説明されても言ってる意味よく分からないんだけど……。  じいちゃんが言うには、緻密な計算のうえに錬成術は成り立っていて、そこには頭の中で超高速で電卓を弾くように計算しないといけない

          錬成は電卓の親族(毎週ショートショートnote)

          人生は洗濯の連続(毎週ショートショートnote)

           家の掃除していたら、昔のビデオフィルムがポロっと出てきた。  懐かしくて再生してみる。  映像には、刑務所から厳つい男が出てくるところが映ってる。うん、俺だわ。 「お勤めご苦労様です!」 「ご苦労様です!」  組の若い衆が総出で出迎えてくれている。そうそう、この日は出所の記念日だったか。  ま、いまはもう、足を洗ったけれど。  振り返ってみれば、好きなことを好きなだけって言葉が俺のモットーだった。  ときには目を背けたくなるような悪行もたくさん行ってきた。  そん

          人生は洗濯の連続(毎週ショートショートnote)

          世界図書館(秋ピリカ応募)

           世界図書館。この図書館には世界各国からの書籍が集まってくる。  司書のわたしは、西館の一部を受け持っていた。毎日、毎日、大量に送られてくる本の数々を所定の棚へ選別、陳列する。  この仕事、すごく大変だけど、大好きだからまったく苦ではない。  最近、司書仲間の中である噂が広がっている。夜になると、本がひとりでに動き回るというのだ。  ある日のこと、いつもよりもたくさんの量の本が送られてきてしまい、作業が終わるころには、最終退館者となってしまった。  日中には人の往来も多く

          世界図書館(秋ピリカ応募)

          激辛の鏡(毎週ショートショートnote)

           わたしは、アリス。  今日、不思議なことが起こった。いつもはない大きな鏡が家にあったの。  でも、お父さん、お母さんに聞いても、なんでここにあるか分からない。  わたしは、猫のキティと一緒に、鏡のことについて考えた。  そしたら、鏡の向こう側で、暖炉の前のチェス達が意思を持ったように勝手に動いていたのが見えちゃった。  なんてステキな世界!   もしかしたら、この先の世界で、冒険ができるかも。  わたしは勢いよく、鏡にダイブした。  ガンっ 「痛っ……」  思いっ

          激辛の鏡(毎週ショートショートnote)

          夜からの手紙(毎週ショートショートnote)

           世界は、昼の世界と夜の世界に真っ二つに分かれていた。簡単に言ってしまえば、世界は平面でできており、コインの裏表のよう。  そんな世界だけど、連絡手段がまったくないわけではない。世界の真ん中には大きな穴が空いていて、そこから行き来できるようになっている。 「いつかは、わたしも夜に行ってみたいな〜」  素晴らしい世界を、もっと知りたい。  ある日のこと、『夜からの手紙』が届いた。送信元は初めて聞く地名。でも宛先はわたしで間違いない。  中を開けてみると、夜へのチケットが入っ

          夜からの手紙(毎週ショートショートnote)

          インドを編む山荘(毎週ショートショートnote)

           インドまで現地のスパイスを取りに行くところから始めるとは、師匠は変なことに拘りがある。  助手の私は、最高のカレーを作るため、師匠の言うことに絶対的に従っている。 「師匠、そろそろ休みませんか? ずっと山登りし過ぎて疲れちゃいましたよ」 「やれやれ、目的の山荘はまだこの山の先にあるんじゃ、野宿でもしたいんかえ?」 「うげえ……」  こんな異国の地で野宿なんてムリ。私は最後の気力を振り絞って山荘までの道をひたすら歩くのだった。  何時間掛かっただろう。 「着いたー!」

          インドを編む山荘(毎週ショートショートnote)

          バンドを組む残像(毎週ショートショートnote)

           小さかった頃からミュージシャンになりたかった。小学生の卒業アルバムにも将来の夢に書くほどに。  でも……。現実は厳しかった。そんなに簡単になれるものではない。  若い頃はフリーターをしながら細々と活動していたけど、鳴かず飛ばず。最後までパッとすることはなかった。  それでも晩年は家族に恵まれ、幸せな一生だった。  今でも夢を叶えたかった。と言う気持ちはある。  消えいく意識の中で、既に他界していったバンドメンバー達との辛くも楽しい日々が蘇る。  僕は、また彼らとのバンドを

          バンドを組む残像(毎週ショートショートnote)

          雨の中の少女(ショートショート)

           見つけていただきありがとうございます。  一年くらい前に書いたショートショートです。  地縛霊少女の話です。 ------ 『私のことを見つけてほしい』  いつからだろう、そんな気持ちがあったことさえ、昔のこと。  もう何ヶ月、何年こうしているのか。  目の前を行きかう人たちが私のことを認識してくれることはない。  晴れの日も雨の日も、雪の日も雷の日も。昼も夜も。  ずっとずっとひとりぼっち。  ただただ、目前の風景を眺める日々。  感情の起伏さえ、感じることがなくな

          雨の中の少女(ショートショート)

          流れ星(ショートショート)

           見つけていただきありがとうございます。  過去に初めて書いた小説(ショートショート)です。  せっかくなので公開します。 ------  僕は、空を見上げた。  星屑の海に、星が流れる。  いくつもいくつも。流れては消えていく。  吐く息が白い。寒々とした冬の夜空に手をかざしてみる。  ああ、もう若々しさなんてとうにない。ほとんどが骨と皮だけになってしまった手の甲を見て、なんとも年期が入ったものだとしみじみ思う。  痩せた指と指の隙間から星々の輝きが見え隠れして、手を

          流れ星(ショートショート)