この中にお殿様はいらっしゃいますか?(毎週ショートショートnote)
最近、この田舎町に引っ越した。都会の喧騒を離れのびのびした生活。期待に胸を膨らませる。
ある日の深夜。戸締りして寝床に入ってから、うつらうつらとしていると、玄関のドアを叩く音がした。
わたしは、跳ね起きた。その間も、何度も何度もドアが叩かれる。
こんな夜遅くに誰だろう……。
「はい、どなたですか?」
「……」
ドア越しに、外まで聞こえる大きな声で呼びかけるが、返事はない。
仕方なく、ソッとドアを開ける。
半分まで空けたところで、手が止まった。真っ赤な着物を着た顔面蒼白の女の子が立ってる……。無表情で、まっすぐにドアを見つめて。
わたしが固まっていると、女の子が顔だけこちらを向いたため目が合った。
「ひっ……」恐怖で身がすくみ、動けない。冷や汗が全身の毛穴から湧いてくる感覚。
どのくらい、時が止まっていただろう。
彼女が一歩前に出て、一言。
「この中にお殿様はいらっしゃいますか?」
「ひぃぃ〜っ、お助け!!…………、
って、へ? お殿様?」
なんか、拍子抜けしてしまった。
「ウチには居ないよ」
そう言うと、彼女はスッと闇の中に飛散した。
後から聞いた話、この辺りには討死したお殿様の娘が、今でも夜な夜な徘徊してるという。
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加させていただきました。
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