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【読書日記】『ベル・ジャー』

TLで流れてきて、なんとなく気になって購入した本だった。シルヴィア・プラスの『ベル・ジャー』冒頭からは青春小説のはじまりなのかと思ったけれど、読み進めていくうちに自分の10代から20代中頃までの自意識のことを思い出した。

私は子どものころから、自意識が過剰な人間だったと思う。そのことが1番苦しかったのが10代から20代中頃まで。過剰な自意識というものは、自らの命さえ奪ってしまいかねない。そのことにうすうす気づいていたから、苦しかったのだと思う。


主人公のエスターは19歳の大学生。奨学金で大学に通い様々な賞をもらっている優秀な学生だ。ニューヨークの出版社のインターンも勝ち取り、すべてが順調そうに見える。

エスターには非常にシニカルで辛辣な部分がある。そして、それは時に彼女自身に向かっていく。

理想と現実の間でこうありたいという彼女の理想が、だんだん彼女自身を蝕んでいくのが、まざまざと描写されていて、こちらに迫ってきた。

この作品を若い時に読んでいないことを後悔する気持ちと、この作品を若い時に読んでいたら私自身も打ちのめされていたかもしれないと思うほどの強烈な作品だった。

エスターが選択肢について、イチジクの木を使って描写しているのがとても印象的だ。

イチジクの木の幹の分かれ目に座り、飢え死にしそうになっている自分の姿が見えたーーどのイチジクを選んだらいいか決められないのだ。あれもこれも欲しくて、ひとつを選んでしまったら、残りすべてを失うと思っている。そうして決められずにいたら、イチジクにしわが寄って黒くなり、ひとつ、またひとつと、足元の地面に落ちていった。

シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』

選ぶことの難しさを語ったエスターに果たして本当に選べたことがあったのだろうか? そして、私自身はどうだったか? 読後そんな想いが去来した。

著者のシルヴィア・プラスはこの作品の刊行一ヶ月もしないうちに、別の部屋に子どもふたりを残して、オーブンに頭を突っ込みガス中毒で死んでしまった。

ひとりの母親としてそのことに怒りを覚えつつも、それほどまでに自分から逃れられなかったのかということに悲しみが胸いっぱいに広がった。



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