『芸人迷子』 ユウキロック
集中力が落ち本が読めなくなっていた。
気がつけば同じところをまた目で追っていたり、読んでいる途中で飽きてきて閉じてしまったり。読みたい欲は強くあってもかなわなかった。
一冊読みきったのはおそらくリリー・フランキー氏の『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』以来ではないだろうか。調べてみると2005年発刊。13年ぶりか…。
2000年頃、大阪に“baseよしもと”という若手芸人が多数出演する劇場があり、そこの芸人に夢中になっていた。きっかけは友人に教えてもらったNHKの“爆笑オンエアバトル”だったと思う。
CSのヨシモトチャンネルを契約したり、福岡吉本の劇場にもよく通った。多数いるbaseよしもと芸人の中で、著者ユウキロック氏のコンビ、ハリガネロックが一番好きだった。ハリガネロックを好きになったきっかけは覚えていない。それもきっとオンエアバトルではなかったかな。
M-1グランプリ、THE MANZAI。関西圏在住ではない私にとって、地上波で見られるこれらの番組が年末の最大の楽しみだった。この日のために仕事を早上がりしたこともあるほど。( 笑 )
いつの間にか私のお笑いへの熱意が薄れていた。仕事、闘病、そして他に夢中になる対象が替わったからだ。
ハリガネロックが解散「した」と知ったのはTwitterだった。
baseよしもとにプレゼントを送り、地方公演に足を運び、CS放送に夢中になった。私の20代前半、それは生き甲斐だった。
ひとつの時代が終わったのだなとノスタルジックな気分になった。
本文中に出てくる沢山の懐かしいコンビ名に、あの頃に戻ったような気持ちになりワクワクしながら読み進めた。
ユウキ氏は強面で、可愛がられるタイプではない、可愛げのない人間だと著書の中で語っている。
しかし、相方の披露宴、父の死など。。思い巡らせすぎているのではないかと心配になるほど敏感で繊細で、相手やそれを取り巻く環境への思いやりで溢れていて、読んでいて涙がこぼれた。
とにかく前向きで強気な言葉が並ぶのはきっと、自分を鼓舞させていたのだろう。時に打算的に戦略的に。熱い熱い思いで漫才に、ネタに真正面からぶつかって生きた20年が伝わってくる。
周りの師匠方の懐の深さ、何十年も第一線で活躍し続ける姿勢にも胸を打たれた。
コンビ間に漂う不穏な空気。すれ違う思い。
中程から終盤あたりはファンだった者にとって読んでいて苦しかった。
芸人、漫才師から、講師やライター、タレントなど『何でも屋』となった彼を、今後も陰ながら見守り応援したい。
ユウキロック氏の次回作を楽しみに。
大上さんは今もアイドルイベントのMCをしているのかな。