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万緑の中や吾子の……言葉と格闘す
万緑の中や吾子の歯生え初むる
中村草田男の有名な一句である。それまで季語ではなかった『万緑』という言葉を、この一句が新季語にしたといわれる名句で、私もムスメの歯が初めて生えたときにすぐにこの句を思い出したものだ。当時はまだ俳句を趣味にしていなかったのに。
歯が生えた我が子はやがて言葉を習得し、親子の間に会話が成り立つようになる。
……って、わりと簡単に考えていたよねえ。
確かに会話は成立するようになるのだけれど、幼い我が子と意思の疎通をはかるのは、そうそう簡単なことではなかった。
☆
ムスメが7歳のとき、お気に入りのマイリトルポニーの人形にスケートボードを作りたいと言い出した。
しかし、7歳のムスメの力量でタイヤの車輪が回転するスケートボードが作れるわけもなく、もちろん行きつく先は号泣だ。
ざっくりとした性格のマミィ(私)は「スノーボードにすればいいんじゃない?それなら車輪がいらないし」と提案してみた。
「スノーボードじゃだめなの!」
ますます泣くムスメ。
やはりダメか。
「スノーボードはタイヤがないでしょ!」
いや…だから作りやすいんだけど。
嗚呼、でも、そうなのだ。
ムスメにとっては逆なのだ。
スケートボードが作りたいんじゃなくて、タイヤ(車輪)を作りたいからスケートボードなのだ。
分かってはいるのだ。
小さな子どもは自分の意見を言葉にしてうまく伝えられないけれど、理由もなく主張しているわけでも、理由もなくその主張に固執しているわけでもないということは。
でも、毎日の生活の中で、彼らの言い分を毎回丁寧に聞き取り調査できるかというと…これが、まあ、なかなか難しい。
子どもはなぜ、親が「今は…今だけはやめて」と思うタイミングで青少年の年少児の主張を始めるのか…。
今!ハンバーグ!捏ねてます!(焼いてます!)
とか
幼稚園に!遅刻しそう!っていうか、してる!
とか。そんなタイミング。
しかも、限られたボキャブラリーでの主張はまるでクイズかパズルのよう。
昔、発売された犬の言葉がわかる(という売り文句の)バウリンガルみたいに、子どものこだわりの主張の本意を翻訳してくれる端末(キッズリンガル?)があればなあ。
あ、出来れば思春期バージョンもつけてほしい。
ムスメの今のNahはノーなのイエスなの、どっちなのー!
しかし、子どもの主張を理解できたとしても、それを叶えてあげられるかどうか。それもまた新たな問題なのだ。
なかにはどうやっても叶えられないこともある。
噴水になりたいと言われても、それはちょっと…無理だよ、ムスメ。(実話)
話をスケートボードに戻すと、うちにはかつて工作少年だったオットがいるので、彼の協力のもと、ムスメ念願のポニーちゃん用のスケートボードを完成させることができた。
オット、おつかれ!
こうして苦労して作った工作を秒で壊されるまでが子育てです。一瞬だったな……。