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現役書店員による今年読んでよかった小説ランキング
こんにちは。のちに最強になる作家、新代ゆうです。
今回は今年読んでよかった小説のランキングを紹介していこうと思います。
YouTubeのほうでは「今年発売の小説」に絞り、おすすめの小説を紹介する予定なので、noteのほうではジャンル関係なく、完全に私の好みでピックアップしていきます。
重要なネタバレはしないので気になった作品はぜひお手に取ってみてください。
それでは早速。
YouTubeでは今年発売の小説に絞って23冊紹介しています。よければご覧ください。
第5位『世界でいちばん透き通った物語』
まずは新潮文庫nexより『世界でいちばん透き通った物語』。作者は杉井光さんです。
あらすじ
主人公の父親は大御所のミステリー作家・宮内彰吾。彼は既婚者ながら様々な女性と関係を持ち、しかも子どもまで作るという、けっこう最低なヤツとして登場します。
主人公は妻ではない女性との間にできた子どもですね。
物語は大御所のミステリー作家さんが逝去したところから始まります。
そして宮内の長男が主人公の元にやってきて、こう言うのです。
「親父が死ぬ間際に小説を書いていたらしい。何か知らないか」
主人公は編集者の霧子さんと一緒に、父親の遺稿を探します。
見どころ
さてさて、主人公が父親の遺稿を探すのが話の本筋となるわけですが、様々な違和感が実を結んでいったとき、びっくりしまくりです。(?)
宮内が使用していた「変な原稿用紙」、それから「この世でいちばん透き通った物語」という意味深なタイトル。
作中の仕掛けに気づいたとき、あまりの発想力と作者さんの執念に、変な汗が流れました。
作者さんの執念が尋常じゃないです。(褒め言葉)
びっくりした小説、意外性で見たら1位で間違いないです。
第4位『告白撃』
第4位は住野よる先生の『告白撃』。
この間、12月中旬に『歪曲済アイラービュ』の発売を発表されていましたね。
こちらも最高に最高でしたが発売日前なのでいったん置いておきます。
読書チャンネルでアツい感想動画を出すのでぜひ。
あらすじ
主人公は三十代を目前に婚約が決まった女性・千鶴、それから千鶴の昔からの友だちであり、彼女の「ある作戦」に付き合わされることになった男性・果凛。
その作戦とは、もう一人の友だちである響貴に対し、「自分に告白させて、失恋させたい」というぶっ飛んだもの。
響貴は前から千鶴に思いを寄せていまして、周りからしてみれば周知の事実だったわけですが、響貴はグループの関係の変化を避けるために、思いを伝えるということをしてこなかったんです。
作中で響貴はめちゃくちゃいいヤツとして描かれます。実際、細かい気配りができてめちゃくちゃいいヤツなんです。
だからこそ、このまま婚約したことを伝えれば、たぶん心から祝福してくれるだろうけど、モヤモヤは残るんじゃないか。そう考えた千鶴はさっきの作戦を実行することにしました。
大人による大人のための青春小説ですね。
見どころ
住野よるさんの魅力といえば十代の青春と若さ故の葛藤、それからほんのり覗く心の闇を描くのがお上手ですね。
今回は大人が主人公だからまったく路線が違うと思いきや、いつものがっつり青春に加え、大人ならではの取捨選択、制限が光る作品でした。
ハンバーグとパスタを混ぜたらおいしいじゃないですか。それと同じです。
ハンバーグとパスタ。カップラーメンと角煮。白米とショートケーキ。
作戦は成功するのか――、が主軸かと思いきや、同じグループの仲間たちが参加してきたことで、作戦は思わぬ方向に進んでいきます。
住野作品大好きキッズの私からしても、最高の作品でした。
第3位『ミシンと金魚』
すばる文学賞を受賞し、話題を呼んだ『ミシンと金魚』。
糸井みみさんの作品です。
あらすじ
『ミシンと金魚』は認知症の女性が主人公のお話です。これまで認知症がテーマの小説はありましたが、主人公自体が認知症というのはなかなか珍しいと思います。
主人公のカケイさんは、介護員さんに「カケイさんは今までの人生をふりかえって、幸せでしたか?」と尋ねられ、自分の人生を追想していきます。
見どころ
この小説は、なんていうか、すごかったです。(?)
これは本当に謝罪なんですけど、ちょっと私にはこの小説の良さを言語化する能力がなかったです……。
でも本当にすごいんです。信じてください。
ストーリーに大きな展開があるわけでも、カケイさんが人生を変えるほどの気づきを得るわけでもないのに、なぜかこんなに心を動かされる。
読了したのが眠る前だったのですが、消灯してからもしばらく天井を眺めたまま動けませんでした。
というわけで、糸井みみさんの受賞インタビューを置いて次に行きます。
ほんとうは、作家になりたかった。
劇団の裏方をやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
コピーライターをやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
下北でバイトをやっていたときも、ほんとうは、作家になりたかった。
(中略)
今年のはじめ。
コロナで死にかけたときは、作家として死にたかった、と心底悔やんだ。
でも、まさか、ほんとうになろうとは。
これからは、ほんとうの、作家になりたい。
この情熱。この情熱にやられました。
次回作が楽しみです。
第2位『光のそこで白くねむる』
続いても純文学作品、『光のそこで白くねむる』。
ついこの前の文藝賞を受賞した待川匙さんの作品です。
ちなみに発売日は11月18日。
どうも、タイムトラベラーです。
あらすじ
主人公の「わたし」は土産物店で働いているのですが、ある日、副店主により無期限の営業休止を告げられます。併せてわたされた七万円。
のちに「わたし」は、ニュースにて無差別殺人の容疑者として拘束された店主の名前を見ます。
突然の休暇と七万円。これらを消費するため、「わたし」は故郷で眠る「あなた」の墓参りに向かいます。
「わたし」を「加害者」と機械のように言い続ける祖母、失踪した父、存在の不透明な母親。道中、「わたし」は自らの人生を振り返ります。
次第に境界がわからなくなる現実と妄想。
そこで明かされる主人公の過去とキイちゃんとの関係とは――。
見どころ
今回の文藝賞は2作品同時受賞ということで、「お得だ!」と思って雑誌『文芸』を買いました。ちなみにもう1作の『ハイパーたいくつ』はぶっ飛んでいておもしろかったです。
さて、『光のそこで白くねむる』のいちばんの見どころは、文章です。
しっとり染み込んでくるような文章、言葉選び、リズム。
この作品はあらすじを見ずに読み始めたのですが、最初の1ページを読んでいるときから、この作品が持つ引力に取り込まれてしまいました。
とにかくずっと読んでいたくなるような文章がすごかったです。
第1位『さくらのまち』
第1位は完全に私の好み『さくらのまち』です。
三秋縋さんの作品です。
三秋さんが新作を出すのは6年ぶりらしいですね。
どの作品も大好きなので、新作の発表があったときは嬉しかったです。
あらすじ
主人公の尾上はマッチングアプリのサクラとして働く23歳の男性。
あるとき尾上の元に「高砂澄香が自殺した」という謎の電話が入ります。
澄香は中学生のとき、尾上を騙し、人間不信にさせた張本人です。
序盤は尾上と澄香がどのように親睦を深め、騙されるに至ったのかが語られていきます。
そして時は現代に戻り、脅威であった澄香が本当に死んだのかを確かめに故郷へ戻った尾上の前に、澄香の妹が現われるのです。
「ある事情」により妹の霞とその後も関わりを持つ尾上。
自分は今、澄香がしてきたことを、霞にやり返せる立場にいる。
果たして――?
という感じです。
見どころ
三秋さんの小説の見どころは、間違いなく「憂鬱」の解像度の高さ。
一度でも人生に息苦しさを感じたことがある人に刺さる小説です。
そしてこの作品が持つ、明確な「傷」。紙面の文字を越えて読み手の身体にも刻まれる「傷」がよかったです。
私は小説に与えられる悲しみ、憂鬱といった痛みが大好きです。
というわけで今回はここまで。
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