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生を繋ぎ止める「ドクターX」と、死を悼む「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」。

Amazon Prime Videoで配信開始された「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」。料理の作り置きのお供に……と軽く視聴してみたら、思いがけず最終話まで一気に観てしまった。

レビューなどで書かれているのは、「ドクターX」との対比。確かに、米倉涼子さん演じる伊沢那美は、ドクターXの大門未知子を想起させるようなキャラクターだ。徹底した仕事へのこだわり。実際、「ドクターX」の脚本を務める香坂隆史さんがスタッフとして名を連ねているわけで、その関連は意図的なものだろう。(米倉さんの演技がワンパターンというわけではなく、意図的に似せる演出になっているのだ)

ただ、「ドクターX」における医者と、「エンジェルフライト」における国際霊柩送還士とでは、求められる役割や機能が真逆だ。前者は生を繋ぎ止めるのに躍起になる一方で、後者は死を前提として死を悼む役割を担う。

松本穂香さん演じる高木凛子は大手企業を退職して、国際霊柩送還士の仕事に就くわけだが、母親(演・草刈民代)からは、職業を否定されるような発言を浴びてしまう。年収が全てではないけれど、おそらく世間一般の認識としても、医師の方が圧倒的にステータスが高いと見做されるのだろう。

それでも、死を扱う国際霊柩送還士という仕事を、本作は意義あるものとして描いている。

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全6話。色々な人たちが死んでいく。

1話では、スラム街で日本人の若者が。
2話では、アフリカ某国でテロに遭った日本人職員が。
3話では、旅先で亡くなった食堂経営者と、出張先で亡くなった大手企業の経営者が。
4話では、日本で働く外国人労働者が。
5話では、日本を旅していたモロッコの大富豪が。
6話では、凛子の母親が。

死者には、誰も等しく人生がある。そして死者の家族やパートナーが存在する。例えばテロは、そんな人間をあっという間に死に追いやり、そして家族を悲しみに暮れさせてしまう。

「(テロで行方不明になった)指1本たりとも見つけて!」と指示を飛ばす那美は、残された家族と死者の対面にとことんこだわる。「死者に会いたくない」という家族もいる中で、「(死者と向き合わないと)必ず後悔します」と告げる。その執念は、生命を救おうと戦う、「ドクターX」の大門未知子と何ら変わらない。

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どの死も、苦しい。

残された家族の悲しみに共感してしまうのは、俳優陣の演技によるものだろう。杉本哲太さん、矢島健一さん、平田満さん、筒井真理子さん、菅原大吉さん、近藤芳正さん。残された家族の悲しみ、そして生前の故人に対して「できなかった」後悔を、演技を通じて表現している。

見事としか言いようがない。

それぞれのエピソードの特徴は、「悲しさ」だけに終始しないことだ。故人を個人と掛けるならば、どの個人の生き様も疎かにしない。

近藤芳正さん演じる工場長の垣内は、外国人労働者に劣悪な労働環境を強いる経営者として「最悪」に描かれる。彼が死に追いやったわけではないけれど、日々疲弊させ、追い詰めた彼にも責任はある(しかも給料未払いが続いていた)。そんな彼にも家族がいて、守るべき仕事場があって。従業員の死をきっかけに自分自身に向き合ったとき、彼にも後悔の念(そして悲しみ)が浮かぶのであった。

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これを、泣かせるためのメロドラマと切り捨てる批評を、僕は否定しない。

現実の死とは、ドラマで描かれるほど単純なものではないはずだ。本物の悪人だっているはずだし、ドラマでは死を受け入られても、現実の世界では裁判沙汰になったりするわけだ。悲しみだけでなく、怒りだって、それは正当な感情に違いないし、本作のようなクロージングで終わってはいけない気がするのだ。

EP6は、続編を示唆する終わり方だ。全6話という本数からも、後編分が撮影済なことが予測できる。

「ガンニバル」のようなスペクタクルな展開は、ない。

それでも、2020年代という、人と人との関係性が希薄になっている今だからこそ、改めて「死」というものに向き合うことが必要ではないだろうか。

人生は、一筋縄ではいかない。

生と死も、隣り合わせ、表裏一体。ゼロかイチで割り切れるものではない。

「死を悼む」という仕事に敬意を表しつつ、来る続編を心待ちにしたい。

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ほりそう / 堀 聡太
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