VIVANTと野性の証明、特殊工作組織の描き方
編集者の菅付雅信さんがテレビドラマ「VIVANT」と1978年「野性の証明」についてポストしていた。
実は同じ頃、僕も偶然、Amazon Prime Video内のチャンネル「シネマコレクション by KADOKAWA」で「野性の証明」を鑑賞していた。その日はちょうど自転車転倒をしてしまったタイミングで、映画鑑賞を諦め、
18時〜:人間の証明(の続き)
19時〜:野性の証明
21時〜:VIVANT
22時半〜:野性の証明(の続き)
という、なかなか奇妙なひとり鑑賞会を興じていたのだったが、大正解だった。「VIVANT」にハマった方ならば、「野性の証明」をセットで鑑賞するのはマストだろう。
それはさておき。
「VIVANT」の主人公・乃木(演・堺雅人)は、自衛隊内の特殊組織である別班に配属されている。そして「野性の証明」で主人公・味沢(演・高倉健)も自衛隊の特殊工作隊員(だった)という設定である。名称こそ違えど、同じ素材を扱っているのは明白だ。ソースはないけれど、おそらく演出を務めた福澤克雄さんは、「野性の証明」をある程度意識した上での作品づくりだったのではないだろうか。(言うまでもないが「パクリ」ということを指摘したいわけではない)
僕が注目したのは、特殊組織に所属する人間の描き方だ。
「野性の証明」では、特殊工作隊員はとことん「ひとでなし」のように描かれている。任務遂行のためには、人間の生命を奪うことも躊躇しない。それが子どもであったとしても。味沢も特殊な訓練を受け、洗脳されたが、任務遂行途中で遭遇した連続殺人事件で殺されそうになっていた女の子を救出する。それは任務外ということで上司から激しく叱責されるわけだが、それを機に除隊を申し出ることに。要注意人物として特殊工作組織からはマークされるのだが、案の定、とある事件をきっかけに追われる立場になるという筋書きだ。
「VIVANT」では、特殊工作隊員は正義(あるいは大義)を遂行する人間として描かれる。乃木の元同僚を自殺に見せかけて他殺するのも、GFL社のアリを執拗に脅迫するのも辞さない。その狂気に視聴者は怯むも、徐々に乃木が心から求める家族の愛情へと終始していく。「ひとでなし」ではなく、ひとりの人間として描かれる姿は、視聴者にもさぞかし共感されたことだろう。(考えてみれば、アニメ「SPY×FAMILY」の黄昏も同じようなトーンで描かれている)
もちろん、立場の違いという側面はあるだろう。
「野性の証明」の味沢は、特殊工作組織に嫌気がさして除隊を申し出たという立場だ。味沢の視点では、特殊工作組織は異常な部隊として映るのは当然のことである。(だから除隊したのだ)
追われる立場の味沢と、追う立場の乃木。
ドラマの見せどころとして、逃げる味沢のスリリングさと、真実を追求する乃木のミステリー感は大きく異なる。個人の好みは別にして、同じ素材を扱っていても、ドラマの展開は180度異なる形で演出できることに、改めて気付くことができた。
こちらの押井守さんのインタビューも面白い。
映画の醍醐味を、5本分くらい詰め込んだのが「野性の証明」だ。
いわゆる角川映画の名作として長く語り継がれている作品、ぜひこの機会に鑑賞してほしい。
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