「エアコンのリモコンがない」
昔いた会社で
先輩ののりちゃん、同僚の西くん、わたしは
『3バカトリオ』と呼ばれていた
先輩の誰かが言い出して、失礼極まりない名称
真夏の週末
残業を終えたわたし達は、焼肉屋を目指し
それからカラオケ屋
飲み屋のボックス席で始発を待ち
のりちゃんの部屋で、雑魚寝をした
最初に感じたのは、熱気が鼻や口を覆う
何かが首筋を伝う感覚
覚醒すると重い頭痛がして、目を開いた
…エアコンが付いてない
2人を見ると、下着だけになり
なんだか凄くズルく思えた
壁にある、エアコンのリモコンホルダーには
肝心の主がなく
雑然とした部屋にあるのは
テレビやDVD、オーディオのリモコン
「エアコンのリモコンがない」
のりちゃんを揺すって起こしても
「その辺りにあるでしょ」わたしを見ようとしない
西くんを起こしても「うん」だけ
窓を開けても、アパートの窓は大きさが知れて
真夏の昼間は、陽に焼けた熱風が緩く入る
ニンニクと汗臭さが妙に鼻へつく
玄関のドアを全開にし、風通しを良くしても
涼をとるだけの冷やさがない
灼熱の悲しみに悶絶して、2人を叩き起こし
リモコンを探しても、半間の押し入れにもない
のりちゃんがくれたコーラを半分飲んで
額を冷やしても、暑さが和らぐはずもない
近所のファミレスに避難するか
先にシャワーを浴びて、ファミレスに行くか
じゃ、後者の方と決まり
脱衣所のドアを開けると、洗濯機の上に
静かに休む、エアコンのリモコンがあった
よく探しもしない、3バカだった
#青ブラ文学部
#習作
#短編小説
#今日の短歌
#エッセイ
#評論文
#詩
#山根あきらさん
#灼熱の悲しみに悶絶して