映画「関心領域」をどう観るか〜素の状態での感想
英国人監督ジョナサン・グレイザーの「関心領域」(原題:The Zone of Interest)を観た。アカデミー賞国際長編映画賞を受賞、作品賞・監督賞などにもノミネートされた作品である。
いつもの通り、ほとんど予備知識を入れずに、素の状態で観た。どの程度理解できたのか、疑問を抱きながら映画館を後にした。
そんな状態での感想である。深い分析は様々な場所に出ているようなので、ご興味ある方はご参照されたい。
ポーランドのアウシュビッツ収容所、壁一つ隔てた場所にある邸宅で、収容所長のルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)家族は暮らしている。背景にあるのは、ユダヤ人に対するホロコーストである。
ヘスの妻役は、カンヌ映画祭パルムドール受賞の「落下の解剖学」で主演した、ザンドラ・ヒュラーが演じている。
ただし、映画ではユダヤ人迫害の直接的な場面は描かれない。そのそばで暮らすドイツ人家族を映し出すことで、その不気味さを浮かび上がらせる。きれいに花が咲く庭にはプールがあり、子どもたちが無邪気に遊んでいる。ヘスと妻の間で交わされる言葉は、隣地で行われていることなど知らないかのようである。
一方で、職場においては、ヘスはユダヤ人対応の中枢に存在している。時折挟み込まれる象徴的な画面が、ホロコーストに思いを抱かせる。
ドイツという歴史ある大国において、なぜホロコーストが起こったのか。あれからまだ100年も経っていない。同様のこと、規模は異なれども同質のことが自分の身近で起こらないと断言できるだろうか。
その時、自分はヘスの家族のように“見て見ぬふり“をしないと言い切れるだろうか。もしかしたら、今すでにそうした状況にあるのではないか。
原作はイギリスのマーティン・エイミスの小説。これもちょっと気になっている