M・W・クレイヴン「ブラックサマーの殺人」そして「キュレーターの殺人」〜“つながり“が強いシリーズ
M・W・クレイヴンの「ストーンサークルの殺人」については昨年記した。続く「ブラックサマーの殺人」「キュレーターの殺人」もAmazon Audibleに入っていたので、オーディオブックで楽しんだ。(すべてハヤカワ・ミステリ文庫として刊行)
「ブラックサマーの殺人」は、主人公のワシントン・ポー刑事が過去に解決した事件について、冤罪だったのではないかとの疑惑が持ち上がる。窮地に立たされるポー。
ミステリーのシリーズ物は、探偵役の人物を中心に各小説が緩やかにつながりながらも、それぞれは独立して読める作品が基本である。このポー・シリーズもそうだが、他作品に比べると“つながり“が強いように感じる。解決する事件はユニークなものだが、続きが読みたくなる。それで2作品を一気にこなした。
別の角度から見ると、それがこの作者の意図であり、小説としての仕掛けである。
第1作「ストーンサークル〜」同様、中核となるのはポー、上司ステファニー・フリン警部(女性、同性愛者であり、彼女の生き様もちょっとした伏線)、分析官で天才のティエリー・ブラッドショー。
3人の個性豊かで魅力的な登場人物に加え、死体を冷静に取り扱う病理学者エステル・ドイルという存在に惹かれる。彼女を含め、ポーの周囲を固めるのは全員女性で、これも意図的なのだろう。
ただし、「ブラックサマー〜」は若干消化不良な印象があって、前作に比べるとちょっと落ちる印象。しかし、第三作「キュレーター〜」につなげる為には必読。
「キュレーターの殺人」は、Web本の雑誌で“3作目で大化けした“と称賛された作品。“キュレーター“は美術館の学芸員を指す言葉として使われることが多いが、本小説では<影響力を広範囲に及ぼす>という意味で使われている。
あまり詳しくは書けなのだが、「ルフィ」を中心とした広域犯罪グループが現実に存在していることを考えると、決して荒唐無稽な事件ではない。
本作でも上述の3人プラス、エステル・ドイルが活躍。ブラッドショーの“成長物語“的な側面も見せてくれる。さらに、新たな人物が登場する。FBIのメロディ・リー、またしても女性。ずっと積み残されているポーのプライベートな問題解決の為に、彼女が絡んでくるような予感を残しながら、「キュレーター〜」は余韻を残して終了する。
第4作「グレイラットの殺人」はすでに刊行されている。冒頭の<登場人物>を見ると、やはり<メロディ・リー>の名前が掲載されている。
後を引かせる上手さがある、ワシントン・ポーのシリーズである
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