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ルネ・クレール監督、初のトーキー作品〜「巴里の屋根の下」の石畳

ヨーロッパの街なみを支えているのは石畳、そんなことをこの映画を観ながら思いました。ルネ・クレール監督にとって最初のトーキー作品「巴里の屋根の下」(1930年)です。(U-NEXT、Amazon Primeで配信あり)

ルネ・クレールのトーキー第二作「ル・ミリオン」、第三作「自由を我等に」と観て、最初に戻りました。

「巴里の屋根の下」でも、街とそこで生きる人々を支えるのは、石畳です。映画の冒頭は、パリの建物の屋根・屋上が映し出されます。決して美しいとは言えない、パリの下町、カメラの視点は徐々に下がり、建物そのものを見せ、さらに下へと。

なお、原題の“Souls les touts de Paris“は、まさしく「巴里の屋根の下」という意味です。

狭い路地は石畳が敷かれ、そこに集う人々、集団を見物する人、生活にいそしむ人らを見せていきます。集団の中心にいるのがベレー帽を被った主人公のアルベール、自作の歌“巴里の屋根の下“を披露し、合唱をうながし、その為の楽譜を売っています。

なお、Apple Musicで同曲を検索してみると、淡谷のり子が歌ったものがヒットしました。NHKの朝ドラ「ブギウギ」で、菊地凛子扮する茨田りつ子のモデルになった大歌手、今の「虎に翼」にも登場しました。

「自由を我等に」の主人公は、路上でのレコード売りから、蓄音機製造の会社社長へと成り上がりました。一連の映画における音楽の重要性が、こうした設定からも感じられます。

そこに集まってきた一人の女性、ルーマニア出身のポーラ、アルベールの目を惹きます。夢中で合唱に参加する人たちを狙うのが、いかにもという風貌のスリの男。彼の手はポーラのバッグにも伸びていきます。

この映画を観ていると、チャップリン映画における男女、あるいはビリー・ワイルダー的なものを感じます。もちろん、これらは後年作られた作品ですから、チャップリンやワイルダーが、こうしたルネ・クレールのラブコメ映画から、何らかの影響やヒントを得たのではないかと思うのです。

例えば、アルベールの部屋に転がり込んだポーラ、二人の場面はワイルダーの「アパートの鍵貸します」(1960年)を想起させます。

この場面では、トーキー映画でしかできない、二人の会話だけで成り立つシーンがあったりもします。

可笑しくちょっと切ない恋愛喜劇、もちろん音楽も素敵、下町の情景ではあるのですが上品でお洒落なのです。

本当の主役は、それを演出するパリという街なのかもしれません。それが、撮影所に作ったセットというのも驚きではあります。

ルネ・クレール監督映画、毎回書きますが映画ファンは必見です



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