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NICU⑪|産後メンタル


病院を後にし、妻が約一週間ぶりに家に戻ってきた。

この期間、私も数年ぶりの “一人暮らし” であったが、仕事に書類申請、そして面会と、一人時間を満喫する間もなく… あっという間に過ぎていった。

そしてこの日は、出前寿司で妻の退院祝いをした。
(Daddyこの前食べただろ!という突っ込みは置いといて…)


妻にとっては妊娠が発覚した正月ぶりの「生もの」。

私も生ものは家では食べないようにはしていたため、二人でお寿司を食べるのは久々であった。

やはり、夫婦二人で一緒に食べると味も変わる。
ましてや息子が生まれた喜びもあり、より一層美味しく感じる。


そして、食べながら改めて今後の話もしていく。

元々、息子は「完全大血管転位症」の手術もあるため、家に戻れるのは早くて “10月~11月” と言われており、ベビーベッドや抱っこ紐、その他出産グッズは退院日が決まった段階で買い揃えるつもりだった。

しかしながら、妻の「搾乳」が本格的にスタートしたということもあり、ベビーワゴンなど、いくつかは前倒しして購入することにした。


また、出産イベントの「お七夜」「お宮参り」は難しく、「お食い初め」も状況次第では叶わない。

ただ、恒例行事が出来なくても、ある意味息子に “普通” では見られない景色を見せてもらい、貴重な経験をさせてもらっていることに感謝だった。

そして、その辺りは退院後、年内にまとめて実施できたらいいなと話をした。


妻も一番安心できる場に戻ったことで、身体も心もゆっくりできてはいたが、やはり「産後メンタル」によって、以降 “感情の浮き沈み” が普段より激しくなる期間が少しあった。
(入院時から妻も自身の感情の変化に気づいていたが)

息子に対して想いを馳せることで涙が止まらなくなったり、これまで意識が向かなかったところに向いてしまったり(死角の汚れとか衛生面系)、その辺りが不安定になるようだった。

もちろん正常な反応であるが「産後メンタル」というリアルを目の当たりにし、 “これは絶対「夫」や「家族」の精神的サポートが必要だ” とも痛感した。

そう考えると、“シングルマザー” の方々はこの時期、本当に大変な思いをしてるのだと改めて思うし、命懸けの出産を経て、出産後もこういった状況を乗り越えて、子育てをしている母親たちは本当に「偉大な存在」であり、心から敬意を表したいと思った。


先述の通り、私たち夫婦は、普段から “お互いよくしゃべる”

その関係性があったおかげで、妻も感情を抑制することなく、比較的ポジティブな日々を過ごせたのかなと今では思う。




そして翌日、8月29日。
妻の退院後、初の面会。

この日の息子は “うつ伏せで丸まった状態” で出迎えてくれた。
(目をつぶったまま、おしゃぶりを “チュパチュパ” と吸っていた)

入院中は定期的に向きを変えているのは認知していたが、今日はたまたまうつ伏せの時間帯だった。

そして、ここ数日はニット帽を被る時間が長く常に濡れ髪状態だったが、この日は乾いており、よく見ると「きれいな直毛」であった。
(赤ちゃんはみんなそうかと思っていたが、看護師曰く息子は直毛とのこと)

私は癖毛だが、妻は凄くきれいな直毛であり、これもどちらに似るか楽しみの一つであったが、髪質は妻に似たようだった。

お腹の中にいる時に「髪質はお母さん似でー!」と話しかけていたが、ちゃんと素直に聞いていたのかな(笑)と夫婦で笑い合う。


また、この日は妻が初めての「おむつ替え」もさせてもらった。

幼少期に弟くんのオムツは替えたことがあるそうだが、息子のは初。

看護師からもアドバイスを受けながら、ちゃんと交換ができた。

おむつを替えられる息子を微笑ましく思うと共に、母親をしている妻を見るのが感慨深い。


こういった些細なひとときも幸せを感じるそんな面会日であった。


つづく


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