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著…工藤律子『ギャングを抜けて。僕は誰も殺さない』

 「逃げる」ことの大切さを教えてくれる本。

 ホンジュラスの若者アンドレスが生まれ育ったのは、治安の悪い場所です。

 男性は麻薬密売や殺人を犯すギャング団のメンバーにされる。

 女性はギャング団のメンバーの恋人にされる。

 さもなくば、お金を脅し取られたり命を奪われる。

 そういう場所。

 アンドレスの家庭環境も過酷です。

 アンドレスの父親は自身もマリファナの常習者で、ギャング団の下で麻薬を売り歩いて生計を立てるも、稼いだお金をみんな自分のために使ってしまう人で、そんな父親に愛想をつかした母親にアンドレスと兄は捨てられてしまったし、父親は結局ギャングの集団に銃殺されたそう。

 「父さんを殺した奴らをやっつけたい。敵を討ちたい」

 とアンドレスは思うようになり、一方で、

 「父さんとは違う生き方をした方がいいんじゃないか…?」

 とも心が揺らぎながらも、一旦はギャングの仲間になることを選びます。

 ところが、ギャングの正式メンバーになるためにひとり殺せ、と命じられて、アンドレスはハッと我に返ります。

 殺人を断れば自分が殺されるし、殺人を失敗してもやはり殺される、という極限状態の中で、アンドレスは「逃げる」ことを選びました。

 「逃げる」のは、決して恥ずべき選択肢では無いんですよね。

 逃げたから、アンドレスは誰かを殺さずに済んだし、誰かに殺されずに済んだし、自殺もせずに済みました。

 何かに追い詰められてしまうと、「逃げる」という選択肢すら無くなってしまいがちですが、常に「逃げる」という選択肢は残しておきたい…ということをわたしはこの本から学びました。

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