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著…マシュー・L・トンプキンス 訳…定木大介『トリックといかさま図鑑 奇術・心霊・超能力・錯誤の歴史』
●催眠術
●降霊会
●心霊写真
●超能力
といった19世紀頃に流行した妖しい世界を紹介している本。
どのようなトリックが用いられたか? という種明かしの解説まで付いています。
「いかさまだ」と頭では分かっていても、心はロマンを感じてワクワクします。
当時の絵・写真・ビラといった貴重な資料も掲載されているので、この本のページを捲っているだけでも不思議な世界観に浸れます。
また、ドラマ『トリック』シリーズでお馴染みのフーディーニもかなりのページを割いて紹介されています。
わたしはこの本を読んでいて、「もし『トリック』の上田がこの本を見つけたら、即購入して山田に〝ユー。僕はね、この参考文献を使ってインチキ霊能力者のトリックを暴いてやるよ〟と見せびらかしそうだなあ」と妄想しました。
また、「いかさま」と言うと、やはり人を騙すわけですから悪いことのように思えますが…、この本を読んでいると、あながちそうとも限らないことに気づかされます。
なかには、敢えて騙されることによって、つかの間の幸せな夢を見させて欲しい…という方もいたのではないでしょうか?
となると、「いかさま」にも良い一面がありますよね…。
それがよく表れているのが、心霊写真に関するページの、
「ビュゲは人形や助手を幽霊役に使い、顧客から聞き出した故人の情報をもとに、それらしい衣装を着せていたと説明した。写真を現像する際は原板を二重露光させ、人工的に作った幽霊を元々の被写体と一緒に焼き付けていたという。彼は同じ幽霊を何度も使いまわすための要領さえ語り、3組の顧客が同じ幽霊を別人と見なしている場面の写真を提出している。曖昧模糊としたその画像が、ある顧客にとってはいとこであり、別のある顧客にとっては姉であり、別のある顧客にとっては姉だった。
ビュゲ本人の自供にもかかわらず、一部の顧客は裁判で写真は本物だといい張った。ビュゲを擁護する証人には音楽家や歴史学教授、眼鏡技師といった人々がおり、彼らは布で覆っただけの人形を大切な故人と見間違えるはずがないと口をそろえた。仮にビュゲが作成したほかのポートレートが偽物だとしても、自分たちの買ったものが本物でないということにはならない、とも主張した」
という文。
わたしはこれを読んで、人を騙して洗脳するというのはなんて恐ろしいことなのだろう…とゾッとすると共に、騙されることを自ら選択してしまう人間の哀しさを垣間見ました。
もし自分が当事者の立場なら、どう感じるだろう…? と想像しました。
故人への想いが募れば募るほど、「自分の大切な人を詐欺に利用するなんて許せない」と怒ることもあるでしょう。
また、「たとえ写真越しであっても久しぶりに愛する人と再会出来るのなら、誰が何と言おうとこの写真は自分にとっては本物なんだ」と宝物扱いこともあるでしょう。
どちらもごく自然なことですよね…。
どちらが正解とも言い切れません…。
きっとこの世の中に「真実」はたった一つしか無いのではなく、常に揺らぎ続けているものなのでしょう。
頭では決して割り切れない、人の感情の奥深さを思い知らされました…。
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