著…朝井リョウ『学生時代にやらなくてもいい20のこと』

 青春時代にしか味わえない切ないエピソードと笑えるエピソードとが、絶妙のバランスで織り込まれているエッセイ。

 20あるエピソードのうち、1つめのタイトルを読んですぐわたしは「ぷっ!」と吹き出してしまいました。

 電車やバスの中でなく、自宅で読んで本当に良かった…!

 1つめのエピソードのタイトルは、…なんと『便意に司られる』。

 …小説『桐島、部活やめるってよ』で華々しくデビューを飾り、その後もヒット作を生み出している有名作家のエッセイの最初を飾るにしては、しょ、しょ、衝撃的過ぎませんか…!

 冒頭で、朝井さんはお腹が弱いことをカミングアウト。

 便意という名の稲妻(朝井さんの表現です。とても秀逸ですよね)に貫かれ、

 これは無理だ。出る。今、あの遠くに見える民家に突入しなければ、出る!

(著…朝井リョウ『学生時代にやらなくてもいい20のこと』 単行本版P11から引用)

 と、見知らぬおじさんの家へ向かってロケットスタートを切ったそう。

 なんて赤裸々な!

 というわけで、朝井さん=トイレの人、というイメージが付いてしまうかもしれませんが、この本の面白さはそれだけに留まりません。

 仮装しながら2日間かけて125キロを歩くという、早稲田大学の行事「100キロハイク」に、バスローブ姿にワイングラスといういでたちで参加した自分自身について、

 あの快感なしでは生きていけない立派なドMになってしまったのだ。

(著…朝井リョウ『学生時代にやらなくてもいい20のこと』 単行本版 P164から引用)


 と朝井さんは振り返っています。

 更に、朝井さんは、「東京から京都までなんと自転車で行く」という、100キロハイク参加者たちも真っ青なドM行事を、ご友人と2人で決行!

 距離にして500キロ以上。

 かかる日数は6日間。

 しかも東海道の三大峠として有名な箱根峠、さった峠(わたしのスマホではなぜか正しい漢字に変換出来ません。無念)、鈴鹿峠を3つとも見事に含む真性ドMコース!

 …この辺のくだりを読んでいて、わたしは手塚治虫先生の名作漫画『ブッダ』で、シッダルタがあらゆる痛くてきつ~い辛~い苦行に没頭していたのを思い出しました…。

 や、やめるんだ、朝井さん!

 苦行はやめるんだ!

 あんまり自転車に乗り続けるとお尻が、お尻が、お尻が…!

 …という読み手としてのわたしの心配など当然届くはずもなく、朝井さんとご友人は京都への青春自転車旅行をスタート。

 こうなると読み手としてはハラハラしながらこのエッセイのページをパラパラ捲るしかありません。


 …続きが気になる方は是非読んで確かめてください。

 そして皆さん、お尻を大切に!




 〈こういう方におすすめ〉
 沢山笑えるけれど、どこか切ないところもあるエッセイを読みたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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