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絵…フェリクス・ホフマン 訳…せた ていじ『おおかみと七ひきのこやぎ』
恐ろしくて教訓に満ちた絵本。
残酷な描写があるので、読む人を選びそうですが、
●知らない人を信用してはいけない
●怪しい人が、知っている人になりすましているかもしれない
●悪い人はあの手この手で騙そうとする
といった気づきを得られます。
勿論、知っている人だからといって、安心は出来ません。
自分の身は自分で守らないといけませんね。
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
以下はこの絵本のあらすじです。
お母さんヤギが出かけることになったので、7匹の子ヤギたちは子どもたちだけでお留守番をすることになりました。
そこで、お母さんヤギは、子ヤギたちにおおかみの見分け方を教えてくれました。
「しわがれごえとあしのくろいのに気をつけて」と伝えて出かけました。
7匹の子ヤギたちは、その言いつけを守っていい子にお留守番をしていました。
おおかみのこともすぐに追い返しました。
ところが。
おおかみは子ヤギたちに追い返される度に、悪知恵を働かせました。
はくぼく(白墨)を食べて声を綺麗にしたり。
前脚に練り粉を塗って、その上に白い粉をかけたり…。
7匹の子ヤギは、お母さんが帰ってきた! とまんまと騙されて、ドアを開けてしまいました。
とっさに時計の箱に隠れた末の子ヤギは助かりましたが、残りの6匹の子ヤギはみんなおおかみに食べられてしまいました…。
帰ってきたお母さんヤギは泣きましたが、外に出てみると、おおかみがいびきを立てて寝ていて、そのお腹の中で子ヤギたちが動いているのを見つけました。
そこで、末の子ヤギがハサミと針と糸を家から持ってきます。
お母さんヤギはおおかみのお腹を切り裂いて子ヤギたちを救い出し、代わりにおおかみのお腹に石ころをたくさん詰めて縫い合わせました。
そんなことが起きたなんて全く気がつかないまま目を覚ましたおおかみは、お腹の中で何かがごろごろ鳴るのを不審に思いつつも、ひどく喉が渇いたので水を飲もうと水の上にかがみ、その途端、お腹の中の石の重みのせいで井戸に落ち、そのまま溺れ死んでしまいました。
七匹の子ヤギも、お母さんヤギも、「おおかみ しんだ! おおかみ しんだ!」と大喜び!
…という絵本。
わたしは子どもの頃、この絵本を初めて読んだ時、こう思いました。
「おおかみを許してしまっていたら、きっとまた次の犠牲者が出ただろう。お腹に石を詰めたのは残酷だけど、悪いのはおおかみなんだから当然の結末だよなぁ」
と。
だから、納得のラストだったのですが…。
大人になってから読むと…、
「このおおかみにも、帰りを待っている子どもたちが居たかもしれないのになぁ…」
と想像し、なんだかとてもショックを受けました。
きっと、そういうことを考えさせないために、この絵本においておおかみはとても恐ろしい姿で描かれているのでしょうし、おおかみに子ヤギが食べられても良かったわけではないけれど。
なんだかモヤモヤします。
最後のページで、満月の夜に安心してベッドで眠りについている七ひきの子ヤギと、その姿を見守るお母さんヤギが描かれているのですが…。
わたしは何だか、永遠に帰って来ないおおかみを待ち続けてお腹を空かせているおおかみの子どもたちの姿を勝手に想像してしまいます…。
けれど、このお母さんヤギの悲しみを考えたら、この制裁を非難は出来ませんし…。
なんとも考えさせられる絵本です。
〈こういう方におすすめ〉
教訓に満ちた絵本をお探しの方。
〈読書所要時間の目安〉
20分くらい。
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