著…スーザン・コリンズ 訳…河井直子『ハンガー・ゲーム2 燃え広がる炎(下)』
自分の命と他人の命。
その重さについて考えさせられる小説。
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
この巻では、ハンガー・ゲームの「記念大会」のプレイヤーたちが、ピータとカットニスを生還させるため、自分の命を犠牲にしていきます。
きっとこの方たちにも「どうか生きて帰って来て」と祈ってくれている大切な方が故郷にいたでしょうに…。
マグスは足手まといにならぬよう自ら毒の霧に飛び込み、モルフリング中毒の贄は身を挺してピータを庇い、フィニックとジョアンナも命がけでピータとカットニスを守り続けました。
ピータとカットニスの存在は、キャピトルへ反乱を起こすための大切な火種だから…。
カットニスの行動に奮い立たされた人々がせっかく反乱を起こし始めているのに、もしカットニスとピータが死んでしまったら、これから燃え広がろうとしている炎が消されてしまいます。
そうなったら今後もキャピトルが圧倒的な権力によって人々を支配し、毎年何の罪もない子どもたちがハンガー・ゲームに参加させられ、命を奪い奪われ、また、ハンガー・ゲーム以外でも老若男女問わない沢山の人々が搾取され続けるだけ…。
ピータとカットニスの協力者となったプレイヤーたちは、きっと天秤にかけたのでしょう。
今後キャピトルに殺されていくであろう沢山の命と、自分の命を。
皆を救うためなら自分の命は軽い、と思ったのかもしれません。
なんて哀しい決断…。
或いは、「記念大会」でプレイヤー全員を死亡させようとしているキャピトルにせめて一矢報いてやろうと思ったのかもしれません。
また、もしかしたら、カットニスのお腹の中にピータの赤ん坊がいると思い、その子を守ろうとしたのかもしれません。
(妊娠したというのは作戦上の嘘であり、実際にはカットニスは妊娠していないのですが)。
いずれにせよ…、わたしはプレイヤーたちが犠牲になっていく描写が悲しかったです。
みんな「記念大会」などという狂った場所で死ぬのではなく、懐かしい故郷に生きて帰りたかっただろうに…。
この巻では、
とカットニスが考えるくだりもあります。
わたしは亡くなっていったプレイヤーたちがせめて最期に美しい光景を胸に浮かべながら穏やかな気持ちで息を引き取っていったことを祈らずにはいられません。
〈こういう方におすすめ〉
デスゲーム系の小説が好きな方。
〈読書所要時間の目安〉
2時間半〜3時間くらい。