著…かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるエジプト神話』
わたしは「よくゲームにエジプトの神様が出てくる。知識があればもっとゲームを楽しめるかも!」という不純な動機でこの本を読み始めたのですが、読めば読むほどエジプト神話の奥深さにどっぷりハマりました。
日本にも「なぜこの生き物が神様として崇められるようになったの?」と不思議でたまらない神様は沢山いますが、エジプトもそれは同じ。
多種多様な神様がいて、しかも一人の神様が他の神様と同一視されることもあるため、「あの神様は〜という神様だ」と一言では言い表せない多面的な魅力があります。
それに、どの神様のエピソードも壮絶…。
わたしがこの本を読んでいて最も興味深く思ったのは、大地の神ゲブと天空の女神ヌトの兄妹婚です。
エジプトではこうした近親婚が珍しくなかったそうなので、兄と妹で結婚したこと自体は問題にならなかったようですが。
この夫婦の熱愛っぷりがとんでもない事件を引き起こしてしまったそうです。
この夫婦があまりにもお互いを求め過ぎて決して離れようとしないので、大気の神シューが激怒。
この夫婦は抵抗虚しく引き裂かれてしまったそうです。
大地と天空との間に隙間が出来たおかげで、その空間に人間が住めるようになったそう。
だから、人間としてはシューに感謝すべきなのでしょうが、仲睦まじいのに無理矢理別れさせられたこの夫婦のことが気の毒…。
しかも、こうして引き裂かれた時、ヌトは既に身篭っていたそうなのです。
ところが太陽神アトゥムは「1年中どの月にも産んではならない」と出産を禁じたのだそう!
それを哀れに思った知恵の神トトが月にかけ合って、太陽の目が届かない5日間の閏日にだけ、ヌトが出産出来るようにしてくれたのだそうです。
そのはからいのおかげで生まれたのが、冥界の王オシリス、豊穣の神イシス、砂漠の神セト、葬送の神ネフティス。
知恵を働かせるのって大事ですね…。
誰かに「ダメ!」と言われたことでも、抜け道はきっとどこかにあるはず…。
太陽が見えない日が続くと憂鬱な気分になってしまいがちですが、こういうエピソードを読んだ後では、「きっとこういう日にしか生まれることの許されない命が今どこかで産声を上げているんだ」と寛容な気持ちになれる気がします。