著…中島敦 絵…ねこ助『山月記』
願った通りに生きられるとは限らない人生の哀しさを描いた小説。
挫折した経験のある方に深く刺さる作品だと思います。
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
かつては前途有望な役人だった男・李徴(りちょう)。
彼は仕事を辞め、詩人として名を成そうとします。
しかし、うまくいきません。
生活は日に日に困窮する一方。
妻子を抱えているというのに。
やむを得ず、彼がまた役人になると、かつて彼が馬鹿にしていた同僚たちは遥か高位に出世していました。
彼はその指図を受けざるを得ません。
屈辱の日々。
詩人の道にも絶望。
…彼は狂ってしまいました。
訳の分からないことを叫んで、闇の中へと消え、友人・袁傪(えんさん)が見つけた時には、…彼は虎になっていました。
彼は人間としての理性を失いかけていましたが、袁傪と久しぶりに再会したことで、ふっと我にかえります。
そして、その苛酷な運命を切々と語ります。
自分がどうして虎になってしまったのかを。
プライドが高く、詩人としての才能が乏しいのを認められなかった。
かといって、努力して己を磨くこともしなかった。
自分の心には虎がいた。
だから体まで虎になってしまったのだ。
…と。
という李徴の無念さだけではなく、ただ話を聴いてあげることしか出来ない袁傪の無力さも伝わってきます。
…そうした心情を描いた作品なので、読んでいると胸が苦しくなります。
しかし、この本の場合、挿絵の動物たちの毛並みが読み手の辛さをうまく中和してくれます。
猫も、虎も、ふわっふわ。
耳もお腹もしっぽも柔らかそう。
さ、触りたい…!
虎を触ろうとしたら大変なことになるけど…!
もふもふ好きには堪らない…!
〈こういう方におすすめ〉
挫折を経験したことのある方。
〈読書所要時間の目安〉
一時間くらい。
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