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著…榎田ユウリ『この春、とうに死んでるあなたを探して』

 大切な人の声を聞きたい。

 「どうして?」と聞きたい。

 けれど、聞けません。

 問いかけるべき相手はもうこの世にいないから。

 だから、残された人々は、大切な人が生きていた頃の痕跡を探します。

 日記。メモ。手紙。

 様々な手がかりから、大切な人がその時々どんなことを感じていたのか想像して、少しでもその心に近づこうとします。

 …という小説です。

 この小説に関しては、是非これ以上のネタバレ無しで読んで欲しいです。

 その方が、より深く心に沁みるものがあるから。

 この小説を読み終えた時、わたしはタイムマシンが欲しくなりました。

 もしタイムマシンがあったなら、大切な人が死んでしまう前に何か出来るかもしれない、と思うからです。

 実際には止めることなんて出来ないかもしれないけれど、そう願わずにはいられないのです。

 気持ちがすれ違ったまま永遠にお別れするなんて、悲し過ぎるから。

 また、和歌がよく登場するのも、この小説の魅力の一つ。

 きっと、何百年も昔の人たちも、伝えたくても伝えるすべのない心を和歌に託したのでしょう。

 人間の歴史の中で、一体これまでどれだけ沢山の人たちの想いがすれ違ってきたのか…、想像すると胸がいっぱいになりました。

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