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Photo by
hamahouse
著…嶺里俊介『走馬灯症候群』
懐かしい思い出。
それを夢で見た後って、目覚めた後もしばらく幸せな気分に浸れますよね?
自分の人生を振り返ることが出来る機会とも言えます。
それってから幸せなこと…かと思いきや…。
この小説を読んでからだと、だんだん怖くなってきます。
※注意
以下の文にはネタバレを含みます。
この小説に登場する人々は、不思議な夢に命を喰われていきます。
「夢喰い」を発症すると、まずは最も古い記憶の夢を見ます。
それから、まるでアルバムを捲るかのように、だんだん夢は現在の記憶に近づいていきます。
そして夢が現在に追いつくと…、人は死にます。
という怖い小説。
わたしはこの小説を読んでから数日間、眠るのが怖くなりました。
しかし、よく考えてみると、わたしはむしろこの小説に出てくる人たちのことが羨ましいような気もしてきました。
人は死ぬ直前に走馬灯を見る、と昔からまことしやかに言われています。
しかし、死ぬ直前に走馬灯を見ても、それは自分の人生を振り返ることにしかなりません。
走馬灯の後にやってくる死によって事切れてしまってからでは、何も出来ないのですから。
生きているうちに、こうやって緩やかに走馬灯を見ることが出来れば、例えば誰かに何かを言い遺したり、忘れていた約束を思い出してその約束を生きているうちに果たせるかもしれません。
そういう意味ではわたしはこの小説の登場人物たちが羨ましいです。
死への猶予をほんの少し貰えているような気がして。
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