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著…中野京子『中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇』
こんにちは。
絵を通して歴史を学びたい方におすすめの本をご紹介します。
絵の見どころと、その作品の背景にある歴史を分かりやすく解説してくれています。
暗殺、戦争、異端審問、ペストの流行、決闘の末の死など、歴史上の様々な一コマ一コマをあらわす絵の解説がずらり。
中には残酷な要素のある絵もありますが、彫刻「ラオコーン群像」、フェルメールの「恋文」、ゴヤの「裸のマハ」といった、有名且つ生々しくない作品も紹介されているので、胸焼けせずに読み終えることが出来ます。
なかでもわたしは、ブリューゲルの「死の勝利」についての解説が興味深かったです。
ありとあらゆる死因によって人々がなす術なく死んでいく光景を描いているはずなのにどこかユーモラスなこの絵について、著者は、
骸骨の大群は、現代にくり返し製作されるゾンビ映画を彷彿とさせる。生者は死んでゾンビになり、ゾンビは生者を襲い、襲われた者もゾンビに変態してと、あたかもパンデミックのごとく爆発的に拡大してゆく。〜(中略)怖がる者は怖がらせる者へと容易に反転できる、ある種の「楽しさ」だ
と述べています。
これを読んでなるほどと思いました。
わたしはゾンビに関する映像作品が好きなのですが(例えば海外ドラマ『ウォーキング•デッド』や映画『バイオハザード』シリーズなど)、なぜ自分がそういう作品が好きなのか自分でも理解できていませんでした。
著者が言う通り、例えば誰か人間の策略によって死んでしまった人がゾンビになって加害者に噛み付くシーンなどは愉快です(映画『バイオハザードⅡ』でも、車椅子に乗っていた科学者がゾンビになって、やな奴をガブリ!とやっていましたよね)。
著者の言葉を借りれば、ゾンビ物の作品を好む人間がいるのは、怖がる者から怖がらせる者への反転があるからなのかもしれません。
それに…、「ゾンビになりたくない」と怯えていた人は、ゾンビになってしまった後はもう「ゾンビになりたくない」という恐怖を感じなくて良い。
ある意味、悩みから解放された人々です。
他人の目を気にして身づくろいする必要なんてなくて、体がどんなに腐ろうが、どこへでもお出かけ(?)できる。
それに、基本的にゾンビ同士は襲い合わないので、人間同士で争う人間よりも…ある意味、清い存在かも…?
漫画『アイアムアヒーロー』や映画『ウォームボディーズ』に出てくるゾンビのように、意識が微かにでも残っていたら話は別かもしれませんが。
悩みまくりの我が身を思うと…、わたしはゾンビのことが少し羨ましいのかもしれません。
興味深い作品ですよね、ブリューゲルの「死の勝利」って。
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