著…竹宮惠子『少年の名はジルベール』
新たな道を拓く人の苦労や情熱について学べる本。
⭐️Kindle版
⭐️単行本版
女性作家の1枚あたりの原稿料単価も単行本の印税も、男性作家より安く設定されていた時代。
少女マンガの主人公は女の子でなければならず、そのキャラクターは天真爛漫で可愛ければ良い良い、と決めつけられていた時代。
まだBL(ボーイズラブ)なんて言葉もない時代。
これは、そんな時代に男の子を主人公にして、しかも男の子と男の子の愛の物語を描いた著者の本。
当時、担当編集Yさんは「何なんだよっ、これ!」と怒鳴ったそうです。
著者がYさんに相談せず内容をすり替えて原稿を印刷に出すという最初で最後の荒技をやったため、この時の原稿は掲載され、読者から熱のあるファンレターが届いたのだそう。
社会人としては禁じ手ですよね。
が、もしその時そうやって著者が思い切った行動に出なければ、どうなっていたのでしょうか?
やがて著者が連載することになる、あの伝説的漫画『風と木の詩』の美少年ジルベールは。
その時の行動が無ければ、日の目を見ることはなかったのかも…。
著者はその後もYさんから「こんなものは載せられないよ」などと言われたそうです。
が、なんやかんや言いながらも結局は載せてくれていたのだから、Yさんにも手応えがあったのかもしれませんね。
という著者の志が凄い!
今や、男の子と男の子の恋愛を描いた漫画は、世界的にも物凄い市場を生み出していますよね。
勿論、著者だけではなく萩尾望都先生や山岸凉子先生といった沢山の人たちの働きによってこうした文化が華開いたわけですが、やはり礎を築いた著者の功績は物凄く大きいです。
そして、著者を励まし続けた、増山さんという方の存在も非常に大きい。
この本を読んでいたら、増山さんのパワーが本当に素晴らしくて驚かされました。
わたしは「ひょっとして芸術の女神なんじゃない? 増山さんって…」と思えてなりません。
〈こういう方におすすめ〉
ボーイズラブが好きな方。
〈読書所要時間の目安〉
2時間くらい。