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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

ニールス・アルデン・オプレヴ監督『フラットライナーズ(リブート版)』



 ※注意
 以下のあらすじ及び考察ではこの映画の結末までは明かしませんが、多くのネタバレを含みます!
 未鑑賞の方はご注意ください!






 きっと、誰かに対して罪悪感を抱いたことが無いまま一生を終えられる人は少ないでしょう。

 この映画に登場する医学生コートニーも、罪悪感を抱えているうちの一人。

 コートニーは、自分がよそ見運転をしたせいで妹を死なせてしまいました。

 コートニーは心停止後に蘇生した患者を見つけると、「何か覚えてる? 感じたこととか見たこととか」と質問します。

 なぜか?

 それは、密かに臨死体験について研究しているからです。

 コートニーはなんと、自分の体まで使って、ある実験を始めました。

 まず、自分の心臓を一時的に止めます。

 心停止中に脳がどんな活動をするのか、データを記録します。

 そして、なぜ人は臨死体験中に浮かぶ感覚になったり光を見たりするのかについて調べ、死後の世界の存在を突き止めようというのです。

 そこには、「もしかしたら実験中に亡き妹と会えるかも…」という願いも込められていました。

 しかし、人は自分の心臓を止めることは出来ても、自分を蘇生させることは不可能。

 そこで、コートニーは他の医学生ジェイミー、ソフィアに無理やり協力を依頼し、結果的にはレイ、マーロのことも巻き込みました。

 実験は成功しました…。

 …一応は。

 亡き妹と実験中に会うことは、残念ながら叶いませんでしたが…。

 実験後のコートニーに、驚くべき変化が起きました。

 なんと「脳の覚醒」とも言うべき驚異的な記憶力を身につけたのです!

 そのため、成績を良くしたがっていた他の医学生たちも、「次は自分だ」と順番に被験者になってしまいました。

 最初はみんな大喜び。

 ジェイミーは勘が冴え渡るようになりました。

 ソフィアは過干渉な母から自立する心の強さを得ました。

 マーロはより良い効果を得ようと欲張って心停止の時間を長くし過ぎたせいか、めざましい変化は見られず。

 レイはみんなの実験をサポートしたものの、自ら被験者になろうとはしなかったので、全く変化無し。

 こうして実験は締めくくられようとしていました。

 ところが…。

 副作用が現れ始めました。

 実験を受けた全員が、恐ろしいものを見るようになったのです。

 コートニーは自分が死なせた妹を。

 ジェイミーは自分が妊娠させたあげく見捨てた女性とその赤ん坊を。

 ソフィアは自分がいじめたクラスメイトを。

 マーロは自分が医療ミスで死なせた患者を。

 それらはまさに、過去の自分がしでかしたことに対する罪悪感が見せる幻覚。

 幻覚はどんどんひどくなるばかり…。



 以上があらすじです。

 結末は是非この映画を観てご確認ください。




 わたしはこの映画を観ていて、ある疑問が頭に浮かびました。

 それは、

 「罪悪感を全く覚えないタイプの人間がこの実験に参加したらどうなるのだろうか?」

 ということ。

 世の中にはいるものなのです。

 そういう人間が。

 多くの人は、「嘘をついてはいけないよ」とか「人を傷つけてはいけないよ」という道徳を子どものうちに多かれ少なかれ植え付けられています。

 だから、例えば嘘をつく時、良心が咎めます。

 そんな時は、目が泳いだり、つい鼻を触ったり、無意識に手を動かすといった挙動をして、自分の動揺をごまかそうとします。

 しかし。

 いるのです。

 まるで息を吐くかの如く自然に…、何なら満面の笑顔でだって嘘をつける人間が。

 「自分さえ良ければ良い」「他人がどうなろうとどうでも良い」という考えの人間が。

 とことん残酷なことが出来る人間が。

 人を騙したり、傷つけたり、性犯罪や殺人を犯しても、シレッとしているような人間が。

 もしもそういう人種がこの映画の実験に加わったら、一体どうなるのでしょうか?

 きっと医学生たちが見たような幻覚に苦しむことは無いだろうな、とわたしは思います。

 だって、そもそも罪悪感が無いのですから。

 苦しみようが無いのです。

 では、もしもそういう人たちがこの映画に出てくるような実験に参加した場合、臨死体験をした人たちがよく語るような「美しい光やお花畑」「素晴らしい音楽」「今は亡き大切な人・ペットとの再会」を体験出来るのでしょうか?

 わたしはノーだと思います。

 なぜなら、ノーであって欲しいから。

 誰だって、生きている間に自分自身や誰かを傷つけて後悔することは何度もあるはず。

 たくさん失敗して、後悔と反省を繰り返し、恥をかき、責められ、罪悪感と自己嫌悪を抱え、葛藤する。

 そうやって一生かけて苦しんで地獄を味わった後に、自分や他人を赦せるようになって初めて天国へ行けるのだ、とわたしは思いたいです。

 そういう地獄に最初から自分の身を置かない人には天国の門が開くことも永久に無い、と思いたいです。

 だから、例えば「自分が後悔している過去の体験をよく悪夢に見てしまって辛い」という人は、それは自分が罪悪感を覚えているということなので、むしろ良いことだと解釈してはいかがでしょうか?

 そして出来れば、この映画に登場する医学生たちが終わりの方で取った行動を参考にしてみてください。

 悪夢がほんの少し緩和されるかもしれません。

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