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著…穂村弘『蚊がいる』

 なんてシュール!

 このタイトルと表紙に惹かれたので、わたしはこの本を手に取りました。

 たとえば、

 ●自分ではすっかり忘れてしまった自分の一面を他人がずっと覚えていることに驚く

 ●ごく短時間しか眠れない夜なのに蚊が出現したため、わざわざ起き上がってまで叩くか迷う

 といった日常のふとしたワンシーンを丁寧に綴ったエッセイです。

 「そうそう、そういうことってあるよね」と共感しながら読めます。


 ⭐️Kindle版

 ⭐️単行本版



 わたしが特に興味深いと思ったのは、単行本版42〜44掲載の「世界の切り替えスイッチ」のエピソード。

 著者はこう述べているのです。

 電車が止まってしまっても、文庫本が一冊あれば、それを開くだけでもう一つの世界に入ることが出来る。

 効果的な切り替えスイッチを持っていればいるほど、多次元世界を生きることが可能なのだ、と。

 そんな私の持っている殆ど唯一のスイッチが短歌である。失恋しても親が死んでも虫歯になっても、どんなに辛い目にあっても、それを五七五七七のかたちにすることで元がとれる(と思うことができる)世界の逆転スイッチ。

(著…穂村弘『蚊がいる』P44から引用)


 わたしは「きっと、歌人にとっては短歌が、音楽家にとっては音楽が、小説家にとっては小説が世界の切り替えスイッチなのだろうな」と月並みなことを思いながらこの記述を読んだのですが、著者はこう締めくくりました。

 だが、世界の切り替えスイッチとは、たぶん突きつめれば全てがそういうものなのだ。

(著…穂村弘『蚊がいる』P44から引用)


 !!!

 もしかしたら、スマホを操作するのも、テレビを観るのも、人に話しかけることも、実は世界を切り替えるスイッチと呼べるのかもしれませんね。

 わたしたちは自分たちでも気づかないうちに、1日のうちに何度も別の世界の扉を開けて、多次元を感じ、常に異世界を旅しているのかも。



 〈こういう方におすすめ〉
 不思議な読み応えのエッセイをお探しの方。

 〈読書所要時間の目安〉
 3時間くらい。

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