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著…横溝正史『金田一耕助ファイル3 獄門島』

 第二次世界大戦に関する事柄が頻繁に出てくる作品。

 まず、金田一は謎の言葉を言い遺して死んだ戦友の故郷・獄門島へ向かいます。

 その途中の船で、金田一は機雷や軍事施設を壊す爆発音を聞きます。

 そこで知り合った和尚は「夏草やつわものどもが夢の跡」と語ります。

 更に和尚は、獄門島にも防空監視所や高射砲陣地が出来て兵隊が山を穴ぼこだらけにしてしまったという話をして、「国破れて、山河ありというが、これじゃ国敗れて山河形容を改むるじゃな」と皮肉に満ちたことも金田一に話して聞かせます。

 これは戦争の前と後で世の中が大きく変わってしまったことを表していますよね。

 また、金田一は『本陣殺人事件』で一緒に働いた警部が戦死せず健在だと知り、涙を流して喜んでいます。

 ただ誰かが生きているというだけでそんなにも嬉しい。

 きっとそれは、それだけ多くの死を目の当たりにしてきたということ…。

 このように、この作品が戦争の影響を色濃く受けていることが分かります。

 この作品の大きな特徴は、兵隊にとられた人々が終戦後に日本に帰って来る「復員」が引き金となってこの獄門島での殺人事件が起きるということ。

 この「復員」はきっと現実世界でもこの作品で起きた事件に近い騒動を巻き起こしたでしょうね。

 戦争そのものは終わっても戦争がもたらす苦しみは続いていくことを描いた、何とも悲しい作品です。

 横溝正史はよくこうして作品の中で戦争関連のことを書いていますが、特にこの獄門島で起きる事件は戦争さえ無ければ起こらなかったであろう事件。

 わたしはそこに強い反戦メッセージを感じます。

 本来なら死なずに済んだはずの人たちが強引に命を奪われていくさまは、まさに戦争の悲惨さそのもの…。

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