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著…三崎亜記『となり町戦争』

 戦争の不気味さを描いた小説。

 姿もなく、音もなく、匂いもなく、感触もない。

 けれども確かに自分の間近に存在する戦争のことを。


 ※注意
 以下の文は、結末までは明かすネタバレを含みます。
 未読の方はご注意ください。


 ある日。

 主人公は突然、自分の住む町ととなり町が戦争をすることを知ります。

 開戦日を迎えてしばらくしてからも、日常に変化は表れませんでした。

 華々しい戦果の報はありません。

 ただ淡々と、戦死者数が町の広報誌で発表されていくだけ。

 主人公はとなり町への偵察という任務を与えられ、それを遂行するのですが…、結局、戦争が何なのかはわからないままでした。

 自分だって当事者なのに。

 まるで他人事のよう。

 彼にとって戦争は、モノクロの無声映画のようなイメージしかなかったのです。

 しかしやがて彼は、「無いはず」の戦争の姿、音、匂い、感触を身をもって知ることになります。

 そして、心が麻痺していく感覚と、忘れられない痛みを味わうことになります。

 この小説には戦闘そのものの描写が無いので、モヤモヤが残るのですが…。

 むしろこのモヤモヤが効果的だと思います。

 それが、戦争というものの訳のわからなさを表しているから。



 〈こういう方におすすめ〉
 戦争について考えるきっかけが欲しい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間半くらい。

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