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著…真梨幸子『ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで 万両百貨店外商部奇譚』
毒のある小説。
主要人物は、お客様が望めばどんなことでもする、百貨店の外商・大塚佐恵子です。
…そう、どんなことでも。
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
わたしは百貨店の外商さんって、お客様の好みや予算などをもしかしたらお客様本人以上に熟知していて、お客様が直接百貨店に出向かなくても自宅まで要望を聞きに或いは品物を届けに来てくれて、お客様が百貨店にいらっしゃったらお買い物に付き添ってくれる方だ、という認識だったのですが…。
この小説に登場する外商・大塚さんは何でもやるんです。
お客様がそれをお望みなら、
お客様が夢中になっている歌劇団の娘役のパトロンを探すことも。
お客様のお嬢さんが社会勉強出来るよう仕事を紹介することも。
お客様が一目惚れをしたら、お客様が相手と結ばれるようセッティングをすることも。
…晴れて恋人となった後、お客様が困ったら、「処分」を手伝うことも。
大塚さんはどんなことでもするのです。
顧客名簿にそのお客様の名前がある限り。
「お客様はあくまでお客様。所詮は〝他人〟よ。深入りはしないように」
と、大塚さん自身が外商部の後輩に語っていたというのに…。
大塚さんこそ、お客様にどこまでもどこまでも深入りしています。
お客様は、読み手が「いやいや! そんなこと頼んだらダメでしょ!」とツッコミたくなるようなことを言ってくるのですが、
大塚さんは断りません。
決して。
頼まれた仕事はやり遂げます。
…恐ろしいです。
その倫理観の無さが。
きっと、誰かが「お客様は神様じゃないからね」と言っても大塚さんの心には届きません。
お客様も、大塚さんも、たとえ逮捕はされなくても、どんなにお金があって、どんなに社会的に一定の地位があっても、どうしようもなく狂っている…。
〈こういう方におすすめ〉
狂気を感じさせる小説を読みたい方。
〈読書所要時間の目安〉
2時間くらい。
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